和梨/日本梨)の特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:梨(ナシ)

暑さの残る時期に嬉しい、さっぱりした甘さとみずみずしさ、さっくりとした食感を持つ日本の梨。日本で栽培されてきた果樹の中では最古のグループと称されるほど、日本人にとっては馴染みのある果物の一つでもあります。民間療法では解熱や咳止めにも役立つ果物としても親しまれてきましたし、水分量が多く食べやすいので夏バテや二日酔いの時のレスキュー食にもぴったりな果物。栄養価は高くありませんが、低カロリーなのでダイエット中の甘味補給にも適していますよ。そんな和梨(日本梨)の歴史や特徵、栄養価と記載される健康メリットについて詳しくご紹介します。

和梨ののイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:和梨(わなし)/日本梨(にほんなし)
英語:Sand Pear/Nashi Pear/Japanese pearなど
学名:Pyrus pyrifolia var. culta

和梨(日本梨)のプロフイール

和梨とは

日本で一般的に「梨」と呼ばれているのは、瑞々しくシャキシャキとした歯ごたえが特徴的な和梨もしくは日本梨と呼ばれる種類同じ“梨”とは付くものの、ラフランスなどねっとりジューシーな食感を持つ洋梨類とは全く別物ですよね。和梨のほうが香りや甘味が淡白であっさりしていることもあって、洋梨が洋菓子やお酒の原料として多く利用されているのに対し、和梨は青果用としての需要がほとんど。一番好きな果物として名前を挙げる方は少ないかも知れませんが、程よい甘みシャリシャリとした噛み心地の良さは嫌われることの少ない食材と言えるかも知れません。そのまま食べる以外にも家庭料理としては冷麺の具や漬けダレなどへ利用されています。カレーの隠し味に擦りおろしたものを入れたり、キムチのアクセントとして入れても美味しいですよ。

日本人にとっても古くから馴染みのある和梨は、バラ科ナシ属に分類される果樹のうち学名Pyrus pyrifolia var. cultaという種類の品種を指します。var.が付く=変種という扱いですが、西洋梨の変種という訳ではなく、基本種とされるのはヤマナシ(山梨)と呼ばれる野生種。果物として食べる梨は大きく「日本なし(和梨)」「西洋なし」「中国なし」の三種類に分けられますが、これらは全て種子名が異なる別種として扱われています。祖先と言える種は中国~中央アジアにかけての地域が原産。それが原産地から東西へと伝わり栽培されていく中で和梨・洋梨・中国梨に分化していったのだとか。

ヤマナシから作物化された栽培品種群の一つが和梨もしくは日本梨と呼ばれる、私達日本人にとってお馴染みの梨。いつから日本に存在していたかは断定されていませんが、弥生時代頃に中国もしくは朝鮮半島から食料として持ち込まれたという見解が有力視されています。和梨は更に豊水・幸水・新興など外皮に褐色がかったもの“赤梨系(ラセット系)”と、二十世紀・二十一世紀など外皮の色が黄緑に近い“青梨系(グリーン系)”の2タイプに大きく分けられています。和梨は赤茶色系・青色系が多いのに対して、中国梨は日本の赤梨よりもクリーム色寄りの黄色系がポピュラー。洋梨にはリンゴやトマトのような鮮やかな赤色を持つもの、黄色系と赤色系の交配種でサツマイモのようなピンク色をした梨などもあります。形状と色合いからも種類の違いは分かりやすいですね。食感としては洋梨は柔らかい歯ごたえが、中国梨は和梨よりも硬い食感が特徴とされています。

ちなみに“ナシ”という名前(音)の由来については諸説ありハッキリしていません。江戸時代の学者新井白石は“種のある中心に近づくほど酸味が強くなる=中酸(ナス)”を語源だと述べていますが、その他にも中国の「梨子」語源説や、果肉が白いので「色なし」から変化したなど面白い説がたくさんあります。その音からオヤジギャグに使われることもありますが、昔も家に植えて「何もなし」と泥棒よけのおまじないにしたり、鬼門に植えて厄除けにする「鬼門無し」など縁起担ぎにも使われていたのだとか。梨は同じ科である桜やアーモンドなどに似た綺麗な花を付けますから、見た目にも綺麗ですしね。

和梨の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

和梨は全体重量の約9割が水分で、100gあたりのカロリーは43kcalと低め。糖質が多いというイメージを持たれがちな果物の一つですが、実は糖質量・カロリーともにリンゴよりも低いのでダイエット中などでも取り入れやすい存在と言えるでしょう。ただしビタミン・ミネラルの含有量は果物類の中でもさほど多くありません。

カットした和梨のイメージ画像

和梨の効果効能、その根拠・理由とは?

