スターアニス/八角とその栄養成分や効果効能
|抗酸化や女性サポートにも?! 成分や注意点とは

食べ物辞典:スターアニス(八角)

独特の甘い香りと、星のような形状が特徴的なスターアニス。日本では8つの角がある事から八角とも呼ばれていますが、正式な和名は唐樒と言います。中華レシピの印象が強いものの、欧米ではアニスと同じような感覚でデザート・ドリンク類にも使われているスパイスです。大量に摂取するものではありませんから栄養補給源として考えるのは現実的ではありませんが、アネトールをはじめとした芳香成分の働きから健康をサポートしてくれる働きも期待されている存在です。そんなスターアニス(八角)の歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

スターアニス/八角のイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:トウシキミ(唐樒)
英語:(Chinese) star anise

スターアニス(八角)のプロフイール

スターアニスとは

スターアニスは「どんな料理でも加えることで中華風味になる」と称されることもあるように、日本では中華料理で使われる八角という呼び名の方が知られた存在かもしれません。トンポーロー(豚の角煮)や北京ダックなどの風味付けのほか、中国の代表的なミックススパイス“五香粉”の材料の一つとしても使われています。香辛料として使う以外にも、中国では石鹸や歯磨き粉・化粧品類などに幅広く利用される国民的スパイスなのだとか。

スターアニスの甘くスパイシーな風味は豚の角煮など肉類と合わせて使われることが多いですが、近年はカレーに加えることで風味を出してくれる香辛料の一つとして購入される方も少なくないそう。中華料理のレシピとしては八角、インド料理やアロマテラピーなどの自然療法の中ではスターアニスと呼ばれることが多いような印象があります。ヨーロッパではアニスの代用品として利用されていた歴史もあるので、エスニック料理だけではなくジャム・コンポート類やスパイスクッキーなどの焼き菓子類やチョコレートとも相性が良いですよ。

スターアニスはモクレン科シキミ属に分類される常緑高木で、和名はトウシキミ(唐樒)。名前の由来ともなっている八つの角がある星のような形をしたものがトウシキミの果実で、あの星型の果実がそのまま木に実ります。星にたとえられる角が果実(袋果)が8つに別れた状態で、それぞれの袋果の裂け目の奥には扁平な形の種子が見えるものもありますが、スパイスとして利用されるのは果皮部分です。原産地は中国あたりと考えられています。日本では薬膳や中華を本格的に作っている方でなければあまり馴染みのないスパイスかもしれませんが、インドやベトナムを始めヨーロッパでも使用されていますよ。

ちなみにStar anise(スターアニス)という英名は、星のように見える果実の形状+アニスに似た甘い香りと仄かな苦味があることから命名されたと言われています。日本のシキミと区別するために、シキミをジャパニーズ・スターアニス、トウシキミ(八角)をチャイニーズ・スターアニスと呼び分けることもあります。またスターアニスは漢方生薬としても利用されていますが、生薬としては場合は八角茴香(ハッカクウィキョウ)あるいは大茴香と呼ばれています。茴香または小茴香と呼ばれているのはフェンネルですが、こちらも同様に甘い香りが特徴的なスパイスですね。

スターアニスの歴史

スターアニスがなるトウシキミは中国南部からインドにかけてのエリアが原産と考えられており、原産地とされる中国を中心としてアジアでは古くから利用されてきたと伝えられています。中国では3000年以上も前から消化器系のトラブルや喉の痛みに良い生薬としても取り入れられていたそう。後の時代にはなりますが李時珍の『本草網目』にも健胃作用などスターアニスの効能が記されていますし、現在でも生薬として利用されていますね。また宗教儀礼にも使われていた・口臭消しに利用されていたという説もあります。

中国以外にタイやベトナムの北部・北インド~パキスタンなどでも、スターアニスは香辛料として広く使われています。日本へも早い段階で中国から伝わっていたと言われていますが、香辛料として和食に使われることはほとんどありませんでした。ただし香りの良さから生薬として以外に香料として好まれ、戦国時代の武士は出陣の時に兜の中に八角の香を焚き込めたという話もあります。現在でも八角茴香(スターアニス)は桂皮や丁子などと共にお香の原料として使われていますね。

ヨーロッパへの伝播はイギリスの船乗りが中国から持ち帰ったことがきっかけと言われており、16世紀末~17世紀初頭にはヨーロッパでもその存在が知られていたようです。当時高級品とされていたアニスと香りが似ていたことから代替香料として利用され、呼び名もアニスに似た香りがあるということでスターアニスが定着したそう。フルーツコンポートやジャムなどの香り付けに使われたほか、ヨーロッパではトマトと相性が良いスパイスの一つにも数えられているようです。また水蒸気蒸留によって抽出された精油はリキュール類の香り付けにも重宝され、現在でもアニスフレーバーのお酒にはスターアニスが使われているものもあります。

スターアニス(八角)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

スターアニスは100gあたりの栄養価としてみると鉄分やマグネシウムなどのミネラルが比較的多く、ビタミンB1,B2,Eなども含まれていると言われています。しかし主にスパイスとして利用される食材で、一日の使用量としては多くても数g程度ですから栄養補給源としては期待しないほうが良いでしょう。しかしスターアニスやアニス・フェンネルなどのスパイス類にはアネトール(t-anethol)をはじめとした芳香成分が含まれており、その香りによっても健康サポートが期待されています。

スターアニス/八角のイメージ

スターアニスの効果効能、その根拠・理由とは?

