食べ物辞典:さつまいも
私達の食生活の中でもお馴染みのサツマイモ。焼き芋や煮物をはじめ、さつまいもスイーツ、ポタージュやフライドポテトなどの洋食レシピにも広く使われています。日本に伝わってから300年ほどですが、秋の味覚を代表する一つにもなっています。食物繊維やヤラピンという特徴成分の働きから便秘対策にも効果が期待されていますし、主食と置き換えることでダイエットにも取り入れられていますよ。そんなサツマイモの歴史や栄養価、調理法によってGI値が変化するなどの注意点について詳しくご紹介します。
和名:サツマイモ(薩摩芋)
英語:Sweet potato
学名:Ipomoea batatas
さつまいものプロフイール
さつまいもとは
素材の味を活かした焼き芋をはじめ、天ぷらや煮物などのおかず、芋けんぴや大学イモなどのお菓子、芋焼酎やデンプンの原料など様々に利用されているサツマイモ。秋から冬にかけての風物詩の一つには焼き芋屋さんの「いしやぁーきいも/栗よりうまい十三里」という声がありますが、こちらは1700年頃に京都に焼き芋屋さんが登場し栗(九里)にはやや劣るが…という洒落で「八里半」という看板を出したことがきっかけ。後に江戸に伝わった際に“栗(九里)より(四里)うまい十三里”として「十三里」の看板に直され、現在に至るまで使われているのだとか。この“十三里”にちなんで川越いも友の会によって10月13日は「サツマイモの日」とされていますし、時期的にもサツマイモが美味しい頃ですよね。
ジャガイモ・里芋と並んで日本ではポピュラーな“芋”の一つとなっているサツマイモ。学名はIpomoea batatasで、ヒルガオ科サツマイモ属に分類されています。まとめて“芋”とは呼ばれていますがジャガイモはナス科・里芋はサトイモ科なのでかなり離れた存在となっており、サツマイモの近縁種としては観葉植物の朝顔があります。生産者でなければ目にする機会は少ないですが、さつまいもの花は外側から内側にグラデーションかかった色味で上向きの釣鐘形、朝顔の花とよく似ています。ちなみに日本では“サツマイモ(薩摩芋)”という呼び名が一般的に使用されていますが、これは薩摩の特産品であったことが由来。地域によっては伝来経路との関係で唐芋・琉球薯などという呼び名も使われており、古くは九州だと唐芋、東日本ではさつまいもと呼ぶ人が多かったそう。
サツマイモは南アジアやアフリカ諸国でも生産されている作物で、世界的に見ると3000~4000種類が存在するとも言われるほど栽培品種が豊富。日本国内でも約60品種の作付けが行われており、東日本では“ベニアズマ(紅あずま)”、西日本では鳴門金時や紅さつまなど“高系14号”系統品種、九州では芋焼酎の原料としても使われる“コガネセンガン(黄金千貫)”が代表的です。近年はクリームのようなねっとりとした食感・強い甘みを持つ安納芋系の品種も人気になっていますね。サツマイモと言えば赤紫色の皮・クリーム色の果肉のものがポピュラーですが、安納芋系は果肉がオレンジ色。更にカロテンを豊富に含みオレンジ色の濃いにんじん芋や、アントシアニンを含む紫芋(紅芋)もありますし、九州で多く作られているコガネセンガンは果皮も果肉も白っぽい色をしています。
ところでサツマイモを英語では“Sweet potato”と呼びます。日本でスイートポテトと言うとサツマイモにバターや砂糖などを混ぜて焼いたお菓子のことを指す言葉ですが、英語ではサツマイモそのものの事になるんですね。直訳すると「甘いジャガイモ」になりますが、元々はサツマイモが“potato”だったのにジャガイモが導入され普及したことで「甘い方のイモ」という感じでsweetがプラスされたのだそう。日本でも同じ様なニュアンスでサツマイモを“甘藷(カンショ)”と呼ぶ場合もあります。ただし甘藷糖はサツマイモではなくサトウキビ(甘蔗)が原料。また、英語、特に北米圏で使われている英語ではサツマイモのことを山芋と同じく“yam”と呼ぶ方もいらっしゃり、英語で検索すると「ヤムイモとサツマイモの違いとは」という記事が多く出てくるほど。日本でもヤマノイモ属のウベ芋(大薯)と紫芋の近い・見分け方などが紹介されていますから、各国共通でイモ類の区別は分かりにくいと言えるのかもしれません。
さつまいもの歴史
