カブ(蕪)・かぶの葉の特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:蕪(カブ/カブラ)

柔らかくマイルドな食味のカブ。トロトロになるまで煮込むと「ほっこり」した気分を味あわせてくれる食材です。カブと呼ばれて食べられている根の部分は栄養価が高くありませんが、イソチオシアネートを含むことから様々な健康メリットが期待されています。また、かぶの葉はカルシウムや鉄分が豊富な緑黄色野菜としても注目されています。そんなカブ(根)、カブの葉に含まれている成分や栄養効果について詳しくご紹介します。

蕪/カブのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:蕪(かぶ/かぶらな)
英名:turnip
学名:Brassica rapa var. rapa

かぶ(蕪)とは

カブのプロフイール

クセのない味わいと独特の柔らかい歯ごたえを持つカブ。地域によってはカブを家で使うことはほとんどないという方もいらっしゃるようですが、根はクセのない食材として、煮物やサラダなどに幅広く使用することが出来ます。赤かぶはピクルスなどの彩り用にも役立ちますし、葉も栄養豊富な緑黄色野菜。かつて葉は捨てられてしまうこともありましたが、栄養バランスのためにも、食材を無駄にしないためにも、積極的に活用したいところです。

ところで、かぶと言えば、ロシア民話発祥の童話『おおきなかぶ』の「うんとこしょ、どっこいしょ」という耳に残る掛け声や挿絵を思い出される方もいらっしゃるのではないでしょうか。アジアやヨーロッパでカブは古くから食べられてきた植物で、日本でも奈良時代以前から親しまれてきました。春の七草に含まれている「スズナ(鈴菜、菘)」もカブの葉を指しています。

カブと大根は仲間?

同じく春の七草にも数えられ「スズシロ(蘿蔔)」と呼ばれている大根とは、見た目も、野菜としての風味も、栄養価もよく似た存在です。植物分類上はカブ・大根どちらもアブラナ科野菜ですから仲間と言えなくもありませんが、大根がダイコン属であるのに対し、カブはアブラナ属に分類されます。

アブラナ属の中でも、カブはブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)を祖先とする変種群の一つに数えられていますから、大根よりも水菜白菜小松菜チンゲン菜などに植物です。ちなみに、カブと呼ばれる種の中ではアフガニスタン原産の“アジア系(B. rapa var. glabra)”と地中海沿岸原産の“ヨーロッパ系(B. rapa var. rapa)”の2系統に分かれています。

コロンと丸い球状の実(肥大化した根部)の形がポピュラーなため、カブは球状・大根は細長い…というイメージで分けられがち。しかし、“日野菜かぶ”など大根のように細長い形状をしたカブや、“聖護院大根”など丸大根と呼ばれる丸い形状の大根も存在していますよ。

また、日本ではハツカダイコンを赤カブと呼んだり、テーブルビート(ビーツ)を赤カブや血蕪と呼ぶなど、似た形をした野菜の和名に「カブ」が多く付けられています。ビートはアカザ科の植物ですし、ハツカダイコンはダイコンの変種です。特に形の似ているラディッシュも、和名は二十日大根。
英語で大根系の植物は“radish”、カブは“Turnip”と言います。

カブの選び方・保存方法

かぶを選ぶ際は実部分が全体的にハリと艶のあり、持った時にずっしりと重さを感じられるものを選ぶようにします。実(根)が白いものであれば綺麗な白色をしているもの・赤系であればビビッドにしっかりと色付いているものを選びます。また根部分はひげ根が少なく、少しあるひげ根がピンと真っすぐ伸びているものが良品とされています。一般的な球状のかぶであれば、丸みがしっかりと出ているものを選ぶと良いでしょう。

カブは葉がついた状態のまま状態で保存すると、水分蒸発が早く萎びてしまいます。保存する場合は葉と根を切り離して別々に保存するようにして下さい。日持ちしそうにも感じますが、かぶが美味しく頂ける期間としては冷蔵庫で保存したとしても4日程度。なるべく早く食べるか、お漬物などに加工してしまったほうが確実です。

冷凍もできますが、食感が変わってしまいます。解凍して使うものは、加熱用と考えたほうが良いでしょう。冷凍時には生のまま薄切りにするだけでOKです。そのまま・厚切りで冷凍すると食感が悪くなったり、部分的に色が変わってしまったりするので注意して下さい。

かぶの葉に関して

葉付きのカブを選ぶ場合は葉が均等に色付き、みずみずしく葉先までシャキッとしたものを選ぶようにします。葉先から徐々にしなびてきているものは鮮度が落ちているので避けた方が無難でしょう。販売されているものは既に葉を切られた状態のものも多いですが、大根と同じように頭の部分を水につけておくと葉を育てて再収穫することも出来ますよ。

かぶの葉も冷凍できますが、生のまま冷凍できる実と異なり、固めに下茹でをしてから冷凍したほうが良いと言われています。刻んたものを小分けにして冷凍しておくと、お味噌汁やチャーハンの具などに使いやすいでしょう。冷蔵保存の場合は実よりも早め、長くても2~3日以内には使いきるようにします。

かぶ(蕪)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

同じ“カブ”でも根の部分と葉の部分には、かなり栄養面で違いがあります。下記では根(実)と葉に分けて、それぞれ栄養成分的特徴と期待できる健康メリットを紹介します。

カブ(根部分)の栄養価、期待できるメリットは?

