小豆の特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:小豆

お赤飯や和菓子の原料として和食の中でも重要な存在、小豆。中国を中心とした東アジア圏で食べられてきた豆類で、古代中国や平安時代頃の日本では生薬のような形でも利用されてきました。現在でも二日酔いやむくみに対しての民間療法で「小豆の煮汁」が使われており、栄養成分的に見ても理にかなっている部分があると評価されています。抗酸化作用や血糖値上昇抑制効果によって生活習慣病予防やダイエットなどメリットが期待されている小豆について、栄養成分や期待される働きなどを詳しくご紹介します。

小豆/あずきのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:小豆(あずき/しょうず)
英名:azuki bean/Adzuki bean/red mung bean
学名:Vigna angularis

小豆(あずき)とは

おめでたい時に炊くお赤飯を筆頭に、お汁粉やぜんざいなどでも使われる小豆(あずき)。小豆から作られる“あんこ(餡)”は大福や羊羹などにも使われる、きな粉と同等以上に「和スイーツ」にも欠かせない存在でもありますね。小豆は日本だけではなく、中国など東アジア圏では全体的に甘い味付けで食べることが多い豆類。ですが欧米では普通の豆と同様にスープやサラダに入れて使用することが多く、フムスのようにペースト状にして食べることもあるようです。甘みをつけずに食べている方は小豆=渋くて食べにくい豆という印象があり、あんこの原料だと知って驚く方も多いのだとか。

日本の食文化になくてはならない小豆、学名はVigna angularisで植物としてはマメ科ササゲ属に分類されています。属名からも分かるように小豆の代用品のような感覚で使われるササゲや、もやしを作るのに使用される緑豆などが同属の近縁種。栗色に近い赤褐色を「小豆色」と表現するなど小豆=赤みのある色というイメージが強いものの、実は小豆の種皮もササゲと同様にエンジ以外に黒・白・緑・茶・灰白・斑点模様など様々な色があります[1]。日本国内で流通している小豆は赤が主流で、大納言が代名詞のようになっていますよね。美方大納言小豆などの大納言系品種は流通・加工の上で普通の小豆とは区分して扱われており、一般的に「小豆」として流通しているのは“エリモショウズ”や“きたのおとめ”などの普通小豆(中納言)と呼ばれる系統のものです。

赤系小豆以外には、和菓子の“白あん”を作る際に使われる白小豆も生産されています。白小豆は希少かつ高価であるため一般にはほとんど流通しておらず、一般的な“白あん”には白いんげん豆(手亡)が使われているそう。白小豆使用というのが一つのブランドでもあるわけですね。食用として以外に小豆はお手玉や枕の詰め物としてなど様々な使われ方をしている存在でもあります。小豆洗い(小豆とぎ婆)という小豆を洗う音を立てる妖怪も昔は全国各地で知られていたそうですから、人々の生活に密接に結びついた豆であったことがうかがえます。近年でも小豆を使った『あずきのチカラ』などの蒸気温熱グッズを使っている方も少なくないのではないでしょうか。

そんな私達日本人にとっては馴染み深い小豆。子供の頃に“小豆”と書いて「アズキ」と読むことを疑問に思ったことがある方もいらっしゃると思います。元々は小豆(ショウズ)という言葉は小さい豆を総称する言葉であって、現在でいうアズキだけを指す言葉では無かったと言われています。アズキという言葉の語源については諸説あり、平安時代の『本草和名』にある阿加阿岐(アカアツキ)が変化した阿豆岐(アズキ)もしくは阿加阿豆岐(アズキ)が元とする説、アとは赤色のことでツキ・ズキは溶けることを意味する言葉=他の豆より“早く柔らかくなる赤い豆”であるとする説、赤い豆が付く木=赤粒木(アカツブキ)が短縮された説などが有力視されています[2]。現在のように小豆=アズキのみを指す言葉となった理由も断定はされていませんが、身近で使用する機会が多い豆だったからのように感じられます。

小豆の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

小豆は炭水化物とタンパク質を多く含む食材で、カロリーは乾燥小豆100gあたり304kcal、茹で小豆の場合は122kcal。ビタミン類ではビタミンB1,B6を筆頭としたビタミン類、ミネラル類ではカリウムを多く含んでいます。そのほか鉄分やマグネシウムなどの補給にも役立ちますし、アントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれていることから抗酸化食材としても注目されています。

小豆のイメージ画像

小豆の効果効能、その根拠・理由とは?

