ズッキーニときゅうりの違いとは
-植物としての差・成分と風味を比べると…

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概要お化けきゅうりのような外見から、キュウリの仲間であると思われがちなズッキーニ。ズッキーニは植物としてはキュウリよりもカボチャに近い存在です。植物分類や歴史、食材としてみた場合キュウリとズッキーニの違いはどの辺にあるのかを比べてみました。きゅうりとズッキーニの歴史や栄養価も紹介するので、読めばきゅうりとズッキーニの違いがまるっと分かる(かも)。

きゅうりとは

きゅうりの分類・歴史など

きゅうりは日本でも、もろきゅう・サラダから巻き寿司“かっぱ巻き”など日常的に食べられている野菜の一つ。お漬物など和食系の献立から、サラダ・ピクルスなどで洋食系、中華料理風の炒めものに…などなど主役になることこそ少ないものの、使い勝手が良く冷蔵庫の定番野菜だよというご家庭も少なくないのではないでしょうか。あまり人様には言えませんが、私はもろみ味噌をつけて食べるのが大好きです^^

きゅうり・漢字で書くと胡瓜という名前ですので、ウリ科野菜であることは言われるまでもなくご存知の方も多いと思います。より細かい分類としてはウリ科キュウリ属キュウリとなり、学名はCucumis sativusちなみに種は違いますが、同じくキュウリ属に分類される食べ物としてはメロン・マクワウリ・白瓜・キワノなどもあります。仲間と紹介されがちなゴーヤーはウリ科でもツルレイシ属なので、メロンほど近しい関係ではありません。

キュウリはツル性の一年草で原産地はインド北部・ヒマラヤ山麓とされています。紀元前4000年頃からメソポタミアでは栽培されていたことが分かっていますから、歴史の古いの農作物の一つであるとも言えますね。紀元前のうちにはヨーロッパ方面・中国方面とユーラシア大陸の東西にも伝わっていますから、国により伝来に時間差こそあれど広範囲で食されてきた=何料理にでも使われている食材となっているわけですね。
ちなみにきゅうりは英語でCucumber(キューカンバー)。

世界中で食べられている野菜であるきゅうりの品種は500以上と言われるほど多いですが、日本で食用とされているきゅうりは表面についているトゲの色から白イボ系と黒イボ系に大別されます。現在流通しているキュウリは9割以上が白イボ系で、皮が薄くシャキシャキ・パリパリした歯切れの良さが特徴です。黒イボ系のキュウリは生食というよりも漬物用に適した品種で、現在は聖護院胡瓜など一部地域で伝統野菜として作られているものの量は多くありません。沖縄のモーウィ(赤毛瓜)も黒イボきゅうり系統に分類されています。

…ところで和食でも洋食でも、私達が目に・口にするきゅうりは深めの緑色をしています。
しかしキュウリの語源を調べると「木瓜」もしくは「黄瓜」であるという紹介がなされており、黄色くないけどな~と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。普段食べているキュウリ、実は未完熟の状態で収穫されたものです。ゴーヤーピーマンなどと同じですね。収穫せずにぶら下げておくと黄色く変色してきます。家庭菜園や小学校などで育てた経験がある方は心当たりがあるかもしれません。

中国や日本は、昔はキュウリを完熟させてから食べていたので「黄瓜」なんですね。
それなら現在でも熟したものを食べたほうが栄養価も高く美味しいんじゃないかと思いますが、キュウリは黄色くなるまで熟すと苦味が強くなり美味しくないのと言われています。店頭に置かれた時点でムラなく黄~褐色をしたきゅうりはそういう品種なので良いですが、部分的に黄色くなっている見切り品・使い忘れたキュウリなどは美味しくないので避けたほうが良いです。

日本人はキュウリ好き?