一般的に食用とされるカブの根部は、全体重量の約94%が水分。皮付き状態で生100gあたり18kcalと低カロリーな食材でもあります。特徴と言えるほど際立って豊富な栄養成分はありませんが、幅広いビタミンやミネラルを含んでいます。ビタミン類ではビタミンCと葉酸が、ミネラル類ではカリウムが比較的豊富。

また、カブにもアブラナ科野菜に多く見られるグルコシノレート(カラシ油配糖体)類が含まれています。グルコシノレートから生成される“イソチオシアネート”は、健康メリットを持つ可能性がある成分として注目されている存在。イソチオシアネートによる抗酸化作用などからも、体を整える働きが期待されています。

かぶのイメージ画像

胃腸機能のサポートに

かぶは栄養価が高い食材とは言い難いものの、古くから消化を助けてくれる食材と考えられてきました。民間療法の中でカブの根は“体を温め冷えによる腹痛を予防・改善させる”と称され、薬膳料理にとしてや、胃腸の調子が悪い時におろし汁を飲むなど、お腹の調子を整える食材として活用されてきた歴史があります。

現代でもカブは食物繊維補給源として、便秘を防いで胃腸機能を整える手助けをしてくれると考えられています[1]。加えて、イソチオシアネートは優れた抗菌作用を持ち、大腸菌や黄色ブドウ球菌などを抑制することで食中毒の予防などにも注目されている成分[2]。カブに含まれているグルコシノレート(カラシ油配糖体の一種である“アルベレキシン”には抗炎症作用を持つ可能性も報告されています[3]から、合わせて胃腸の健康維持をサポートしてくれる可能性があるでしょう。

便秘予防・ダイエットサポートに

カブの食物繊維総量は生100gあたり1.5g。
野菜類の中で特別多いというわけではありませんが、100gあたり20kcalと低カロリー食材でもあります。カロリーを気にせず食べられる食物繊維補給源であり、水分含有量が多いので水分不足による便秘の改善にも繋がりることかから、便通改善のサポートにも役立つでしょう。

また、便通が整うことは老廃物の排出促進にも繋がります。カブにはイソチオシアネートやポリフェノール類など抗酸化作用を持つ成分も含まれています[3]。酸化ストレスによって筋肉や内臓機能が低下することを防ぐことからも、デトックスや代謝機能向上に繋がるでしょう。食物繊維に寄る食事のカサ増しや満腹感の維持と合わせて、カブはダイエット中のお食事にも適した食材と言えます。

ただし、カブに含まれているのはイソチオシアネートではなく、グルコシノレート(カラシ油配糖体)類。細胞が破壊されるとことで、ミロシナーゼ酵素と反応してイソチオシアネートが生成されます。イソチオシアネートに変化させるために必要な酵素は熱に弱いため、イソチオシアネートを摂取し場合は生で食べるようにしましょう[4]。大根おろしのようにカブを擦りおろしたり、細かく切って食べると効果的です。

抗酸化・生活習慣病予防に

カブは冬のビタミン補給源の一つとも称される食材。特に抗酸化作用を持つビタミンCが、生100gあたり19mgと比較的多く含まれています。カブにはイソチオシアネートや、フラボノイド・フェノール類などのポリフェノール類と、抗酸化作用を持つ成分が含まれていることも認められています[3]。抗酸化物質補給源として、体を酸化ダメージから守る手助けをしてくれるでしょう。

抗酸化物質の補給は血中の悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑制することで、血栓や心疾患予防に役立つ可能性もあります。加えて、イソチオシアネートは、抗炎症作用や抗高血圧・抗糖尿病・抗腫瘍作用を持つ可能性が研究で示唆されている[3]成分。カブにはカリウムなど血圧安定に関係する栄養素も含まれていますから、高血圧や動脈硬化など生活習慣病の予防にも一役買ってくれる可能性はあります。

ちなみに、赤カブの場合は赤色の元となる色素成分アントシアニンを含んでいます。アントシアニンはポリフェノールの一種で抗酸化作用に優れている成分ですから、抗酸化作用をより期待する場合は赤カブ系の種類を選ぶようにすると良いでしょう。目の疲れやンチエイジング(老化予防)にも効果が期待できます。

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かぶの葉の栄養価、期待できるメリットは?