疲労回復・夏バテ対策に

小豆はビタミンB群を多く含む食材。特に糖質の代謝を促進する働きを持つビタミンB1が乾燥小豆100gあたり0.46mgと多く含まれていることから、疲労物質の代謝(分解)促進・蓄積予防による疲労回復効果が期待されています。ビタミンB1の不足は筋肉の痛みや疲労感・だるさ・食欲不振などの原因になり、極端な不足が続くと脚気になる危険性もありますから、意識的に摂取したい栄養素と言えますね。余談ですが昔の人が小豆を珍重した理由として、ビタミンB1不足による脚気予防に役立ったからではないかという見解もありますよ。

加えて小豆は乾燥の場合であれば全体重量の約20%とタンパク質が多く、アミノ酸スコアも82と高め。タンパク質の代謝に必要なビタミンB6も多く含まれていることから、タンパク質の補給源としても役立つと考えられます。ミネラルなどの含有量も多いので栄養補給源や体作りのサポートにも適しているでしょう。糖質は脳のエネルギーにもなりますから脳疲労の軽減に、またビタミンB1は水溶性で汗とともに失われやすいこと・消化液の分泌を高める働きが期待されていることもあり夏バテ予防にも有効とされています。

ただし乾燥100gあたりのビタミンB1含有量を比較した場合、大豆は0.71mgと小豆の2倍近い量があり、タンパク質量も小豆より多くなっています。ビタミンB1を摂取するなら小豆が最適という紹介も時折見られますが、補給源として適しているもののビタミンB1が最も多い食品という訳ではありません。情報を過信せず目的・食の好みに合わせて食材を選ぶようにして下さい。

二日酔い対策に

民間療法では「二日酔いに小豆の汁」を飲むというものがありますが、この二日酔い対策方法は現在でも評価されています。これは小豆やその煮汁がビタミンB1の補給に役立つ存在であるため。ビタミンB1は糖質代謝の過程で酵素をサポートする“補酵素”として働くだけではなく、アルコールを分解する際に消費されるビタミンの一つでもあります。

通常アルコールはアセトアルデヒドに分解された後、ALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素)によって酢酸へと変換されることで無毒化されます。この過程でもビタミンB1はアルコールに含まれる糖分を分解するため消費されますが、大量に飲酒してALDH2による分解が追いつかなくなった際にはビタミンB1を大量に使って別ルートでのアセトアルデヒド分解も行われます。更にアルコールはビタミンB1の吸収を悪くする・排出を促進するなどの働きもあるため、アルコール摂取量が多いほどビタミンB1は不足傾向にあることが指摘されています[3]。

ビタミンB1が不足するとお酒の抜けが悪くなるだけではなく、代謝機能が低下して疲労やぼんやり感が続くような状態になってしまう可能性も。このためアルコール・アセトアルデヒドの分解を助けるビタミンB1の補給は、悪酔いや二日酔い予防・軽減に役立つと考えられています。小豆にはアルコール摂取によって失われやすいミネラルで翌日むくみ軽減に役立つカリウム、肝臓の健康を助けるモリブデン[4]やビタミンB6などの栄養素も含まれていますから、お酒をよく飲む方には心強い存在と言そうですね。

むくみ予防・改善に

小豆は古くから利尿作用がある食材と考えられており、民間医療の中では利尿薬のような感覚でむくみの解消に用いられてきた食材でもあります。おばあちゃんの知恵袋でも「むくみにあずきの煮汁」というものがありますね。生薬として用いられる際にも、その効能として利水消腫・清熱利湿など体内の余分な水分の排泄を促すことが挙げられています。むくみ対策・ダイエットサポートとして小豆茶やあずき水が流行した時期もありました。

成分的に見た場合でも、乾燥小豆は100gあたり1,500mgとカリウムが非常に多く含まれています。カリウムはナトリウムの排出を促すことで水分バランスを適正に保ってくれるミネラルのため、むくみ改善にも有効とされています。加えて、小豆の外皮に含まれているサポニンにも利尿作用を持つ可能性が報告されていることから、カリウムとサポニンの相乗効果で小豆はむくみ解消に役立つという見解もあります。

カリウムもサポニンも調理時には水に流れ出ていく性質があることにだけ注意が必要。ゆであずきを食べるのではなく、昔ながらの「小豆の煮汁を飲む」などのように汁ごと摂取できる方法・成分の流出が少ない“蒸し小豆”にして食べる方が効果的だと考えられます。

便秘予防・改善にも

小豆は乾燥100gあたり24.8g食物繊維が非常に多く、茹であずきの100gの場合でも12.1gと全体の1割以上を食物繊維が占めています。小豆に含まれている食物繊維は9割以上が不溶性食物繊維のため、補給すると便の量を増やして蠕動運動を促進することに繋がるでしょう。加えてサポニンは利尿作用が期待される以外に、界面活性作用と呼ばれる水に馴染みにくい物質を混ぜ合わせる乳化剤のような働きを持つことが認められています。この働きから適度なサポニンの補給は腸内で便の硬さを適度に調節し、排便をスムーズにすることにも繋がるのではないかと考えられています。