胃腸機能・消化促進

スターアニスの特徴的な甘い芳香はアネトールという芳香族化合物を主としていますが、それ以外にもリモネンやリナロールなどいくつかの芳香成分が組み合わさって構成されています。香りの主成分であるアネトールには胃腸を刺激して消化機能を活発化させる働きがあると考えられており、食欲増進や消化促進効果・便秘やお腹の張りなどを軽減する働きが期待されています。生薬で茴香や八角茴香(大茴香)が健胃整腸や駆風の効能を持つとされるのも、アネトールによる働きが大きいと考えられています。

またリモネンにも体内の代謝を促したり、消化機能を活発化する働きが期待されています。柑橘系の食材や精油が食欲不振や消化不良などに良いと言われるのもリモネンの働きが主。消化器系の機能を高めてくれると考えられるアネトールやリモネンを含むことから、スターアニスを料理に加えることで消化機能を高める働きが期待されています。豚の角煮の香辛料として八角が使われているのも、風味だけではなく消化をサポートしてくれるからなのだとか。胃腸の働きが落ちているなと感じるときだけではなく、便秘やお腹が張って苦しい時に取り入れてみても良さそうですね。

冷え性・むくみ軽減

スターアニスに含まれている芳香成分の一つであるリモネンは柑橘系の皮にも多く含まれている成分で、交感神経を刺激することで毛細血管を拡張する働きがあることが報告されています。この働きから血行促進効果や代謝向上効果が期待されており、冷え性の軽減に役立つと考えられています。スターアニスには大さじ1杯で一日の推奨摂取量の13%とも言われるほど鉄分が多く含まれていることも認められており、貧血の予防・改善からも血流改善や代謝向上効果が期待されています。

また血行が良くなることでリンパの循環を整えることにも繋がりますから、むくみの軽減にも効果が期待できるでしょう。八角には利尿作用があるという説もあり、体の余分な水分を排出しむくみを解消させる・水代謝を良くすることで冷えの解消をサポートするという見解もあります。

ストレス・不眠軽減

スターアニスの香りの主成分であるアネトールには鎮静作用と呼ばれる、神経系の興奮を抑える働きがあると考えられています。リモネンやリナロールにも鎮静効果が期待されているまから、相乗してストレス・神経性の不調軽減効果が期待されています。アロマテラピーにおいてもスターアニス精油(ウイキョウ油)は精神的なダメージに対して有効とされており、イライラ・気分の落ち込み・憂鬱感を和らげることでメンタル面のサポートをしてくれる精油として扱われています。

また実際に摂取する量としては微量となりますが、スターアニスはマグネシウムやケルセチンなどの抗酸化物質(ポリフェノール)を含んでいることからも鎮静作用を発揮しているのではないかという説もあります。香りに好き嫌いがありますから一概には言えませんが、ストレスによって精神的に疲れてしまった時や情緒不安定気味だなと感じている時に取り入れてみても良いでしょう。民間療法や伝統療法の中でスターアニスは不眠症など睡眠関係のトラブルがある場合にも利用されています。香辛料としては料理を選ぶタイプですから、ハーブティーのブレンドに使ったり紅茶にパウダーをかけるなどすると取り入れやすいです。

風邪・インフルエンザ予防

スターアニスの香りを形成しているリナロールやリモネンなどの精油成分には抗菌・抗ウィルス作用が報告されています。このためスターアニスを摂取することで風邪やインフルエンザの予防、咳や喉の痛みなど呼吸器系の不調軽減に役立つと考えられています。海外では風邪気味の時にスターアニスのハーブティーを飲んだり、咳止めシロップの原料として配合されていることもあるそう。

また2010年に台湾の研究者によって発表された実験では、スターアニス由来の成分が約70種類の薬剤耐性菌に対して有効であることも報告されています。同年には2010年にはスターアニス抽出物の抗真菌性がカンジダに対して有効であることを示唆する実験項目もなされており、抗真菌薬・抗生物質への応用が研究されています。

ちなみにスターアニスにはインフルエンザ治療薬「タミフル」の原料であるシキミ酸が含まれている事も知られていますが、タミフルに利用されているシキミ酸のは化学合成されたものです。八角をスパイスとして利用した場合でもタミフル様の作用が期待できる訳ではありませんので、何らかの症状がある場合はきちんと病院で診断・投薬を受けるようにしましょう。問題になった異常行動などのタミフルに起こった副作用が起こる心配もありません。

老化予防(抗酸化)