日本は“国民一人あたりのきゅうり消費量が世界一”とも言われるくらいきゅうりを多く食べる、きゅうりが大好きな国。いやいや別に大好きじゃない、という方でもお弁当やお惣菜のサラダなど何かと口にする機会はあるのではないでしょうか。

しかしキュウリが伝わってから1000年以上も、日本できゅうりは人気のない野菜でした。その理由は中国に原産地であるヒマラヤ周辺から東南アジアを経由し“南伝種”と呼ばれるタイプのキュウリが最初に伝わったためと言われています。南伝種は水分が少なく、しっかりと黄色く完熟させてから調理加工して食べるものでした。

日本に最初に伝わったきゅうりも南伝種と呼ばれるタイプで、きゅうり=黄色くなるまで熟してから漬物などにして食べるものとして定着しました。後にシルクロード経由で瑞々しく生で食べられる“北伝種”タイプのきゅうりが伝わります。日本でも南伝種は漬物や酢の物用・北伝種は生食用と使い分けられるようになります。しかし黄色くなるまで熟して食べるものという固定観念からか、江戸時代まではどちらのタイプのきゅうりも完熟させてから食べていたらしいです。

キュウリが不人気であった理由として
毒があると思われていた
切り口が京都八坂神社の紋に似ている
切り口が将軍家(徳川家)の家紋に似ている
なども挙げられていますが、実際のところ苦くて美味しくなかったというの事が大きいと考えられています。黄門様(水戸光圀公)も「毒多くして能無し。植えるべからず。食べるべからず」と言ったとか。

そんなきゅうりが今のように人気者の野菜になったきっかけは、江戸時代末期に砂町(現在の東京都江東区)で品種改良によって成長が早く・味や食感も良いきゅうりが作られたことと言われています。未完熟の“緑色のきゅうり”を食べることが根付いたのも、この砂村胡瓜が誕生してからだそうですよ。きゅうりは古くから食べられていましたが、定番の生野菜となってからはまだ200年も経っていないんですね。

参考元:wikipedia

ズッキーニの分類・歴史など

ズッキーニとかぼちゃのイメージ画像

結論から言うと、ズッキーニはカボチャです。
カボチャもきゅうりと同じウリ科植物ですが、カボチャ属と別属に分類されます。カボチャ属の下では西洋かぼちゃ・日本かぼちゃなどの種が分かれていますが、ズッキーニは“ペポカボチャ”と呼ばれる種のうちの一つ。

ペポカボチャの中には観賞用から食用まで様々な品種があり、日本では飾りに使われる手のひらサイズの“おもちゃかぼちゃ”やそうめんかぼちゃ(イトカボチャ/金糸瓜)などが知られています。形もカボチャと言われてイメージする丸いものから、パティパンかぼちゃなど平べったいものまでバラエティ豊か。

ペポカボチャの一種とされるズッキーニは和名も「うりかぼちゃ」もしくは「つるなしかぼちゃ」とされており、学名はCucurbita pepo(var. melopepo/var. cylindrica)。日本では濃いグリーンで太めの縦長形状ののもが一般的ですが、黄色い色をしたズッキーニの方が世界的にはポピュラー。そのほか上下でツートンカラーや縞模様になっているもの、洋ナシ型や球に近い形をしたズッキーニなどもあります。この言われないと同じ植物だとは思えないようなバリエーションの多さも、ペポカボチャの一種ならではなのかもしれません。

外見でわかるキュウリとズッキーニの決定的な違いとしては“ヘタ”があります。キュウリのヘタは細く小さいですが、ズッキーニは帽子を被っているようにヘタ部分が非常に大きいことが特徴。ヘタ部分をじぃーっと見つめると、キュウリよりカボチャに近いかなと思い始める気がしますね。またキュウリは未完熟状態で採るため緑色をしていますが、緑色のズッキーニは完熟しても緑色のままだそう。黄色いものとは種(品種)の段階から違います。カボチャにも表皮が緑のタイプとオレンジ色のタイプがありますね。

北インドが原産とされるキュウリに対して、ズッキーニの原産地ははっきり分かっていません。カボチャの一種なので祖先としてはアメリカ大陸(メキシコ辺り)が原産と考えられますが、それがどう変化してズッキーニが出来たのかは微妙だそう。細長いタイプのズッキーニは、19世紀にイタリアでカボチャ(ペポカボチャ)の品種改良によって出来たことが分かっています。このためズッキーニの原産地はイタリアと紹介される場合もありますよ。

ズッキーニって何語?