食物繊維補給源プラスαの働きで、小豆は便通改善をサポートしてくれる可能性があると言えるでしょう。便秘対策としてだけではなく、胃腸機能を正常に保つ手助けが期待できる食品として海外でも紹介されることがあるようです。ただし、不溶性食物繊維は水分が不足すると便を固めすぎて便秘を悪化させてしまう・お腹が弱い方の場合は下痢を引き起こすなどのデメリットもあります。闇雲に摂取した場合は逆にお腹の調子を乱してしまう可能性もあるので摂取量には注意が必要です。

貧血予防。妊娠中の栄養補給に

大豆よりもやや劣りますが、小豆も鉄分や亜鉛・葉酸など造血に関わる栄養素を多く含む食材です。『日本食品標準成分表(八訂)』に記載されている100gあたりの鉄分含有量は乾燥小豆で5.5mg、ゆで小豆の場合でも1.6mgと同グラムのアボカドの2倍以上。このため小豆を入れて炊いたお赤飯や、小豆加工品を摂取することは鉄分補給にも繋がり、ら貧血、特に鉄分が不足して起こる鉄欠乏性貧血の予防に役立つと考えられます。タンパク質も多く含まれていますから、植物性鉄分の吸収をサポートしてくれるビタミンCを含む食材と合わせて摂取するとより効果的です。

また、小豆は妊娠中の方に進められることが多い食材でもあります。鉄分・葉酸が豊富なことに加え、サポニンや食物繊維が便秘の予防改善に、カリウム+サポニンが妊娠中後期~産後に起こりやすいむくみの改善に役立ってくれるでしょう。加えて小豆は古くから「小豆は母乳の出を良くする」と言われており、現在でも利尿作用やサポニンなどの血液を綺麗にする働きから乳腺炎予防に役立つと考えられています。妊娠中や母乳育児中に甘いものが食べたくなった時にも、クッキーやケーキなどの洋菓子ではなく大福やおはぎなどの和菓子を選ぶと良いという声もありますよ。

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抗酸化物質の補給源として

小豆にはシアニジンとカテキン、フラボノールなど抗酸化作用を持つポリフェノールが豊富に含まれていることが認められています。赤ワインを超えるほどポリフェノール含有量が高い食材と考えられており、抗酸化力は1.5倍~2倍という説もあるほど。2008年『Journal of Food Lipids』に掲載された研究でも、小豆には少なくとも29種類の抗酸化物質が含まれていることを示し、利用可能な抗酸化物質が最も多い食品としてカテゴライズされています。

また、2019年には名古屋大学の吉田久美教授らの研究によって小豆の赤色はアントシアニンによるものではなく、カテキンとシアニジンが縮環した新規物質であることが発見され“カテキノピラノシアニジン類”と命名されています[5]。アントシアニンの機能性を期待していた方にとっては微妙な部分もあるかもしれませんが、小豆が抗酸化物質を豊富に含む食材であることには違いありません。抗酸化作用とは活性酸素・フリーラジカルの働きを抑制する働きを指し、体内の脂質・タンパク質・DNAなどを保護することに繋がります。このため抗酸化物質を補給し、フリーラジカル/酸化ストレスを軽減することは体を若々しく健康な状態に保つことに繋がると考えられています。

生活習慣病・心疾患予防に

抗酸化物質の補給は若々しさの保持だけではなく、生活習慣病、特に血流系トラブルの予防にも役立つと考えられています。生活習慣病の発症リスクを高める要因の一つとしても活性酸素が挙げられています。悪玉(LDL)コレステロールが酸化して出来た“酸化LDL”が蓄積し、血管を狭めたり柔軟性を損なわせることで起こる動脈硬化が代表的ですね。同じ様な生活を続けていても、若い頃はSOD酵素など自分の体内にある抗酸化物質で酸化を防いでいたものが、加齢とともに抗酸化力が衰えてしまい症状として出やすくなってくるのです。

小豆には抗酸化作用を持つフェノール化合物(フラボノイド類など)が豊富に含まれていることに加え、サポニンなど脂質の代謝を促す働きや血中脂質の低減作用が期待されている成分も含まれています。2008年『Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition』に掲載された論文では、小豆に高脂血症(高トリグリセリド血症)の予防に有益である可能性も示されています[6]。動物実験では血圧降下作用が見られたとの報告もあることから、小豆は高血圧・高脂血症や動脈硬化などの生活習慣病予防にも期待されています。