サツマイモの起源は薩摩(九州)でも唐(中国)でもなく、中央アメリカまたは南アメリカと推測されています。古いものでは紀元前1万年~8000年前頃の遺跡からサツマイモの根が発掘されていますし、中央アメリカでは5000年前頃からサツマイモの作物化が行われていたのではないかという説が有力視されています。植物としては全く別物ですがジャガイモもサツマイモも同じあたりの地域が原産、ジャガイモの栽培が行われるようになったのは紀元前500年頃と考えられていますから、サツマイモのほうが作物としての歴史は長い可能性が高そうですね。サツマイモは世界で最も古い栽培作物の1つ、アメリカ大陸で最も古い栽培作物のグループに入るという説もあります。
紀元前のうちにサツマイモは中央アメリカ周辺へと広がっていき、ハイチやキューバなどカリブ海の島々にも伝わっていきます。サツマイモの学名はIpomoea batatasで、種小名となっているbatatasはカリブ海の島々に済んでいたタイノ族の人々がサツマイモを「batata」と呼んでいたことが語源とされています。このbatataとポテトを表すケチュア語papaと組み合わせてスペイン人が「patata」と呼び、変化して“ポテト(Potato)”という言葉が完成しました。余談ですが、ネイティブアメリカン達はヨーロッパ植民地化のずっと前にノースカロライナ州でサツマイモを栽培していたという理由と、現愛もアメリカ国内の主産地であるという理由から、ノースカロライナ州ではサツマイモを“州の公式野菜(official state vegetable)”としています。
サツマイモはヨーロッパ人が到達する以前にはニュージランドやパプアニューギニア・イースター島などのポリネシアエリアでも栽培が行われていたことが分かっています。伝播経路については判明していないものの、古代ポリネシア人と南米は船で行き来をしていたのではないかという説や、人間の手ではなく自然(風、水、鳥など)によって拡散されたという説まで様々です。1492年にコロンブスが新大陸へ到達し、それを自国スペインへと持ち帰ったことは分かっています。コロンブスら一行はサツマイモをイザベラ女王にも献上し、ヨーロッパを介してフィリピンなど温暖な地域へも持ち込まれます。約100年後の1594年にはフィリピンから中国にもサツマイモが伝わり、不作時のための備えとして栽培が行われたようです。時期については諸説ありますが、日本にもほぼ同時期、1600年前後に中国から宮古島が与那国島などにサツマイモが伝わりました。
沖縄の次にサツマイモが伝わったのは九州。1698年に種子島島主が琉球王尚貞より取り寄せ栽培した・1705年に薩摩山川の前田利右衛門が琉球から甘藷(サツマイモ)を持ち帰り栽培されるようになったなど諸説あります。ちなみに、種子島の下石寺神社には「日本甘藷栽培初地之碑」が、前田利右衛門を祀る徳光神社には“からいも神社”とも呼ばれ「さつまいも発祥の地」とする碑があります。1730年頃には享保の大飢饉を憂いた8代将軍徳川吉宗が救荒作物として甘藷(サツマイモ)を栽培することを学者の青木昆陽に命じました。昆陽は試験栽培や『蕃薯考』を記すなどサツマイモ栽培普及に尽力し、このお陰で天明の大飢饉による飢餓が軽減されたと評価されていますよ。青木昆陽は“甘藷先生”と呼ばれたほか、この功績を顕彰するため千葉市には『昆陽神社』が建てられ青木昆陽は“芋神様”としてお祀りされています。
さつまいもの栄養成分・効果について
栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
サツマイモは全体重量の65%程度が水分で、30%を少し超えるくらいの割合が炭水化物となっています。糖質の含有量が高めで生100gあたりのカロリーも皮むきで134kcal、皮付きで140kcalとジャガイモや里芋よりも高め。イモ類の中でもカロリーが低めの里芋は生100gあたり58kcalですから、サツマイモは倍以上のカロリーがあるという事になりますね。糖質量も同じく里芋の倍程度にはなりますが、サツマイモは「芋(主食)と野菜の中間的な栄養価」とも称されるようにビタミン類やミネラル類も豊富なことも特徴。
さつまいもの効果効能、その根拠・理由とは?