疲労回復・消化サポートに

和梨には糖代謝を行う代謝を行うTCAサイクル(クエン酸回路)の活性化に役立つ可能性があるリンゴ酸やクエン酸などの有機酸、エネルギー源であるブドウ糖などが含まれています。また含有量は多くはありませんが、クエン酸回路を円滑に回すサポートをしてくれるアミノ酸のアスパラギン酸も含まれています。これらの成分が相乗して働くことで即効性のあるエネルギー源となり、疲労回復も助けてくれると考えられています。水分補給にもなりますしね。

和梨にはタンパク質の消化を促すタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が含まれていますお肉の下ごしらえや焼肉のタレなどに梨が使われるのも、この酵素の働きで肉を柔らかくしてくれるという働きがあるため。摂取した場合についてもタンパク質の分解を助けてくれる可能性があることから、和梨は消化サポートに役立つのではないかという説もあります。肉料理などを食べて胃がもたれやすい方は、食後に梨を少量食べてみても良いかもしれません。

便秘・むくみ緩和に

和梨の食物繊維量は100gあたり0.9gと、果物類の中で見てもやや低い部類に属します。しかし梨に含まれている糖アルコールの一種ソルビトールは酸化マグネシウムと同じように吸水作用によって便を柔らかくし腸の蠕動活動を活発にする働きがあり、下剤などにも使われています。加えて梨のシャキシャキ・ザラザラ感の元である石細胞(リグニンやペントザン)は食物繊維と同じような働きが期待されていますから、こちらも腸を綺麗して便秘の解消に役立つと考えられています。食物繊維を摂っても水分が少ないと便が固まってしまう可能性がありますが、水分の多い梨なら水分補給にもなりますね。

同様に含有量が高いという訳ではありませんが、カリウムを含んでいますのでナトリウム過多によるむくみの軽減にも役立ってくれるでしょう。特に塩辛いもの・味の濃い食事を摂った後や、お酒を飲んだ翌朝などのむくみ・身体の重さ(だるさ)軽減に効果が期待できます。そのほかアスパラギン酸にも塩分やアンモニアを体内に排出する働きがありますから、成分量的に即むくみ解消とはいかなくとも、むくみ軽減のサポートとしては役立ってくれそうです。

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夏バテ・二日酔い緩和に

梨は漢方や薬膳で解熱効果のある食材として利用されてきました。栄養成分的にも梨はカリウムが多めで水分バランスを整えるのに役立つこと、塩分やアンモニアを体内に排出する働きがあるアスパラギン酸と相乗しての利尿効果が期待されています。尿の排出が促されることで体内の余計な熱も排出され解熱に繋がりますし、梨は水分量が多いので体の熱を冷ましつつ脱水予防にもなると考えられます。そのほか梨に含まれている糖アルコールの一種であるソルビトールも解熱作用があるのではないかという説があります。

また梨は水分が多く、アルコール排出を促す作用があるとされるタンニンも含んでいるため二日酔いの軽減にも効果が期待されています。アルコールによって失われたビタミン・ミネラル類の補給にも役立ちますね。

高血圧予防にも

梨はカリウムを含むことから高血圧予防に良いと考えられています。カリウム含有量は100gあたり140mgと際立って多いわけではありませんが、不足分の補給源としては役立ってくれるでしょう。野菜などにはカリウム含有量が数倍のものもありますが、和梨は塩やドレッシングなどを使わずに食べられるという点もメリットですね。そのほか食物繊維の一種リグニンにもコレステロール値抑制などの働きが期待されていますし、タンニンなどのポリフェノールも含むため血液循環のサポートという点からも高血圧予防に繋がる可能性もありますよ。

