桜海老(サクラエビ)とその栄養成分・効果効能
|アスタキサンチンによる美容効果にも注目

食べ物辞典:桜海老

桜エビは名前の由来である美しい色合いと、古くから高級品として扱われてきた歴史から“海の宝石”とも称される食材。桜のようなピンク色は彩りとしても重宝し、春の料理にも使われますね。料理の主役になることこそ少ないものの、脇役としても便利な食材です。栄養面で見てもカルシウム補給源として適した存在であり、タンパク質・アミノ酸も豊富。また近年はアスタキサンチンに様々な健康メリットが報じられたことで、美容や健康のサポートとしても広く注目されています。そんな桜えびの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

桜えびのイメージ画像

和名:桜海老(サクラエビ)
英語:sakura shrimp

桜海老(サクラエビ)のプロフイール

桜海老とは

かき揚げやお好み焼き・パスタなど様々な料理に使われている桜エビ。乾物であればスーパーなどでも手軽に入手できる桜エビですが、実は静岡県の駿河湾が水揚げ量100%。他のエリアに全く分布していないというわけではありませんが、商業的に漁獲できるくらいの生息数なのは駿河湾だけなのだとか。また通年ではなく4月~6月頃の春漁・10月~12月の秋漁の時期にのみ獲られており、6月11日から9月30日までは桜エビの繁殖期であるため禁漁となっています。よりエビの風味と旨味を感じられる刺し身や桜エビ丼なども名物ですが、生食は時期と地域が限定されるため、旬の風味を味わいに遠出するという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ところで日本語の「エビ」という言葉は十脚目のうちカニ・ヤドカリ類を除いた全ての種の総称で、世界的に見ると種類は約2,400種、日本だけでも約700種と、かなり多くの種を含んでいます。エビの種類を大きく分ける場合は淡水エビ・海水エビ、卵を抱えるか・水中に放出するかなどいくつかありますが、食用としては移動方法から遊泳型か歩行型かで大別されることが多いようです。遊泳型と呼ばれるものはお馴染みの車海老や桜エビなど身体が比較的平面的なもの、歩行型と呼ばれるのは伊勢海老やロブスター(オマール海老)など円筒形寄りのガッシリとしたものを指します。

桜エビはこのうち遊泳型に含まれ、かつ深海に生息している種類となります。シラスのように子どもの時に捕獲しているわけではなく、成体は体長40mm前後と小さい種類。余談ですが英語では伊勢海老など大型のものを“ロブスター(lobster)”車エビ程度の中間サイズが“プローン(prawn)”小さめのエビを“シュリンプ(shrimp)”と呼び分けています。シュリンプというとカクテルシュリンプなどで使われる大きさをイメージしてしまいますが、桜エビも英語で言う場合はSakura shrimpになります。

一般的に“サクラエビ”とよばれているものは学名Lucensosergia lucensという種類ですが、別属も含めると「サクラエビ類」とされている種が約40種あります。私たちにも馴染みがあり、桜エビと比較的近い種類としてはキムチ作りなどに使われるアキアミがあります。外見は似ていますが富山あたりで獲れる白海老(シラエビ)は別科に分類されますから、仲間と言えるほど近い関係ではありません。

桜エビの歴史

エビ類全体で見ると、縄文時代の貝塚からもエビの殻や尾などが発掘されており古くから日本人が食してきた食材と言われています。どの種類であるかは不明ですが733年の『出雲国風土記』には縞蝦という記述が残っていますし、900年代に入ると『延喜式』ほかいくつかの書物には朝廷に献上されていたことも記されています。その後もエビは縁起物として愛され、伊勢海老などの大きいエビは高級食材として愛され続けます。

桜エビは大御所となった徳川家康公が過ごした駿河が産地ですから、江戸時代にも食べられていたような印象がありますが、実は当時は漁獲されておらず食用の歴史の浅いエビです。江戸時代にも桜色をした小さく美しいエビが居るということは地元の漁師さんの間で知られていたそうですが、初めての桜エビ漁は明治27年とされています。ある夜に由比町今宿の望月平七氏と渡辺忠兵衛氏が網を浮かせておく浮樽を忘れ、仕方なくそのまま網をかけると深く沈んだ網に大量の桜エビがかかっていたんだとか。桜エビは昼間は深海に潜り夜に浮上してくる性質がありますから、夜だったこと・網を深めに入れたことなどが重なり漁獲法を発見したとも言えますね。

この失敗が起源となり、本格的にサクラエビ漁が行われるようになります。高値安定とも言われる希少な桜エビは乱獲が行われやすかったため、早い段階で資源保護のために県の許可漁業とされたそうです。しかし許可制に対して不満が出て自由漁業へと戻されたり、海の汚染によって漁獲量が数百トン減少した時期があったりなど様々な問題があったのだとか。

1977年からは桜エビの生息数と共に価格も安定するよう、サクラエビ漁を行っている三地区で総プール制度(水揚げ代金の均等分配制度)が採用されています。桜エビ漁100周年の節目とされる1994年に行われた式典を期に“比桜えびまつり”も開催されるようになり、特産品である桜エビの美味しさ・生物としての希少さが広く知られるようになっています。