糖尿病予防・ダイエットサポートに

便秘やむくみの改善効果が期待できることもあり、小豆はダイエットサポートとしても取り入れられることの多い食材。古くは「常食すると太りにくい体質になる」と伝えられていたそうですし、現在でも小豆は血糖値ケアや肥満予防について研究されている食材です。2018年『Therapeutics and Clinical Risk Management』にも、小豆製品の摂取は血糖降下作用を示し、2型糖尿病患者の炎症を軽減する働きが見られたことが報告されています[7]。

その他にも小豆の血糖値効果作用が見られたとの研究報告が存在し、小豆は腸のα-グルコシダーゼを阻害する作用を持つ可能性が示唆されています。タンパク質の補給、サポニンやカテキンによる脂肪代謝促進・血糖値上昇抑制などの働きが期待できること・ビタミンB1やビタミンB6など代謝に関わるビタミンB群の補給としても役立つことから、小豆は血糖値対策や肥満予防の観点からも注目されています。

数年前には日本でも食事前に小豆の煮汁を飲む韓国発祥の“あずき水ダイエット”が紹介されて話題となった時期もありましたね。小豆そのものもGI値が45と低GI食品ですから、お米に混ぜて炊くなどして食べた場合でも肥満予防に繋がると考えられます。偏りがちな栄養サポートにもなるでしょう。ただし糖質量が極端に少ないわけではなくカロリーも高めですから、おかずやデザートとして沢山小豆を食べるのは少々危険。食べる場合は全体的なバランスを考えて取り入れる必要があります。

脳機能保持・集中力サポートにも

小豆に含まれているビタミンB1は中枢神経や末梢神経など、神経機能を保持することにも関係しているビタミンです。これはビタミンB1が脳のエネルギー源となるブドウ糖を利用するために必要なビタミンであるためで、ビタミンB1が不足した場合は脳機能が低下しイライラや不安・集中力の低下などを起こすことがあります。小豆などビタミンB1が多く含まれている食材を摂取し、不足を補うことで、脳機能や精神的な不安定さを予防することに繋がる可能性があるでしょう。

美肌・アンチエイジングに

小豆はポリフェノールを豊富に含み高い抗酸化作用が期待できる食材のため、外見的な老化予防にも役立つと考えられます。肌細胞の酸化はシワやタルミなどの肌老化にも関係しますから内側からの肌老化予防に繋がるでしょう。皮膚・髪・爪の新陳代謝に関わるビタミンB群も多く含まれていますし、ビタミンB2とポリフェノール類によって過酸化脂質の生成を防ぎ大人ニキビの予防にも役立つと考えられます。便秘やむくみの改善で老廃物蓄積が軽減されること、抗酸化作用によって血流が良くなることと合わせて肌荒れやくすみなど肌の不調改善の手助けも期待できます。

目的別、小豆のおすすめ食べ合わせ

小豆の食べ方・注意点

小豆を煮る時はさっと洗った後にたっぷりの水に入れ加熱し、茹でこぼしてアクを抜いた後に弱火で茹でていくという方法がとられます。しかし、大量の水で吹きこぼしながら茹でた場合は水溶性の栄養価の流出が多くなる可能性も。栄養をしっかりと残したい場合はひたひたの水位をキープして小まめにアクを取りつつ煮たほうが良いとの声もあります。

小豆のアクに含まれているサポニンは、有用な働きが多く報告されている一方、摂り過ぎは甲状腺疾患のリスクを高める可能性があることも指摘されています。全くアク抜きをしない場合は味にエグみが残るだけではなく、健康に悪影響を及ぼす可能性もあるので摂取量には注意しましょう。

豆は体を温める? 冷やす?

冷え性の改善に良いと紹介される小豆ですが、体を温める性質があるから冷え性に良いとする説・利尿効果が高く体を冷やす働きがあるとする説の両説が存在している食材でもあります。これは東洋医学的な考え方で食材としてはの小豆は温~平性に分類されることが多いものの、生薬の赤小豆は平~微寒とされ“清熱利湿”つまり熱を下げて湿(水分)を体外へ排出させるという効能があるされているためと考えられます。

成分的に見た場合でも鉄分などによる貧血の改善・ポリフェノール類の血行促進作用は冷え性の改善効果が期待できますが、サポニンやカリウムなどの利尿効果は水分と共に体の熱を排出することで、体を冷やす働きがあると考えられています。ただし余分な水分が多すぎるとそこに体温を取られてしまって冷えが悪化したり、代謝低下が起こる場合も。この場合は一度むくみをリセットして身体のコンディションを整えるという意味で小豆が役立てくれるでしょう。

【参考元】