便秘対策・腸内環境サポートに
サツマイモは食物繊維が豊富という印象を持っている方も多い食材ではないでしょうか。しかし『日本食品標準成分表(七訂)』に掲載されている100gあたりの食物繊維量は皮なしで2.2g・皮付きで2.8g。この食物繊維含有量は芋類の中では多いものの野菜類としてみればゴボウの約半分、サツマイモが際立って多くの食物繊維を含んでいるというわけではありません。サツマイモの特徴と言えるのは、皮付きであれば生100gあたり水溶性食物繊維0.9g・不溶性食物繊維1.8gと食物繊維全体に占める水溶性食物繊維の割合が大きいことが挙げられます。
不溶性食物繊維は水を吸って膨らみ、便の量を増やすことで腸を刺激して蠕動運動を活発にすることが得意な食物繊維。水溶性食物繊維は水に溶けてゲル化する性質があり、適度な水分量を保って便の硬さを調節する働きがあります。便秘改善にはこの異なる性質を持つ食物繊維をバランスよく補給することも重要で、理想的とされる不溶性:水溶性=2:1のバランスにサツマイモはピッタリと当てはまる食材なんです。そのほかにサツマイモを切った時に出てくる白い乳液状の物質ヤラピンにも腸の蠕動運動促進して緩下作用を持つ・胃腸粘膜の保護作用によって腸内環境を整える働きが期待されています。
二種類の食物繊維+ヤラピンを補給できることから、サツマイモはお腹の調子を整える手助けをしてくれる食材として親しまれてきたと考えられます。ヤラピンはサツマイモの皮の近くに多く存在しており、皮部分は食物繊維も豊富。便秘予防や便通改善のために食べる場合は皮ごと食べるようにすると良いでしょう。ちなみにサツマイモを食べるとお腹が張る・オナラが出るのも、腸の働きが高められることで蓄積されたガスの排出が促されていると考えられています。ただし体質によっては食物繊維の取り過ぎで下痢・便が固くなる・お腹は動くのに便通に結びつかないなどの不調が出る場合もありますので適量の摂取を心がけてください。
むくみ・高血圧予防に
サツマイモはカリウムを生100gあたり480mg、皮付きの場合だと100gあたり380mg含んでいます。このためサツマイモは便秘だけではなくむくみ予防、高血圧の予防を手助けしてくれる可能性があります。というのも、カリウムはナトリウムと競合して細胞内外の浸透圧を調整するミネラルで、ナトリウム量が多い場合はそれを排出させる働きがあります。カリウムが少ない状態でナトリウム濃度が高まると、私達の体は水分を取り込むことでナトリウム濃度を一定に保つ仕組みが組み込まれています。
いわば水でナトリウムを薄めるようにすることで体は正常な機能を維持していますが、水分を取り込むことでむくみが発生したり、血液量が増えることになるので心臓に負担がかかり血圧が上がりやすくなるというデメリットもあります。ナトリウムの排出を促すカリウムを補給してあげることで、ナトリウム・ナトリウム濃度を保つために蓄えられていた水分の排出が促されます。このためカリウム、カリウムを豊富に含むサツマイモはむくみ・高血圧の予防に役立つと考えられています。
抗酸化・心臓の健康サポートに
サツマイモは生(皮むき)100gあたり29mgと、リンゴやレタスの5倍以上のビタミンCを含んでいます。ビタミンCは熱に弱い性質がありますが、サツマイモなどの芋類に含まれているビタミンCはデンプンに覆われているため調理による破損が少ないという特徴もあります。このためジャガイモやサツマイモなどはビタミンC補給に優れた食材と考えられています。抗酸化作用を持つ成分としてはビタミンEも1.5mg、若干ではあるもののβ-カロテンも含まれています。そのほかクロロゲン酸も含まれていることが認められていますから、抗酸化物質の補給源としても役立ってくれそうですね。
