オクラ(秋葵)とは
納豆や長芋と組合わされることも多いネバネバ食材「オクラ」。6月~9月が旬の夏野菜であり、夏バテ予防に役立つことから夏場の食卓によく登場しますね。また健康に良い事や美容・ダイエットに嬉しい働きが期待出来ることから女性向けのヘルシーメニューなどにもよく使われています。サラダ・丼などに入れる生野菜として以外にも、チップスやスープ・カレー・パスタの具材など幅広く活用されています。
オクラという名前は日本語のようですが実はokraという英名。正式な和名は「アメリカネリ」で陸蓮根(オカレンコン)などとも呼ばれますが、現在は日本でも英名であるオクラの方が一般的な呼称となっています。分類上はアオイ科トロロアオイ属の植物で、野菜として普段食べている部分は厳密には果実にあたります。本来は多年草ですが日本では越冬できないため一年草として栽培されています。
オクラは大きく分けると切り口が五角形(星型)をしている「五角オクラ」と断面の丸い「丸オクラ」の2つがあり、日本で多く流通しているのは五角オクラの方です。そのほかにアントシアニンを含む赤オクラ(紅オクラ)や、エディブル・フラワーとして花部分を食す近縁手の花オクラ(トロロアオイ)なども少量流通しています。
オクラの歴史
オクラの原産地はアフリカ北東部、2000年以上前の古代エジプトでは既に栽培が行われていた記録が残っている歴史の古い野菜の一つです。現地ではnkruma(ンクラマ)と呼ばれており、この呼び名がオクラという呼び名の語源となったと考えられています。ヨーロッパではその形状が女性の指に似ていることからレディース・フィンガーという別名でも呼ばれます。食用野菜として以外に、オクラの種子はコーヒー豆の代わりにも利用されていた時期があるようです。
18世紀になるとオクラはアメリカへと伝えられ、主に西アフリカから移住させられた奴隷によって栽培が行われます。ちなみに現在もアメリカ南部やブラジル東部などアフリカ系移民の多い地域で盛んに栽培が行われています。ガンボ・スープと呼ばれるとろみのあるスープや、フライ、ピクルス、米料理などに使われているそうです。
日本へは江戸時代末期から明治初期にアメリカから伝えられ、ネリと呼ばれていたトロロアオイに似ていたことから「アメリカネリ」という和名が付けられました。沖縄や鹿児島など暖かい地域で栽培が行われましたが、オクラ独特のぬめり・ネバネバ感や青臭さから敬遠されなかなか定着はせず、当時は観賞用としての利用が主だったようです。
戦後から少しずつ食用としての流通が行われるようになり、1970年代には全国的に認知率も高まります。その後健康ブームやヘルシー志向の影響もあり、健康野菜として食卓に定着しました。古くは嫌われていたネバネバですが、近年はそのネバネバが健康に良いことからオクラの「売り」として認められるようになったのです。
オクラはこんな方にオススメ
- 胃の調子が悪い
- 貧血気味・疲れやすい
- 妊娠中の方
- 便秘・下痢をしやすい
- 腸内フローラが気になる
- 風邪をひきやすい
- 免疫力を高めたい
- 炭水化物・糖質が好き
- 食生活の偏りが気になる
- 生活習慣病予防に
- 老化を予防したい
- 肌荒れ・乾燥が気になる
オクラ(秋葵)の主な栄養・期待される効果:前半
オクラはビタミンA(β-カロテン),B群,C,E、葉酸などのビタミン類や、カルシウム・マグネシウムなどのミネラル、そしてネバネバの元となる水溶性食物繊維(ペクチン)やガラクタン・ムチン型糖タンパク質など多くの成分を含んでいます。
胃腸の不調・夏バテ軽減