桜海老(サクラエビ)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

桜エビもエビと基本的には似ていますが、桜エビほか小エビ類は殻ごと食べられることからカルシウムが多く摂取できることが特徴的です。近年は色素成分であるアスタキサンチンに様々な健康メリットを持つ可能性があることも注目されています。

下記記載数値は『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』の“さくらえび/素干し”を元にしています。ちなみにカロリーは100gあたり312kcal、生(茹で)の場合であれば91kcalとなっています。干しエビであれば栄養成分がより凝縮されていますし、レシピにも足しやすいので育ち盛りのお子さんから高齢の方まで栄養バランスを整えるのに役立ってくれるでしょう。

桜えびのイメージ02

桜エビの効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給・疲労回復に

桜エビにも天然色素成分でカロテノイドの一種であるアスタキサンチンが含まれています。アスタキサンチンは筋組織における末梢性疲労軽減効果が認められていますし、高い抗酸化作用から筋損傷を軽減する作用も期待されています。このためアスタキサンチンは運動パフォーマンスの効率向上や筋肉痛・疲労予防に役立つと考えられています。

また食品成分表には記載がないため含有量についてはハッキリしませんが、他のエビと同様に代謝を促進するアスパラギン酸・筋肉増強・疲労軽減に有効とされているBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)・アンモニア解毒を促進するアルギニンなど疲労軽減に役立つアミノ酸も多く含まれていると考えられます。特に素干し状態であれば水分が抜け全体重量の60%以上がタンパク質となっていますから、補給源として使いやすい存在と言えるでしょう。加えて代謝に関わるビタミンB群をはじめビタミン・ミネラルなども幅広く含まれていますので、総合的に滋養強壮や疲労回復効果が期待できるでしょう。

二日酔い予防・肝臓サポート

桜エビはエビの中でもタウリンを多く含む種類と考えられています。タウリンは非必須アミノ酸の一種で、胆汁酸の分泌を促す・肝細胞の再生を促すなどの働きが期待されている成分。ラットを使った実験ではタウリンに脂肪肝の中性脂肪を除去する働きが見られたことも報告されています。アミノ酸のベタインにもは肝臓への脂肪沈着予防・脂肪排出促進作用がありますから、エビは肝機能向上や脂肪肝・肝臓疾患予防など肝臓全体の健康維持に対しても効果が期待されています。

加えてタウリンにはアルコールの分解途中で発生し、毒性の強さから二日酔いの主原因とも言われている“アセトアルデヒド”の分解を助ける働きもあります。桜エビにはアルコール脱水素酵素やアセトアルデヒド脱水素酵素の働きを助けるナイアシン・アルコール分解の促進効果が期待されるアラニンやグルタミンなどのアミノ酸も豊富に含まれています。アルコール分解に必要な亜鉛などのミネラル補給にもなりますから、悪酔いや二日酔いの予防・軽減にも効果が期待できます。

骨粗鬆症・貧血予防

桜エビは非常に多くのカルシウムを含む食材でもあります。素干し100gあたりのカルシウム含有量は2000mgと、同グラムで比較すると乾燥ヒジキの2倍にもなります。カルシウムは骨や歯に存在しており、不足すると骨密度低下による骨粗鬆症リスクが高まる・骨や歯がもろくなることが知られています。カルシウムの適切な補充は骨や歯の丈夫さを保つために必要と考えられています。カルシウムの吸収・沈着を助けてくれるビタミンKやビタミンDと合わせて摂取するようにするとより効果的でしょう。

加えて乾燥桜エビは鉄分や亜鉛など他ミネラルの補給源としても使いやすい食材のため、貧血予防にも活用できます。造血に関わる葉酸やビタミンB12の含有量も比較的多いので、貧血の方だけではなく妊娠中の栄養補給源としても取り上げられることがありますね。そのほかカルシウムと互いにバランスを取り合うことでストレス耐性を高めたり、イライラ予防に役立つとされるマグネシウム含有量も多いので、色々な方面からママをサポートしてくれる食材と言えるかもしれません。

老化・生活習慣病予防

エビの代表成分と言われるのが天然色素成分でカロテノイドの一種であるアスタキサンチン。鮭の身が赤いのも餌となるエビやカニなどの甲殻類に含まれているアスタキサンチンによるものです。アスタキサンチンは活性酸素を抑制・除去する働きを持つ抗酸化物質の一つですが、カロテノイド類の中で最も高いと言われるほど強力な抗酸化作用を持つと考えられており、さらに細胞膜の内外と働く場所が決まっている抗酸化物質が多い中で細胞膜内外を選ばずに作用する成分とも言われています。この優れた抗酸化作用によって活性酸素増加が引き金となって起こる、老化現象や生活習慣病の予防に高い効果が期待されています。

この優れた抗酸化作用によってアスタキサンチンは活性酸素増加が引き金となって起こる、生活習慣病の予防に有効とされています。加えてタウリンには血中の悪玉コレステロール低減・善玉コレステロール増加が期待されていますし、キチンもコレステロール低下効果があることが報告されています。アスタキサンチンの抗酸化作用と合わせて、コレステロールと活性酸素が結合して出来る過酸化脂質が血管壁に蓄積て起こる動脈硬化の予防にも役立ってくれるでしょう。