また、オレンジ果肉系のサツマイモはβ-カロテン・紫色のサツマイモはアントシアニンを多く含んでいることも認められています。日本でポピュラーなサツマイモはクリーム色系の果肉ですが、アメリカではオレンジ系品種がポピュラーなため『USDA Nutrient Database』では”Sweet potato”のβ-カロテン含有量は100gあたり8509μg(レチノール活性当量709μg)と掲載されています。2010年の『Journal of Food Science』に発表されている南アフリカで行われた4種類のサツマイモの酸化防止能力と酸化防止剤含量についての調査では、2つのオレンジ果肉品種が、2つのクリーム果肉品種よりも有意に多くのベータカロチン・クロロゲン酸・ビタミンCを含んでいたことが報告されています。抗酸化作用を期待するのならば果肉の色が濃いものを選ぶと良さそうですね。
ともあれ、サツマイモは抗酸化物質を含み、体内の脂質・タンパク質・DNAなどに悪影響を及ぼすことが指摘されている活性酸素/フリーラジカルの増加を抑える働きが期待されています。酸化ストレスは体の持つ様々な機能を低下させたり老化を促進するリスクファクターとなることから、抗酸化物質の補給は体を若々しく健康な状態に保つことに繋がると考えられていますよ。活性酸素が悪玉(LDL)コレステロールを酸化させることで出来る“酸化LDL”の増加・蓄積がリスクファクターになる動脈硬化や血栓予防、カリウムの補給に役立つことから高血圧予防など心臓の健康サポートに繋がる可能性もあるでしょう。
免疫機能向上にも期待
サツマイモに比較的多く含まれているビタミンCは、抗酸化作用を持つだけではなく様々な働きを持つ可能性が報告されているビタミンです。ビタミンCは免疫細胞にも存在しており、不足すると免疫システムを弱める=感染のリスクを高めてしまうのではないかと考えられています。2017年に『Nutrients』に掲載されたビタミンCと免疫機能についての研究では、ビタミンCの補給が呼吸器感染症と全身感染症の予防と治療の両方に役立つ可能性が示しています。サツマイモはビタミンCだけではなくビタミンEやクロロゲン酸などのポリフェノールも含まれていますから、抗酸化作用の方面からも免疫機能保持・炎症の悪化予防が期待できます。
加えて食物繊維+ヤラピンも腸内環境の改善を介して免疫機能の正常化に繋がる可能性があります。また、安納芋のような果肉がオレンジ色をしたサツマイモであれば、β-カロテンも豊富に含まれています。β-カロテンは必要に応じて体内でビタミンAに変換されるプロビタミンA(ビタミンA前駆物質)の一つでもあり、ビタミンAは皮膚・喉・気管支・肺などの上皮組織を正常に保つ栄養素。このためβ-カロテンの適切な補給は呼吸器粘膜の強化し、ウィルスの侵入を防いで風邪やインフルエンザに罹りにくい状態を作る手助けも期待されていますよ。
視機能のサポートに(オレンジ/紫)
果肉が紫色のサツマイモに多く含まれているアントシアニンは、目の網膜に存在するロドプシンの再合成を促す働きがあることが報告され視機能保持を助けてくれるポリフェノールとして注目されている存在。私達の脳はロドプシンが分解される際に生じる電気信号が伝わることで目に写ったものを認識することが出来ます。ロドプシンは分解された後に再合成され再び分解して情報を伝えることを繰り返しており、この再合成能力が低下すると目の疲れやかすみ・ぼやけるなどの影響が出てきます。全ての疲れ目や視力低下の原因はアントシアニン不足・ロドプシン再合成低下によるものではないこと・アントシアニンの働きについての有効性を示す研究が不足しているという指摘もありますが、視機能低下・眼精疲労予防に繋がる可能性があるとして期待されている成分ではあると言えます。
