グリンピースの特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:グリーンピース

大人でも「苦手」という方が少なからずいるグリーンピース。未完熟状態で食べるえんどう豆(軟莢種)の一種で、食品としては野菜に分類されています。独特の青臭さや食感から好き嫌いは分かれるものの、グリーンピースは食物繊維が豊富で、タンパク質・ミネラル・ビタミンの補給源として役立つ食材です。様々な栄養成分を含むことから栄養補給はもちろんのこと、肥満予防や美肌サポートにも期待されています。そんなグリーンピースの栄養成分や期待される健康メリット、摂取時の注意点についてご紹介します。

グリーンピースのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:グリーンピース/未成熟エンドウ
英名:green pea
学名:Pisum sativum

グリーンピースのプロフイール

実豌豆(グリーンピース/うすい豆)とは

ミックスベジタブルや冷凍ピラフ、シュウマイなどの“彩り”として目にすることも多いグリーンピース。グリーンピースという種類の豆があるわけではなく、基本的にはマメ科エンドウ属に分類されるエンドウマメ(豌豆)のこと。豆ではなく緑黄色野菜に分類される、大豆でいうところの枝豆のような存在です。しかし人気食材の枝豆と異なり、グリーンピースというと独特の青臭さから“子供が嫌いな野菜”のトップの方に登場しますし、大人でも苦手という方が珍しくない食材ですね。

グリーンピースを含むエンドウはサヤの硬さから“硬莢種”と“軟莢種”の大きく2つに分けられています。このうち“硬莢種”は呼び名の通りサヤが硬いため完熟・乾燥した豆を収穫する「えんどう豆(子実用豌豆)」としての利用が主。完熟した青豌豆を甘く煮たものはきれいな鶯色でお馴染みのうぐいす豆や鶯餡になりますね。もう一つの“軟莢種”はサヤが柔らかいことが特徴で、若どりしてサヤごと食べるサヤエンドウ(絹さや)やスナップエンドウなどはこちらのタイプ。

日本をはじめ世界的に見ても食用作物として消費量が多いのエンドウは“軟莢種”の方です。グリーンピースは莢を食べませんが、こちらも“軟莢種”系統の品種が使われています。

“軟莢種”系統のうち、未完熟状態で食べるエンドウは大きく3つに分けることが出来ます。

・グリーンピース(Pisum sativum var. sativum)
・さやえんどう(Pisum sativum var. saccharatum)
・スナップエンドウ(Pisum sativum var. marcrocarpon)

このうちスナップエンドウはグリーンピースとサヤエンドウを交配させて作った、お互いの良いとこどりの品種[1]です。ちなみに、どの未成熟エンドウも色は緑色。えんどう豆と言われて想像する色も、多くの方はグリーン系統の色なのではないでしょうか。日本で代表的なえんどう豆の品種『うすいえんどう(碓井豌豆/うすい豆とも)』など、緑色の豆が出来る品種の事を青実用エンドウや青豌豆(アオエンドウ)と呼びます。

それ以外にもエンドウには子実の色が赤褐色をした赤豌豆(アカエンドウ)があり、豆大福やみつまめに入っているのがこちらの品種。日本では赤・青2色のエンドウが主流ですが、海外では黄色がかった色の白豌豆や斑点が入った品種も食べられていますよ。また、かつては中華料理の高級食材だった豆苗(とうみょう)はエンドウのスプラウト。栄養豊富で通年価格も安定している、心強い家計の味方としてスーパーなどでも定番商品となっていますね。

同じ軟莢種でもサヤエンドウ系は生で食べることが多いのに対し、グリーンピースは乾燥もしくは冷凍状態で通年販売されているイメージがあるかもしれません。しかし、旬の春から初夏にかけての時期には、鞘付きのグリーンピースも販売されています。フレッシュなグリーンピースは瑞々しさと甘みがあり、味や香りはサヤエンドウに近い印象。特に“うすいえんどう”は青臭さが少なく、薄皮の食感なども口に残る感じが少なく改良されています。グリーンピースは苦手と思っている方も、一度食べてみるとイメージが変わるかもしれませんよ。