オクラのネバネバにはガラクタンやマンナンなどの多糖類がたんぱく質と結合した“ムチン型糖タンパク質”と呼ばれる物質が含まれています。ムチンは一般的に私たち人間の胃腸や呼吸器などの粘膜・粘液に含まれている動物性粘性タンパク質を指します。オクラなど植物性食品に含まれている糖タンパク質は私達の体内に存在するムチンとは別物ですが、似た結合様式であることなどからムチンをサポートする働きが期待されています。このためムチン型糖タンパク質の補給は胃粘膜の強化・胃壁の保護・傷ついた胃粘膜の修復などをサポートしてくれると考えられており、胃粘膜の炎症によって生じる胃炎や胃潰瘍の予防にも期待されています。
またムチン型糖タンパク質やペクチンにはタンパク質分解酵素が含まれているため、オクラを肉や魚などと一緒に摂取することで胃への負担を軽減しつつタンパク質の消化・吸収促進効果が期待出来ます。夏バテで弱ってしまった胃腸を労わりつつ、スタミナ強化による夏バテからの回復をサポートしてくれるでしょう。古くからネバネバ食材が強壮・強精に役立つと言われていたのもこの働きが大きいと考えられます。
免疫力アップ・疲労回復
オクラのネバネバ成分であるムチン型糖タンパク質・ガラクタンには免疫力向上効果が報告されています。ムチンは胃粘膜以外にも喉や鼻の粘膜の保護・強化にも役立ち、ウィルス侵入のブロック機能を高めることで風邪やインフルエンザ予防に役立ちます。またガラクタンは免疫機能の活性化作用があるとされ、風邪以外に花粉症などアレルギー予防にも役立つと考えられています。
タンパク質の消化吸収促進作用に加え、オクラには粘膜の健康維持に関わるβ-カロテン(ビタミンA)やビタミンCを始め、幅広いビタミン類・ミネラル類が豊富に含まれています。様々な成分が相乗して免疫力維持・向上効果が期待できますし、疲労回復にも役立ちます。病中・病後や食欲がないときの栄養補給源としても優れた野菜と言えるでしょう。
便秘改善・ダイエットサポート
オクラ100gあたりの食物繊維含有量は5.0gと非常に豊富です。同グラムで比較するとレンコンや大豆もやしの2倍以上、セロリやミニトマトの3倍以上の食物繊維を含んでいますから、食物繊維の補給源として便秘解消に役立ってくれるでしょう。
オクラに含まれているペクチンなどの水溶性食物繊維は腸内善玉菌の餌となることで善玉菌を増殖・活性化させる働きや有害菌の繁殖を抑える働きもあります。そのため便秘の解消だけではなく、腸内フローラのバランスを整える働きにも効果が期待出来ます。また水溶性食物繊維は水に溶けてゲル化し、同時期に摂取した糖質の吸収を抑制する働きがあります。そのため食後の血糖値上昇を穏やかにしてインスリン分泌を低下させることで糖尿病予防、糖質の吸収が抑制されることから肥満予防にも役立つと考えられています。
食物繊維ですから腸内の老廃物や有害物質を絡め取って排泄させる働きもありますし、オクラにはエネルギー代謝に関わるマグネシウムや、近年肥満予防効果が注目されているカルシウムなどのミネラルも豊富に含まれています。デトックス・糖の吸収抑制・代謝向上とダイエットに嬉しい3つの効果が期待出来ます。
貧血予防・妊娠中の栄養補給
オクラは100gあたり110μgと葉酸を比較的多く含んでいます。葉酸は「造血のビタミン」とも呼ばれ赤血球の生成に必要とされる成分ですし、ヘモグロビンを作るために必要とされる銅やヘモグロビンの構成成分である鉄分なども含んでいます。オクラだけを食べて貧血が改善できるとは言い難いですが、普段の食事に加えることで不足分を補い、貧血の予防・改善に役立ってくれるでしょう。