また、オレンジ果肉系のサツマイモに多く含まれているβ-カロテンから変換されるビタミンAは、網膜で光を感知するロドプシンの生成にも利用されていることから不足すると夜盲症などの原因ともなります。このためビタミンAを不足なく補うことも視機能の維持に繋がると考えられます。ビタミンAは目の粘膜(ムチン層)を作って作って目の表面の角膜と涙を結びつける・目の粘膜の保湿を助けてドライアイを予防する働きもあります。β-カロテンには黄斑変性症や老人性白内障の予防に対する有効性も報告されていますから、こちらも目の健康維持に役立つ栄養成分と言えそうですね。ビタミンA欠乏による眼球乾燥症・失明の予防として、アフリカなどでオレンジ果肉系サツマイモの栽培を推奨する声もあるようです。
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ダイエットのサポートにも
サツマイモは適度な炭水化物を含み、白米や小麦よりもビタミン・ミネラルを多く含んでいることからダイエット中のお食事としても適していると考えられます。主成分が糖質のため“サツマイモは太る”と言われることもありますが、100gあたりの炭水化物量は約30g・カロリーは132kcalと、糖質・カロリー共にご飯(白米)よりも少ないのです。糖質量は多いものの、消化に時間のかかるでんぷんの比率が高いこともあり、サツマイモのグリセミックインデックス(GI)値は55とかなり低め。カロリーはジャガイモよりも上ですが、GI値はジャガイモよりもかなり低くなっています。とは言え普通の食事にサツマイモの煮付けをプラスして食べては逆に太ってしまう可能性もありますから、主食もしくは主食のカサ増し・間食の代わりなどに利用するのがおすすめです。
サツマイモには代謝に関与するビタミンB群、特にたんぱく質の代謝やアミノ酸合成に関わるビタミンB6が生(皮むき)100gあたり0.26mgと多く含まれています。適度な運動とを組み合わせたダイエットに食生活の見直しを兼ねて取り入れてみることで、ダイエットの効果を出やすくしてくれる可能性もあるでしょう。食物繊維+ヤラピンによる便通改善や、カリウム補給によるむくみ改善効果も期待できるので、溜め込み体質の方であれば早い段階でサイズダウンを感じられることもあるかもしれません。抗酸化作用や腸内環境の改善からも代謝低下予防に繋がる可能性もあります。
血糖値対策としては微妙
サツマイモは糖質が多く含まれて入るものの、GI値が55と低く食物繊維が含まれていることから血糖値コントロールにも役立つのではないかという説もあります。特にブラジル周辺で栽培されているサツマイモの仲間“カイアポイモ(シモン芋/白甘藷)”には2型糖尿病の方を対象にした実験でも血糖値やコレステロール値に対して有益な働きが見られたという報告がなされており、2型糖尿病の治療に対する有用性を示唆した研究報告も多く存在しています。しかし、一般的なサツマイモはカイアポ芋とは別物。2型糖尿病の治療食としての適正については人での研究も不足しており分かっていません。医師や栄養士の方と相談して摂取量やタイミングを決めるようにしましょう。
肥満予防や糖尿病予備群の方の食事改善に取り入れるにしても、サツマイモは食べ方によってGI値が大きく変化することが認められているため注意が必要です。シドニー大学によるGI Databaseでは、皮を剥いて角切りにして30分間茹でた150gのサツマイモのGIは46であるのに対して、同じサツマイモでも45分間焼いたもののGIは94と2倍になっています。これはサツマイモに含まれている澱粉が加熱されることで分解され麦芽糖になる=体がすぐに吸収できる糖質になるため。なので焼き芋を食べると血糖値が急激に上がってしまう可能性が高そうです。ダイエット用として食べる場合でも、茹でたり、電子レンジで一気に加熱したものを食べるのが良さそうですね。