グリーンピースの選び方・保存方法

グリーンピースを選ぶ際には、さやの緑が濃く艶のあるもの・実の粒がふっくらとして大きさが揃っているものを選ぶようにします。サヤ部分にシワが寄っていたり傷が多いものは避けた方が確実です。サヤ無しで販売されている場合は、色の鮮やかさや瑞々しさ・豆のふっくらとした形などが判断基準も分かりやすくなります。

ただし、グリーンピースは乾燥に弱いので、生で買う際にはサヤに入った状態で購入するのがおすすめ。生で購入したグリーンピースはサヤから出すとすぐに固くなってしまうので、保存はサヤ付きのままビニール袋などに入れて野菜室で保存するようにしましょう。2~3日で使わない場合は固めに塩茹でしてから冷凍して保存します。

グリーンピースの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

グリーンピースは枝豆やソラマメなどの未成熟豆と同様に、日本では野菜類にカテゴライズされています。栄養価の面では豆と野菜の中間的なポジション、タンパク質の補給源に役立つことからベジタリアン・ビーガンの方の食事にも利用されています。

とは言え、枝豆ソラマメ・グリーンピースと身近な未成熟豆を同グラムで比較した場合、グリーンピースは最もタンパク質含有量は少なめ。ちなみに『日本食品標準成分表』に掲載されている“グリンピース/生”100gあたりのカロリーは93kcalと、上記3種の中で最も低カロリーでもあります。

グリーンピースのイメージ画像

グリーンピースの効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給・疲労回復サポートに

野菜には分類されていますがグリーンピースは未成熟状態の“豆”。そのため枝豆やソラマメと比べるとやや劣るものの、タンパク質が豊富に含まれています。筋肉や細胞の原料となるタンパク質(アミノ酸)だけではなく、タンパク質合成に関わる亜鉛などのミネラルも含まれていますから健康な体作りのサポートとして役立ってくれるでしょう。

また、グリーンピースは代謝に関わるビタミンB群、特に糖代謝をサポートすることで疲労回復促す働きが期待できるビタミンB1を生100gあたり0.39mgと豊富に含んでいます。含まれているアミノ酸の中には成長ホルモンの合成に関与するアルギニン、疲労回復効果が期待されるアミノ酸などの成分もあります。こうした栄養素の不足を無くし、栄養バランを整えることで疲労回復や疲れやすさの緩和も期待できます。

貧血予防・妊娠中の影響補給にも

グリーンピースは鉄分も比較的豊富です。『日本食品標準成分表』によると“グリンピース/生”100gあたりの鉄分含有量は1.7mg。野菜類として考えればトップクラスに入ります。植物性の鉄分(非ヘム鉄)は動物性の鉄分に比べて吸収率が低いとされていますが、タンパク質やビタミンCと合わせて補給することで吸収率アップが期待できます。グリーンピースにはビタミンCも含まれており、茹でてもさほど減少しません。このため、鉄欠乏性貧血予防・鉄分補給のサポートに繋がります。

グリーンピースには鉄分だけではなく、造血過程で必要とされる葉酸・赤血球膜を丈夫にする働きがある亜鉛など造血に関わる栄養素も含まれています。タンパク質・鉄分・葉酸が補給でき、妊娠中の歌謡摂取に注意したいレチノールを含まないことから妊娠中の栄養補給にも役立ってくれるでしょう。

高血圧・むくみ予防に

グリーンピースは生100gあたり340mgとカリウムも豊富に含んでいます。カリウムは塩化ナトリウムの尿中排泄を増加させる働きがあることが認められているため[2]、グリーンピースも塩分の過剰摂取によって起こる血圧上昇・高血圧の予防サポートが期待されています。

また、私達の体はカリウムが少なくナトリウムが多い状態になると、一定の血中ナトリウム濃度を保とうと水分を取り込みます。塩辛いものを食べた後に喉が渇き、水分を飲むむくむのもこのため。カリウムはナトリウムの尿中排泄を促す際に、ナトリウム濃度を保つために使用した水分も量として排出させてくれます。このため、むくみ予防・軽減にもグリーンピースは取り入れられています。

