小ねぎ・万能ねぎ・わけぎ・あさつきの違いとは
-植物分類による違い・風味の差は?

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概要突然ですが、冷奴や煮物などに薬味としてパラパラと振りかける緑色で直径の小さいネギを何と呼んでいますか? 同じものを指す場合でも人によって「小ねぎ」「万能ねぎ」「わけぎ」など呼び方が違うことがあるのではないでしょうか。これらは同じものを指す場合もありますが、小物として別のものを示す言葉も含まれています。今回はそんな混同されやすい小ねぎ・万能ねぎ・わけぎ・あさつきについて紹介します。

小ねぎと万能ねぎの違いとは

薬味として和食にも欠かせないネギ。葱(ネギ)という呼び名は広義の場合、ネギ属(Allium)に分類される植物=タマネギなども含んだ様々な植物を含みます。しかし一般的にネギもしくは長ネギと呼ばれ薬味としても利用されているものは、ネギ属の中でも学名をAllium fistulosumという種。さらに同種の中で更に白い部分を主に使う根深ねぎ(白ネギ)系統・白い部分が少なく緑色の葉を使う葉ねぎ(青ネギ)系統の2つに大別されます。

地域によってどちらのネギを使うかには違いがあり、
「ラーメンには白髪ねぎでしょう」
「いやいや青ネギでしょう」
と、単に薬味のネギといっても思い浮かべるイメージが違ったりもしますよね。

昔は“西は青ネギ・東は白ネギ”とも言われるほど東西でくっきりと利用する系統が分かれていたと言われていますが、近年は全国的にどちらのネギも入手・利用できるようになりました。そこで問題になるのが、ネギの種類や呼び方。と言っても根深ねぎ系のものはそれぞれの種類こそ見分けがつかなくても、白ネギだなと分かりますね。

しかし葉ねぎ系統のネギ、特に細いタイプのものは同じものを見せたとしても人によって「小ねぎ」「万能ねぎ」「わけぎ」など呼び方がまちまち。なので今回は薬味やサラダなど生で使われることの多い細身の“小ねぎ”に焦点を当て、それぞれの呼び方での違いを調べてみました。

小ねぎとは

薬味などによる使われる「小ねぎ」もしくは「細ネギ」などと呼ばれているのは、基本的に葉ねぎを若どりしたものを指します。普通の葉葱よりも細く、小口切りにした時に円の直径が小さいのも若い時点で採取されているため。収穫せず放って置くと、私達が目にする姿よりも大きく太くなるそうですよ。

万能ねぎとは

万能ねぎという名前は小ねぎ・細ネギの別名だと思われがちですが、実は福岡のJA筑前あさくらが商標登録したブランド名。品種でもなく商品名になりますから同じ種を使っていたとしても、JA筑前あさくらさんが許可しない限り勝手に万能ねぎを名乗って売ることは出来ません個人で細ネギを「万能ねぎ(万ネギ)と」言う分にはそこまで大問題になることはないでしょうが、レシピサイトなどに投稿する場合などは注意したいところですね。

小ねぎの別名と思われるほど“万能ねぎ”という名前が知られるようになったのは、一口に言うとJA筑前あさくら(博多万能ねぎ部会)さんの努力によるもの。朝倉市では青ネギや細ネギの栽培が行なわれ普通に「青ネギ」として販売されていたそうですが、昭和52年に生でよし・煮てよし・薬味によし・身体によしなどの意味合いから“博多万能ねぎ”として東京の市場への出荷が行なわれるようになします。

しかし東京は白ネギ文化圏で葉ねぎに馴染みがなかったこと・陸送すると輸送時間の長さから痛んでしまうなどの問題があり、販売当初のあまり売れ行きは良くなかったのだそうです。そのため新鮮な野菜を届けられるようにとJALと交渉し、日本初の空輸野菜「フライト野菜」として出荷が行なわれるようになります。販売時にはJALのマークが付けられ、新鮮な高級野菜として陳列されたことで大ヒットしたのだそう。

参考元:JA筑前あさくら

当時まだ関東では葉ねぎ・小ねぎを食べる機会が少なく馴染みのない存在だったので、万能ねぎの普及と共に小ねぎを使うということが普及したとも言えるでしょう。感覚としては“大葉”という名前が一般に定着したのと近いかもしれません。逆に西日本では葉ねぎが主流で各々小ねぎも食べていましたから、小ねぎ=万能ねぎと思っている方は関東以北の地域の方が多いとも言われています。

万能ねぎ以外の小ねぎ

万能ねぎはJA筑前あさくらの商標(商品名)です。ではそれ以外の若どりされた小ねぎは全て小ねぎ・細ネギと言われているのかというと、万能ねぎに続けとばかりに各地の農協さんによってブランド化されています。

有名なブランド小ねぎとしては

  • 安岡ねぎ(ふくねぎ)
  • うまかねぎ
  • やっこねぎ
  • なごやっこ葱
  • 仙台小ねぎ

などがあります。各地で頑張って商品化・差別化されていらっしゃるので細ネギ=万能ねぎと思わず、きちんと産地や名前を確認して遣いたいところですね。ちなみにこうしたブランドネギの元となっている品種は“九条細ネギ”が多いそうですよ。

ネギの仲間はその他にも色々ある

ネギイメージ

万能ねぎと小ねぎは、
小ねぎ=若どりした葉ねぎ全般
万能ねぎ=商標(商品名)
という違いがあります。

簡単に言うと万能ねぎは小ねぎに含まれているから小ねぎと呼んでもOK。ただし万能ねぎは福岡県で作られている小ねぎの商標だから、許可されていない小ねぎを万能ねぎと呼ぶのはNGということですね。