美肌保持・紫外線対策に
サツマイモには熱に強いビタミンC、ビタミンE、クロロゲン酸などの抗酸化物質が含まれています。活性酸素/フリーラジカルにより肌が酸化ストレスを受けると、シミ・シワ・たるみ・角質化など肌の老化現象が促進する可能性もあります。抗酸化物質の補給は肌の若々しさの維持にも役立ってくれるでしょう。サツマイモにはタンパク質の代謝・アミノ酸合成に関わるビタミンB6も多く含まれていることから、肌荒れ予防や肌の新陳代謝を正常にする手助けも期待できますよ。
また、ビタミンCはメラニンの生成抑制作用があることから、シミやそばかす予防・改善に役立つ美白成分としても利用されています。オレンジ果肉系のサツマイモに多く含まれているβ-カロテンは、体内でビタミンAに変化することで皮膚や粘膜を健やかに保つ働きや、皮膚の新陳代謝を高める働きも期待されています。様々な成分が複合して働くことで肌の透明感やハリ・滑らかさを保持する手助けが期待できそうですね。
目的別、さつまいものおすすめ食べ合わせ
さつまいもの選び方・食べ方・注意点
サツマイモは比較的アクがよく出る野菜。皮もしくは皮付近にアク成分が含まれていることから厚めに皮を向く方もいらっしゃいますが、実はヤラピンとクロロゲン酸はさつまいもの皮の周辺に多く含まれています。灰汁にポリフェノールが含まれていること・ビタミンB群やカリウムなどは水溶性のことなどから、茹でるのではなく蒸す・焼いて食べたほうが余す所なく栄養成分を補給できるという声もあります。
美味しいさつまいもの選び方・保存方法
サツマイモを選ぶ時は表面(皮)にハリがあり、色ムラや傷の無いものを選びます。表面がふやけたようになっていたり、水分が抜けてシワやひび割れを起こしているようなものは避けるのが無難。個体差はありますが、ひげ根の多いもの・細長い形状のサツマイモは繊維質な食感のものが多く、極端に大きいものはでんぷん質感が強いと言われています。しっとりした食感で甘いものを買いたい場合は中くらいのサイズでずんぐりした形のものが狙い目。
サツマイモも“芋”の一つなので保存性が高そうに感じますが、実はデリケートであまり日持ちもよくありません。低温に弱いため冷蔵庫に入れると痛みが早くなってしまいますし、表面に傷があるとすぐにそこから腐れが入って来てしまいます。保存はダンボール箱に入れるか新聞紙に包むかして、風通しが良く13~15℃くらいの場所に置いておくのがベスト。ベストコンディション状態での日持ちは最大4週間程度、20℃前後の室温に置いておいた場合は一週間が目安です。
さつまいもの注意点
サツマイモを食べると胸焼けがするのは胃酸分泌が促進されるためだとか。対策としてはバターや塩を付ける・牛乳を飲んでから食べるなど胃酸を中和するような食べ方がありますが、胃腸の弱い方はおかゆやポタージュなど煮込んだ料理法が最も負担が少ないと考えられます。
サツマイモの甘味について
サツマイモは加熱することでデンプン質が麦芽糖に変化して甘味を増します。温度が60~75度の間で加熱することでこの変化が活発に行われますが、それ以外の温度の場合は変化が起こりにくいため、甘味を引き出したい場合は低めの温度でじっくりと加熱する必要があります。お店の「石焼き芋」が強い甘味があるのに対し、電子レンジなどで火を通すと甘くなりにくいのもこの加熱温度の問題です。ご自宅で甘い焼き芋を作りたい場合は石をひいた土鍋に入れる、もしくはアルミホイルに包んでオーブントースターで65~75度の温度帯を維持するように焼くと甘い焼き芋が再現できますよ。ただしGI値が茹でたものの倍くらい、白米ごはんと同等以上に上がる可能性があるので食べすぎには注意が必要です。
【参考元】