便秘予防・肥満予防に

グリーンピースは野菜類として見ても、豆類として見ても食物繊維が豊富に含まれている食材。「ひと握りのグリーンピースではサラダ大盛り1杯と食物繊維料に相当する」と表現されることもあります。実際に『日本食品標準成分表』に掲載されている“グリンピース/生”100gあたりの食物繊維総量は7.7g。同グラムで比較した場合はソラマメの約2.5、枝豆の1.5倍の含有量、同じエンドウであるサヤエンドウの2倍以上です。ゴボウゆり根などをも上回るほどの食物繊維が含まれていますから、手軽な食物繊維補給源として役立ってくれるでしょう。

グリーンピースに含まれている食物繊維の大半は不溶性食物繊維のため、腸の蠕動運動を促すことで便通を良くする働きが期待できます。加えて2010年12月に『Nutrients』に発表された食物繊維が健康に及ぼす影響についてのレビューでは、動物実験で不溶性食物繊維の摂取による体重減少が多く報告されていること、食欲と食物摂取量の減少をもたらす可能性があることが紹介されています[3]。

こうした研究から、不溶性食物繊維を多く含むグリーンピースは肥満や食べすぎの予防・ダイエットのサポートにも効果が期待されています。ただし、食べ過ぎは消化機能を低下させたり、腹痛や下痢を起こす原因になる可能性もあります。疾患のないかたであれば通常量の摂取は問題ないとされていますが、グリーンピースを大量に食べ続けるなど過剰な摂取方法は避けましょう。

血糖値・コレステロール対策にも期待

グリーンピースはタンパク質と食物繊維が豊富な食材です。研究によって有効性を認める・認めない報告が混在しており断定できる段階では有りませんが、不溶性食物繊維の摂取も血糖値コントロールに有益であるという見解もあります[3]。タンパク質についても“食事に含まれるタンパク質が増加すると2型糖尿病患者の血糖反応を改善する”という研究論文[4]が発表されており、高タンパク食が食後血糖値の上昇を抑えて血糖コントロールを改善する可能性があることが示唆されています。

加えて、マグネシウムにもインスリン抵抗性、血清脂質プロファイルを改善する[5]という研究報告があります。グリーンピースに含まれているマグネシウムは生100gあたり37mgと、それだけで推奨摂取量を満たせるもほどではないものの、不足の補給には十分に役立つ量です。

このためグリーンピースは血糖値上昇抑制、高コレステロール予防に繋がるのではないかと期待されています。グリーンピースを献立に加えるだけではなく、食事全体の見直しも必要であることは注意しましょう。

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抗酸化・免疫力サポートに

グリーンピースは抗酸化物質を豊富に含むことからも、健康メリットが期待されています。抗酸化作用が認められている必須栄養素では生100gあたりβ-カロテンを410μg、ビタミンCを19mg。そのほかβ-カロテンと同じくカロテノイドに分類されるルテイン、抗酸化作用が報告されているフェノール化合物(フェノール酸やフラボノイド)が含まれていることも認められています[6]。

こうした様々な抗酸化物質を補給できることから、グリーンピースは活性酸素/フリーラジカルを除去することで細胞のダメージを防ぎ、老化予防や免疫力維持をサポートする働きも期待されています。マグネシウムや亜鉛などのミネラル、ビタミン類は免疫システムの維持にも必要な栄養素。必須栄養素の補給という面からも、免疫期機能を正常に保つことに繋がる可能性があります。

骨粗鬆症予防にも期待

グリーンピースに含まれているマンガン、亜鉛、銅などのミネラルは、丈夫な骨を保つために必要なミネラルとして注目されています。動物実験ではマンガンと銅が欠乏することで骨形成の減少・カルシウム排泄の増加を起こす可能性が示唆されています。こうした微量ミネラルの補給の有効性については様々な研究発表があり、有効性が完全に確認されているわけではありません。