目の疲れ・眼精疲労予防に

鮭やエビ・カニなどに含まれている赤色色素アスタキサンチンは網膜色素上皮層にある血液網膜関門を通過できる数少ない抗酸化物質であり、血流改善効果も期待されている成分。現代病の一つとも言われる眼精疲労はピント調節機能の低下・目のかすみ・視力低下・肩こり・頭痛などの症状が挙げられますが、原因としては目を酷使することで目の周囲にある毛様体筋という筋肉が疲労し機能が衰えることが考えられています。

このためアスタキサンチンがダイレクトに目に発生した活性酸素を除去する・血流改善効果により毛様体筋に蓄積した疲労物質の排出を促すことで、眼精疲労による諸症状改善に有効と考えられています。臨床実験では1日5mgのアスタキサンチンを一ヶ月間摂取することで、眼精疲労の改善がみられたことも報告されています。また目の活性酸素を抑制し新鮮な栄養・酸素を行き渡らせる働きから、ピント調節機能の低下によって起こる老眼の予防や軽減にも役立つのではないかと考えられています。加えてタウリンも網膜の光受容体(光を完治して脳に伝える細胞)に存在し、網膜を刺激から守る働きがある成分であることから目の負担軽減・疲労回復効果が期待されています。

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デトックス・肥満予防にも

肝臓は血液中の毒素を濾過する役割を持っています。このためタウリンやアラニン・グルタミンなどの肝臓機能をサポートするアミノ酸の摂取は肝臓の解毒機能を高める=デトックス力向上にも繋がると考えられています。加えてエビやカニなどの甲殻類の殻には「キチン」という動物性食物繊維が含まれており、コレステロールや有害物質を吸着し体外へ排出させる働きが期待されています。キチンは“殻”に多く含まれている成分ですから、殻ごと食べられる桜エビはよりデトックスサポートに役立つという説もあります。

デトックスサポートだけではなく、キチンは脂肪と結合して膵臓から分泌されるリパーゼの反応を阻害することで腸管からの脂肪吸収を抑制する働きも報告されているため抗肥満成分としても注目されています。アスタキサンチンも脂肪を分解する時に働くタンパク質を活性化させ糖よりも脂肪を優先的にエネルギーとして利用するよう促す=運動時の脂肪燃焼効率を高める可能性があることが報告されています。桜エビは低脂質・低糖質・高タンパク食材でもありますし、造血や血行に関わる栄養素も多く含まれていますから、複合して肥満予防・代謝向上・運動効率アップなどダイエットのサポートにも役立ってくれるでしょう。

そのほかタウリンには筋肉の収縮力を高めることでむくみを改善する働きが、アミノ酸一種であるアスパラギン酸も尿の合成を促進する働きにより利尿効果をもたらすと考えられています。アスパラギン酸にも体液バランスを保つカリウムやマグネシウムを細胞に取り込みやすくする働きがあります。エビにはカリウムやマグネシウムなどのミネラルも含まれていますし、抗酸化作用や血行促進作用のあるビタミンEも比較的多いため、複合してむくみ予防にも効果が期待されています。

美肌作り・アンチエイジングに

桜エビには抗酸化物質であるアスタキサンチンやビタミンEが含まれているため、肌に対してもアンチエイジング効果が期待できます。特にアスタキサンチンはビタミンCの6000倍・ビタミンEの1000倍とも言われるほど高い抗酸化作用が期待されているカロテノイドで、紫外線などにって生じた活性酸素からコラーゲンやヒアルロン酸を産生している“ヒト皮膚線維芽細胞”を守る働きが強いことも報告されています。メラニン色素生成抑制にも役立つため、内側からのアンチエイジング・美白(シミ対策)として高い効果が期待されています。

またアスタキサンチンにはコラーゲンやエラスチンの生成を促す効果があることも報告されています。エビのタンパク質の中には天然保湿成分(NMF)やコラーゲンの元になるグリシン・肌の潤いを保つ働きが期待されるアスパラギン酸などのアミノ酸が豊富ですし、コラーゲンも含まれていますので抗酸化作用と合わせて肌のハリや潤い保持のサポートとしても役立ってくれるでしょう。鉄分ほかミネラルの補給源にもなりますので、くすみや肌荒れ予防にも効果が期待できます。

目的別、桜エビのおすすめ食べ合わせ

桜海老(サクラエビ)の食べ方・注意点

干しエビはナトリウムが非常に多くなっていますので、食べ過ぎには注意が必要です。

エビ類の注意点

エビを始めとする甲殻類はアレルギーを起こす可能性がある食べ物でもあります。原因物質は「トロポミオシン」というタンパク質で、甲殻類に多く含まれているほかイカ・タコ・貝類などにも含まれています。アレルギーを自覚している方はもちろんですが、これら食材を食べて不快感を感じたことのある方・他にもアレルギーがある方は注意しましょう。特に体調がすぐれない時や運動直前などは控えるようにすると良いでしょう。