ズッキーニの和名はうりかぼちゃと言われていますが、植物や農作物の専門家はさておき消費者としてはズッキーニという呼び方のほうがポピュラー。スーパーの店員さんに「うりかぼちゃ何処ですか?」と聞いたら、おそらく微妙な反応をされると思います。

で、問題のズッキーニという呼び名。
これは元々イタリア語で、諸説ありますがカボチャを意味する“zucca”に、小さいや可愛いを意味する接尾辞の“-ina”を付けて「zucchina(ズッキーナ)」と呼ばれるようになったと言われています。それが英語に取り入れられた際に「zucchini(ズッキーニ/ズキーニ)」に変じ、日本でもこの呼び方がポピュラーになったそう。ちなみにフランス料理で「courgette(カージェット/クルジェット)」と呼ばれており、同じ英語でもイギリス英語の場合はフランス語と同じくcourgetteの方が使われているようです。

また英語でもアメリカ英語ではズッキーニなど夏が旬のカボチャを総称して“summer squash”と呼ぶこともあります。逆に西洋かぼちゃのような秋冬が旬になるカボチャは“winter squash”。実際は冬カボチャと呼ばれているカボチャも収穫時期は夏だったりするんですが、2~3ヶ月くらい寝かせることで甘みを出すので秋から冬になります。ズッキーニを含むペポカボチャ系統のカボチャも収穫時期はほぼ同じですが、熟成期間がいらず新鮮なうちに食べたほうが良いので旬とされる時期が変わっています。

キュウリとズッキーニの栄養価・食材としての特徴

キュウリのイメージ画像

キュウリの特徴

風味・料理法の特徴

食べ物としてのキュウリの特徴を答えよ、と言われたら?
良い意味で言うなら、シャキシャキもしくはパリパリとした歯ごたえ・瑞々しくさっぱりとした風味でしょうか。逆に悪い意味であれば「この臭いがどうしても無理」という人もいるように、青臭さ・ウリ臭さとも称される独特の香気があることも特徴です。

キュウリは特徴的な瑞々しさやパリパリした食感を活かせるよう、サラダ・酢の物・浅漬けやキムチなど“非加熱料理”で使われることの多い野菜です。日本での使われ方とは印象が違いますが、スペインやポルトガルで食べられている冷製スープのガスパチョも加熱しませんね。そのほか世界にはきゅうりのヨーグルトをあわせた“ジャジュク”や、きゅうりを使ったピューレソース“ザジキ”など日本人からするとびっくりなキュウリレシピがありますが、世界的に見ても生で利用されることが多い野菜と言えるでしょう。

中国では炒め物や煮物など加熱料理できゅうりを使うことも多く、日本でも中華風の炒めものなどに使われることがあります。しかし加熱しても独特の香りは言えませんし味も馴染みにくいので、生で食べる以上に好き嫌が分かれるところでしょう。キュウリをフライパンやトースターで焼くと香ばしさが加わるだけではなく、甘さや柔らかさが出るので好きな方であればクセになる味ではありますけれど。

栄養価について

きゅうりは「世界一栄養のない野菜」とも言われるように、水分ばかりで栄養価値がない思われがちな食材。ただしこの世界で一番栄養のない野菜という不名誉な称号(?)の元ネタはギネス・ワールド・レコーズで、本来は“Least calorific fruit(最もカロリーの低い果物)”とされていたもの。植物としてみると食用部位は果実になるので記録自体は間違いでないでしょうが。これがどこかで誤解されて栄養のない野菜に置き換わってしまったようです。とんだ濡れ衣ですね。

カロリー低い=栄養が無いって何時の時代だよ、というツッコミはさておき。
このギネスレコードは植物的な意味での果実、と定義されています。つまり葉野菜などは比較対象となるので、実はきゅうりが最もローカロリーな野菜であるという訳ではありません。きゅうり生100gあたりのカロリーは14kcalと確かに低いですが、モヤシレタスなど更に低カロリーな野菜も複数存在していますよ。

キュウリに対しての誤解が解けた所で問題の栄養価。
キュウリはビタミン類としてはビタミンKが非常に多く、ビタミンCも100gあたり14mgとセロリ大根などよりも多く含まれています。多くはありませんがβ-カロテンやビタミンB群も広く含まれています。ミネラル類も同様に目立つほど多いものこそありませんが、カリウムが100gあたり200mg・カルシウムが26mgなどある程度の量で幅広く含んでいます。