また葉酸は核酸をサポートすることで細胞の生まれ変わりを正常に行う働きもあります。特に胎児や授乳期の赤ちゃんにとっては大切な栄養素で、不足すると神経障害などの発生リスクを高める危険性があります。普通の食事で不足することは少ないと言われていますが、妊娠中は通常時の1.5倍量(1日400μg)が必要とされていますので、オクラは手軽な葉酸の補給源となってくれそうです。また食物繊維が豊富なので妊娠中の便秘予防にも役立ちます。
老化・生活習慣病予防
オクラに含まれているペクチンは体内でコレステロールの吸収を抑制する働きがあります。コレステロール値を低下させることで動脈硬化や高血圧予防に繋がりますし、糖質の吸収も抑えてくれるため糖尿病予防にも効果が期待出来ます。またムチンは肝機能・腎機能向上に役立つと考えられており、こちらも高血圧などの予防に効果が期待されています。
加えてオクラは抗酸化作用を持つβ-カロテンやビタミンCを含み、活性酸素による脂質の酸化(過酸化脂質)から引き起こされる動脈硬化や生活習慣病予防に役立つと考えられています。酸化ダメージの抑制は体内はもちろんシワ・たるみ・シミなど外見の老化予防にも繋がりますし、ムチンにも細胞を活性化させることで老化予防に有用であるという報告もなされています。
肌老化・乾燥肌予防
オクラの代表成分ともいえるネバネバの元である糖タンパク質は美容面でも注目されている存在。オクラだけではなく納豆や海藻などネバネバ食材が美肌作りに良いとされるのは、根べり成分であるムチン型糖タンパク質に期待される働きが大きく関係していると言えるでしょう。ムチンには細胞の活性化作用あるとされるためお肌のターンオーバー正常化に、また肌の原料であるタンパク質の吸収を高める・免疫力を高め肌荒れを防ぐなどの働きが期待出来ます。ムチン型糖タンパク質やペクチンは粘性があることから水分保持能力があり、肌の乾燥を防いだりハリを保つ働きもあると考えられています。
オクラの場合はビタミンCなどの抗酸化成分、ビタミンCと共にコラーゲンを生成する亜鉛、造血に必要な栄養素なども含んでいます。これらの成分の働きが複合することで肌荒れ・くすみ・顔色の悪さ・たるみなどの改善にも効果が期待でき、若々しく美しい肌の維持に役立つと考えられます。
オクラ(秋葵)の選び方・食べ方・注意点
全体の緑色が濃く、細かいうぶ毛で均一に覆われているもの、ヘタ部分に変色がないもの、育ちすぎたものは固くなり食感が劣るため小ぶりなものを選ぶようにすると良いでしょう。ちなみに表面についている毛は少し塩をかけて揉むと取ることが出来ます。
オクラを保存する場合は直射日光をさけ涼しい場所に保管しましょう。低温と乾燥に弱いため冷蔵庫に入れと冷温障害を起こす可能性がありますので、冷蔵庫に入れる際には新聞紙で包んだものをポリ袋に入れてから野菜室に入れるようにすると良いです。あまり日持ちしませんので、数日以内に使い切れない場合はさっと茹でて水気を切ってから冷凍するようにしましょう。
オクラのオススメ食べ合わせ
- オクラ+納豆・鶏肉・豚肉・マグロ
⇒免疫力向上に - オクラ+昆布・ナメコ・山芋・納豆
⇒強壮・健脳に
- オクラ+白菜・トマト・ワカメ・椎茸
⇒肥満予防に - オクラ+酢・玉ねぎ・イワシ・さんま
⇒アンチエイジングに
オクラ(秋葵)活用方法・民間療法
昔、オクラの種はヨーロッパでコーヒーの代用品として用いられていました。自家栽培をしている方などは育ちすぎてしまった完熟オクラの種をとり、フライパンで炒った後ミルで挽いたものをコーヒー豆のように使うとオクラコーヒーが作れます。
オクラ・ヨモギ・ショウガを合わせて煎じたものを飲むと下痢止めになると言われています。