血糖値が気になる方や糖尿病の方には適さないように思われがちですが、梨に含まれているソルビトールは他の糖類よりも吸収スピードが遅く、吸収率が悪いという性質があります。糖尿病合併症の原因としてソルビトール蓄積が報じられることもあり身体に悪そうというイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、果物などの食品からはほとんど吸収されないので合併症進行の心配はないと言われています。食べ過ぎには注意が必要なものの、梨はカロリーも低いので、糖尿病の方であっても1日半分くらいであれば摂取出来ます。

肌への働きかけについて

梨は100gあたり3mgと果物の中ではビタミンCが少なく、果物に多くみられるβ-カロテンなども含んでいません。肌への働きかけとしては便秘改善や解熱作用による肌荒れ予防・緩和などが第一に挙げられています。際立って含有量が多いというわけではありませんが、アスパラギン酸は肌の新陳代謝促・保湿効果があるとされています。利尿・解熱作用と合わせて乾燥肌の予防にも役立ってくれるかもしれません。そのほか信頼性が高いデータがなく含有量などは不明ですが、タンニンやアルブチンを含み抗酸化やシミ予防などにも効果が期待出来るという説もあります。

和梨と洋梨の違いについて

食感も形状も別物と言っても良い洋梨と和梨。栄養成分として見た場合にはさほど変わりません。差があるのは、カロリーと糖質・食物繊維量くらいでしょうか。和梨のカロリーが100gあたり43kcalなのに対して、洋梨は54kcalと少し高め。この差は炭水化物が多いためではありますが、その分ソルビトールの含有量も洋梨の方が2倍近く多くなっていますよ。食物繊維総量も洋梨の方が多めで、特に水溶性食物繊維量については和梨の3.5倍となっています。ただし和梨には食物繊維と同じ働きをしてくれる石細胞(リグニンやペントザン)が多く含まれていることから、便通改善についてはさほど差が無いとする説もあります。

和梨のメリットはカロリーが低く、噛みごたえがあること。ダイエット中の食事の物足りなさ・甘味補給として取り入れられることが多いように感じます。ただし上記の違いがある程度で、約2倍と言っても元々の含有量が多いものでもありませんので必須栄養素について明らかな差があるとは言えません。ちなみにミネラル類はカリウム以外は微量と言って差し支えない程度、葉酸についても100gあたり和梨6μg・洋梨4μgとどちらも補給源とは言い難い程度です。

対して洋梨のメリットと言えるのは水溶性食物繊維が多いことと、和梨には含まれていないアルブチンが含まれているという点が挙げられます。腸内環境改善や美白を心がけている方には適しているかも知れません。特にラ・フランスはアルブチンが多いと言われていますから、紫外線・シミ対策に取り入れたい方には良いかもしれません。とは言え栄養面での差よりも、風味や食感の違いの方が大きいと言える2つの梨。気分や好み・旬の時期に合わせて嗜好品として食べることをお勧めします。

↓洋梨についてはこちら

目的別、梨のおすすめ食べ合わせ

  • 和梨+カブ冬瓜・ハチミツ
    ⇒咳・喉の痛みの緩和に
  • 和梨+大根・ヨーグルト・キムチ
    ⇒便秘の改善に

梨の選び方・保存方法

洋梨と異なり和梨は追熟しない果物の一つですから、購入時にしっかりと熟しているものを選ぶ必要があります。幸水などの赤系品種であれば、色が黄色よりも赤みがかった褐色に近いものが完熟の証。二十世紀などの青系品種であれば鮮やかなグリーンではなく黄緑~黄色っぽい色になっているものが熟していると言われています。

色以外では形が均一でお尻の方にしっかりと丸みがあり、軸がしっかりとしているものを選ぶと良いでしょう。左右で形状が大きく異なっていたり、皮の色むらが激しいものは避けたほうが無難。水分が多い果物ですから、大きさや形が同じ様な感じで迷った場合は、手に持った時にずっしりとした重みを感じられるものを選ぶようにしましょう。水分が蒸発して行くほど味・食感共に落ちてしまうため、保存は乾燥を避けるように新聞紙で包んでからポリ袋などに入れて冷蔵庫(野菜室)へ。

【参考元】