きゅうりは栄養がない野菜どころか、淡色野菜としては平均かそれ以上の栄養価を持つ野菜と言っても過言ではないでしょう。gあたりで栄養価を見るとパッとしませんが、kcal当たりの栄養価で比較するとものすごい優秀野菜という声もありますよ。健康志向・抗肥満志向なこのご時世であれば、健康野菜としてもっと評されれても良い食材と言えるのではないでしょうか。

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ズッキーニの特徴

風味・料理法の特徴

ズッキーニはきゅうりに似た外見をしていますが、風味や食感としては「ナス」に例えられる食材。少し苦味を感じるという方もいらっしゃいますが、味や香りはほとんどなく淡白。生の状態では外皮も果肉部分もしっかりとしていて固めです。薄切りにしてサラダに使うなど生食も可能ですが、基本的には煮込み料理もしくは焼料理など“加熱料理”に使われます。

元の味が淡白なこと・キュウリと異なり加熱料理をすると味が染み込みやすくなります。フランスのラタトゥイユ・イタリアのカポナータなど、トマトベースの料理によく使われているのもこの味が染み込みやすく馴染みが良いという部分が大きいと思います。きゅうりを入れたら味のバランスをとるのが大変…。

また、ナスに例えられるように油との相性も抜群なので、フライにしたり、シンプルにバターやオリーブオイルをあわせてステーキのように焼いても美味しく頂けます。ラタトゥイユよりもズッキーニそものの味が出るので好き嫌いは分かれますが、お酒とも合うと思います。利用方法としては大体ナスが使えるものであれば使えるので、揚げ浸しのような和食にも応用できます。最近は夏野菜カレーにもズッキーニがよく使われていますね。

栄養価について

きゅうりではなくカボチャの仲間であるズッキーニですが、栄養価として見た場合はカボチャよりもキュウリに近い印象です。一般的に食べられているカボチャは水分が少なく炭水化物(糖質)が多い食材ですが、ズッキーニは全体重量の約94%と水分が多く、炭水化物量も同グラムで比較した場合はきゅうり以下。よく「キュウリは水っぽいがズッキーニはそうでもない」と表現されますが水分量としてはきゅうりと大差なく、カロリーも生100gあたり14kcalときゅうりと同じです。

ズッキーニも果皮こそ色がついていますが、中の果肉部分は白っぽくβ-カロテンも多くないため淡色野菜に分類されます。突き抜けて豊富に何らからの栄養素を含んでいるということはありませんが、ビタミンやミネラル含有量は全体的にキュウリよりも多めになっています。

分かりやすいくらいの違いがある栄養成分としては生100gビタミンCあたり20mg・カリウム320mgなど。ビタミンB群についてはキュウリと大差ないものが多いですが、100gあたり葉酸が10μg・ビオチンが1.3μgくらい多くなっています。キュウリも言われるほど栄養価が低い野菜ではありませんが、栄養補給という面ではズッキーニに軍配が上がりそうですね。特にビタミン補給・カリウムをたくさん摂りたい方に良さそうです。

きゅうりとズッキーニの違いまとめ

外見として似ているきゅうりとズッキーニですが、かなり違いがあることが分かりました。大きなポイントだけをまとめるとこんな感じです。

きゅうり

  • ウリ科キュウリ属
  • 学名はCucumis sativus
  • 未完熟時は緑、熟すと黄~黄褐色
  • 生のまま食べられることが多い

ズッキーニ

  • ウリ科カボチャ属
  • 学名はCucurbita pepo
  • 緑果種と黄果種がある
  • 火を通して食べられることが多い

きゅうりは低カロリーと言われますが、生100gでのカロリーはどちらも14kcal。ただしズッキーニは加熱して食べることが多いという性質上、調理過程でカロリーが上がる可能性は大。栄養面でも“豊富”と言えるほど多く含むものはないですし、調理過程で損なわれてしまうものがあると考えられますから、そこまで大きな差はないでしょう。植物としてだけではなく適しているレシピも違う食材ですから、どっちにしようかなと選ぶことなく両方美味しく頂けそうですね。

年齢によってはキュウリに似ている外見で焼いたり似たりするということで食わず嫌いの方もいらっしゃるそうですが、食べてみるとキュウリと別物で意外と美味しいということもあるかもしれません。個人的にはズッキーニはキュウリではなく「固めのナスみたいな味だよ」と説明したほうがしっくり来ます。食べ物としてみるとカボチャ感は無いですよね。