しかし、小ねぎ・万能ねぎなどに外にも“ネギ”と呼ばれて使われているものは様々。リーキなど見た目や風味から判別できるものも少なくありませんが、外見や風味から小ねぎ・細ねぎ・万能ねぎの仲間だと思われがちな食材もあります。それは「わけぎ」と「あさつき」。どちらも基本的には葉ねぎ・小ねぎと同じ様な使われ方をしていますが、この2つは植物として別物なのです。

下記では葉ねぎ・細ねぎと似ているもの、混同されやすいものをご紹介します。

ネギの仲間、小ねぎと似ている食材

ネギとは別種のもの

あさつき(浅葱)

小ねぎと同じ様に薬味として利用されるほか、酢味噌和え“ぬた”を作る時に使われることも多いあさつき。漢字では浅葱と書きますし、用途ととしてもネギと同じ様なものなのでネギの一種のように感じますが、こちらはチャイブの変種とされています。チャイブは洋食のサラダや卵料理などに使われている“ネギもしくはニラっぽい香味野菜”で、和名ではセイヨウアサツキもしくはエゾネギなどと呼ばれているもの。

なので同じネギ属の植物ではありますが、あさつきの学名はAllium schoenoprasum var. foliosumとネギとは別種であることが分かります。学名以外にもっと分かりやすい差異として、ネギが種から出てくるのに対してあさつきは球根で増えます。根の付け根がぷっくりと膨らんでおり、葉が細長いのが特徴。風味としては加熱すると甘みが強く出ますが、生のまま使うと小ねぎよりも辛味が強い傾向にあります。薬味として使う場合には、麺類などで風味を出したい時に適しているでしょう。

わけぎ(分葱)

あさつきと同じく、葉ねぎと同じ様に使われることの多いわけぎ。かつてネギの一種と考えられていましたが、科学的な調査によってエシャロットの交雑種であることが判明しています。このため学名もかつてはAllium fistulosum var. caespitosumとされていましたが、近年ではエシャロットの雑種もしくは独立主として扱われており、ワケギの学名もAllium × proliferumもしくはAllium ×wakegiと表記することのほうが多くなっています。

わけぎも種ではなく球根で増える植物なので、根本にぷっくりとした膨らみがあります。またイトネギとも呼ばれるように葉が細いアサツキに対し、わけぎは葉がやや幅広の形状をしているのも特徴とされています。アサツキは生で食べると辛味がありますが、わけぎは生でもマイルドな風味なので薬味として使いたいけれど辛いのは苦手…という方にも適しているでしょう。

葉ネギに含まれるもの

わけねぎ(分け葱)

わけぎと似た呼び名に“わけねぎ”というものがありますが、こちらは葉ネギの一種を指す言葉。埼玉や千葉・東京などで多く栽培されている葉ネギの一種で、品種としては九条ネギに近いそう。特徴は名前の由来ともなっているように「株分れ(分けつ)」が多いこと。わけぎと外見はよく似ていますが、わけねぎは球根ができるわけではないので根本を見れば分かります。

植物としては葉はねぎの一種なのですが、外見も見ていますし、わけぎ・わけねぎと名前も似ているので混同されることが多い存在です。スーパーなどでは商品名のポップなどが誤って付けられていることも多いそうなので、不安なときは根本を見るようにすると良いでしょう。わけぎはタマネギ(エシャロット)に近い存在で風味もマイルドですが、わけねぎは葉ねぎなのでしっかりとネギの風味がありますよ。

芽ねぎ

芽ネギとは名前の通り小ねぎよりも更に早い段階で収穫された、青ネギの若芽のことです。長さが10cm未満と小さく細いことが特徴で、ネギ版ベビーリーフとでも言うべき存在。家庭で薬味として使うというより寿司ネタ・刺身のツマとして見かける機会の方が多いかもしれません。

爽やかな風味と軽い辛味があり、風味としては上品な印象。お吸い物など控えめな味のものにも、主張しすぎず自然に馴染んでくれます。栽培・出荷工程に手間がかかることもあり、普通の青ネギや小ねぎよりも少し高めの価格帯であること・地域によってはスーパーなどに置かれていないことがネックかも知れません。

地域によっても差異がある

あさつきやわけぎは学名まで付けられているものですから、植物としての分類ではこれが正解…のはずですが“一般的な認識”ということになると少し話は違ってきます。西日本では上記で紹介した植物的な区分がそのまま利用されていますが、関東以北の地域になると植物と呼称が混同される傾向が強いことが指摘されています。

間違えられている例としては
わけけぎ⇒分葱と同じもの・わけぎの品種である
あさつき⇒わけぎもしくはわけねぎを若どりしたもの
わけぎ・あさつき⇒若どりされた添いネギの総称
小ねぎ⇒葉ネギ・わけぎ・あさつきの総称である
などが挙げられます。

この書き方も分かりにくいですが、要は名称がグチャグチャになっていてカオス状態。このため「関東以北のスーパーや商店では正しい名称が使われていないと思った方が良い」という声もあるほどだとか。万能ねぎが商標登録されたものだということは広く認知されるようになっていますが、現在でも「細めの小ねぎの呼び方」と思っている方もいらっしゃるようです。

…と言っておきながら、私も最近までわけぎとわけねぎは同じものだと思っていました><
同じ地域の方と話す分には地元で定着している呼び方を使っていても問題ありません。しかしネットで全国の方が投稿したものを一挙に見られる・自分の書いたものを全国の人に見てもらえる時代ですから、なるべく正しい使い方をしたいところですね。