スターアニスはケルセチンやケンフェロールなどのフラボノイド類チモールやクマリンなどの香り成分と、抗酸化作用をもつ成分を多く含むことも注目されています。こうした様々な抗酸化物質の補給から活性酸素・フリーラジカル対策にも優れた効果が期待されており、酸化ストレスによる老化現象や疾患の発症リスク低減に役立つのではないかと考えられています。酸化ストレスを抑制し免疫機能の働きを正常に保つことで、がんの発生抑制に役立つのではないかという見解もあるそう。2007年に発表された動物実験などでもスターアニス抽出物を投与したほうががんの発生率が低いことが報告されており、現在も有効性を確認すべく研究が行われているようです。

早期老化やがんを始めとする病気への有効性についてはデータがまだまだ不足している状態ですが、抗酸化物質の補給が老化を予防するという見解が多いのも事実。また活性酸素による皮膚細胞へのダメージを軽減することで、肌の若々しさを保つ手助けとしても役立ってくれるでしょう。シワやくすみ・たるみの予防にも効果が期待できますし、貧血軽減や血行促進と合わせて肌のハリやキメを整える手助けをしてくれる可能性もあります。

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女性領域でのサポートにも…?

スターアニスの香気成分であるアネトール(トランス-アネトール)な女性ホルモンのエストロゲンと似た分子構造をしています。このことからアネトールはエストロゲン様作用を持つ物質として、更年期障害の軽減や月経リズムを整える働きが期待されています。またスターアニスはアネトールによるエストロゲン様作用以外にも、体を温めて冷えやむくみを軽減する働き・鎮静作用によって気持ちをリラックスさせてくれる働きも期待されるスパイスでもあります。

こうした働きが複合することでスターアニスは冷えによって悪化する生理痛の軽減や、PMS(月経前症候群)や更年期障害に伴う諸症状軽減など女性領域の様々な不調軽減に役立つ可能性があると考えられています。ただしアネトールの有効性については確証があるものではなく不明点も多いので、症状が重い場合には医師の診断・適切な治療を受けましょう。思わぬトラブルを避けるため、妊娠中や婦人科系の疾患がある方は使用を避けて下さい。

目的別、スターアニスのおすすめ食べ合わせ

スターアニス(八角)の選び方・食べ方・注意点

スターアニス(八角)の香りは好き嫌いがはっきりと分かれます。香りが強いので使う場合は大量に投入せず、ホールであれば星のようになっている突起を1片ずつ・パウダーであれば軽く一振りから加えるようにして下さい。初めて利用する場合は最もポピュラーな豚の角煮などの肉料理や、カレーに混ぜるて利用してみると良いでしょう。使用する量を少なめにすると、香りや苦みはさほど気になりません。スターアニスの風味がお好きな方であればコーヒーや紅茶などの飲み物や、ジャム・クッキーなどにも活用できますよ。

ただし長時間加熱してしまうと機能性成分とされる芳香成分が揮発してしまうため、健康メリットを期待して利用する場合は仕上げに使ったほうが良いという説もあります。また鮮度が落ちやすい(香りが抜けやすい)香辛料でもありますから、密閉容器に入れてから高温多湿を避けて保存するようにして下さい。

スターアニスの注意点

スターアニスは女性ホルモンへの働きかけがあると考えられることから、妊娠中や授乳中の方・小さいお子さんへの使用は控えたほうが確実です。伝統医療の中では母乳分泌を助ける生薬として使われることもあるようですが、自己判断での使用は危険なため医師の判断による場合以外は利用しないようにしましょう。またエストロゲン様物質を含むという性質上、乳がんや卵巣がんなどホルモン依存性癌・エストロゲン依存性疾患のある方も医師に相談してから摂取するようにして下さい。

日本にはスターアニスと似た果実を持つ植物としてお寺などによく植えられているシキミ(樒/櫁)があります。しかしこちらは同属別種であり、シキミという名前は「悪しき実」が由来であるとする説もあるように猛毒物質が含まれています。日本のシキミは劇物に指定されているほど危険な存在で、食べてしまうと死亡に至る可能性もあるため間違えないように注意しましょう。現在商品化されているものは問題ありませんが、かつてはドイツに輸出されたスターアニスにシキミの実が混ぜられて中毒事件となったこともあるそうです。自分で採取しようと思わず、スパイスとして販売されているものを購入して下さい。

スターアニス(八角)の雑学色々

スターアニス活用方法

スターアニスのホール(形状そのまま)は見た目も可愛らしいので、インテリアとして利用されることもあります。ポプリなども組み合わせることで穏やかな室内芳香剤としても利用できますし、香りによるリラックス効果も期待できそうですね。また八角は金運アップに良いスパイスだとも言われており、八角を財布に入れる・八角を煮出したお茶を入浴剤に利用するなどで金運や健康運がアップするという話もあります。ただしバスハーブとして利用すると香りが強く気分が悪くなってしまう可能性もありますから、使用量は少なめにすることをおすすめします。

参考元:17 Medicinal Benefits Of Anise Seed Herb11 Impressive Health Benefits of Star Anise