しかし、グリーンピースは食品であり、過剰摂取のリスクを抑えてミネラルが補給できる食材。際立って多くないもののカルシウム自体も生100gあたり23mg程度含まれています。骨の健康維持に対する何らかのミネラルが際立って豊富というわけではありませんが、自然に幅広いミネラルを補給できる食材として骨粗鬆症予防や健康維持サポートが期待されています。

美肌作りのお手伝いにも

グリーンピースは100gあたり410μgと、際立って多いは言えないもののゴーヤ枝豆を上回るくらいにはβ-カロテンを含んでいます。β-カロテンは抗酸化物質としても機能しますし、必要に応じて体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAカロテノイドの一つでもあります。ビタミンAはで皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあります。このため不足なく補うことで、肌を健やかに保つ・肌の新陳代謝(ターンオーバー)を正常化する働きが期待されています。

加えてグリーンピースにはフラボノイドなどの抗酸化物質や、皮膚・髪・爪の細胞の再生に関わるビタミンB2、皮膚の原料となるタンパク質(アミノ酸)も含まれています。ミネラル補給や、食物繊維による便秘改善も肌荒れ軽減に繋がりますね。抗酸化作用から肌の酸化を抑制しシワやシミなどの肌老化予防にも期待できます。抗酸化物質、肌を健やかに保つための様々な栄養素が補給できることから、グリーンピースは美肌野菜として紹介されることもあります。

目的別、グリーンピースのおすすめ食べ合わせ

グリーンピースの食べ方・注意点

グリーンピースは独特の青っぽい香りが苦手という方も少なくない食材。この青臭さはヘキサナールという成分によるもの。ヘキサナールは茹で時間を長くしたり、料理酒を使うことで減少させることが出来るとされています。青臭さがどうにも…という方の場合は、茹で時間を長くする・料理に使う前に下茹でするなどして利用してみてください。

グリーンピースの注意点

グリーンピースなどの豆類は高FODMAP食品に分類されています。
FODMAP(フォドマップ)とは小腸で消化吸収されず発酵性の高い糖類のことを指します。過敏性腸症候群(IBS)の症状を引き起こす原因として、近年はFODMAPに敏感であるという考え方が注目されています。IBSの方はグリーンピースなどの高FODMAP食を避けることで、お腹の不快症状を起こしにくくなるという食事療法も提案されています[7]。

このためFODMAPに敏感な体質の方はグリーンピースの摂取量に気をつける必要があります。IBSの診断を受けている方、食物繊維の豊富な食事をすると膨満感やお腹の不調を感じるという方はあまり多く食べないようにしましょう。また、元々食物繊維摂取量が少ない方が急に食物繊維を大量に摂取した場合も、同様にお腹の不快感・不調を起こす可能性があります。いきなり大量に食べず、体調を確認しながら食べるようにして下さい。

エンドウ(グリーンピース、さやえんどうなど)は食物アレルギーの原因の一つでもあります。他のマメ科植物アレルギーがある場合は注意が必要ですし、それ以外の方でも摂取後に口や舌の違和感やかゆみ・息苦しさなどのアレルギー反応がある場合は医療機関で診察を受けるようにしましょう。重度のアレルギー反応を引き起こす危険もありますので、違和感を感じたらすぐに摂取は中断してください。

冷凍・缶詰グリーンピースについて

グリーンピースの栄養成分・効果について、で参考値とした成分含有量は日本食品標準成分表での“グリンピース/生”掲載値を参考に作成しています。しかし実際に口にする機会としては、通年手に入る缶詰や冷凍グリーンピースなどのほうが多いというケースも少なくありません。

全体的な栄養価としては生→冷凍→缶詰といったところ。
ただし冷凍については茹でグリーンピースとそう変わりませんし、葉酸やβ-カロテンなどは多少増えるくらいなのでさほど気にする必要はありません。

問題は缶詰のグリーンピースで、こちらはビタミンC・ビタミンB1ほか水溶性の栄養素に大きな差があります。缶詰グリーンピースではビタミンC含有量は“0”、カリウム・葉酸・ビタミンB類などの含有量もごく微量となっています。鉄分や食物繊維補給としては役立つ存在ですが、特にビタミン類の補給を考えている場合は避けたほうが良いでしょう。

【参考元】