捨ててしまう方もいらっしゃるカブの葉ですが、実は優れた栄養価を持つ食材として近年注目されている存在です。カブの根部分が淡色野菜なのに対して、カブの葉部分は緑黄色野菜に分類され、ビタミン類やβ-カロテン、カリウムや鉄分などのミネラル類を豊富に含んでいます。カロリーも根部分と同じ100gあたり20kcalと低め。根部分にはあまり含まれていないビタミンやミネラルをしっかりと補給できますから、ぜひ葉の部分も活用してみてください。

カルシウム・鉄分補給源として

カブの葉には、100gあたり250mgものカルシウムが含まれています。このカルシウム量は同グラムですると根部分の約10倍、牛乳の2倍以上。生野菜・果物類の中ではトップクラスの含有量です。加えて、カブの葉には生100gあたり2.1mgと、ほうれん草小松菜とほぼ同じくらいの鉄分も含まれています。

日本人のカルシウム摂取量は長期間にわたり、年代にかかわらず慢性的な不足傾していることが指摘されています[6]。鉄分も女性には不足しがりなミネラルのため、カルシウム・鉄分と意識的に摂取したいミネラルが両方しっかり補給できるのは嬉しいところです。

カルシウムは丈夫な骨や葉の形成・維持に必要な栄養素。カブの葉にはカルシウムだけではなく、骨の形成や維持に役立つビタミンK、ビタミンCも豊富。ビタミンCは植物性鉄分の吸収を助けてくれる働きもありますので、育ち盛りのお子様や、貧血・骨粗鬆症が気になる女性の栄養補給にも適した食材と言えます。葉酸含有量も多いので、妊娠中の栄養補給源としても役立ちます。

ストレス軽減・精神安定にも期待

カブの根もビタミンCが比較的多い食材ではありますが、カブの葉は生100gあたり82mgと更にビタミンCが豊富。同グラムで比較すると、根の約3倍のビタミンCが含まれています。ビタミンCは抗酸化によるメリットが報じられることが多いですが、実はストレスを感じた際に副腎から分泌される抗ストレスホルモンの合成にも関わる成分。トレスと戦うための体づくりにも欠かせない存在です。

カルシウムもまた、神経伝達物質の放出に関わることから、正常な神経機能やメンタルバランスの維持に注目されている成分。カブの葉にカルシウムだけでなく、神経伝達物質の合成に関わるビタミンB6や、神経組織・脳機能の構成に必要なコリン[6]などの栄養素も含まれています。不足なくこれらの栄養素を補うことでストレスを和らげたり、イライラ・憂鬱感などの精神的な不快感の軽減に役立ってくれるでしょう。

便秘対策・ダイエットサポートに

カブの葉は、生100gあたり2.9gと食物繊維も豊富。
100gあたりの含有量を比較すると、水溶性食物繊維は0.3gとカブ(根)と同じですが、不溶性食物食物繊維は約2倍量が含まれています。不溶性食物繊維は水を吸って膨らみ、腸を刺激して蠕動運動を促し、便秘の改善サポートにも役立ちます。

不溶性食物繊維は水分を吸って膨らみ、満腹感を維持する働きもあります[1]。生100gあたり20kcalとカロリーも低く、ダイエット中に不足しやすいカルシウムや鉄分の補給にも役立ちます。カブの葉にはカリウムや、カリウムを細胞に届けるマグネシウムも含まれていますので、むくみ改善やデトックスにも繋がるでしょう。ダイエットのサポートにもビッタリですね。

免疫力サポートに

カブの葉はβ-カロテンが100gあたり2800μgと多く含まれています。
同グラムで比較した場合はブロッコリーの約4倍。根部分にはほとんどβ-カロテンが含まれていませんので、カブの“葉”ならではの栄養素と言えるかもしれません。

β-カロテンは抗酸化物質であると同時に、体内で必要に応じてビタミンAへと変換されることで呼吸器などの粘膜を保護・強化してくれます。このためβ-カロテンの摂取は抗酸化・ウィルスの侵入防止と2つの点で風邪予防に繋がります。カブの葉にはビタミンCが豊富ですし、ビタミンEやフラボノイドなどの抗酸化物質も含まれています。葉は固く生食には適していないのでイソチオシアネート補給源としては微妙なところですが、抗酸化物質の補給からも正常な免疫機能の保持をサポートしてくれます。

また、ビタミンCは抗ウイルス作用を持つインターフェロンの生成にも関与したり、コラーゲン生成によって細胞間を密に保つ働きもあります。様々な方面から、免疫力サポートが期待できるでしょう。

抗酸化、生活習慣病予防にも期待

β-カロテン・ビタミンC・ビタミンEと、抗酸化作用のあるビタミンを豊富に含むカブの葉。体を酸化ダメージから守ることで健康を維持し、血液中の悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑制することで、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病予防にも役立ちます。

カブの葉にはナトリウム排出をサポートしてくれるカリウムも100gあたり330mgと比較的多く含まれていますから、血圧が気になる方にも適しているでしょう。ビタミンCもコラーゲンの生成を促すことで血管、特に毛細血管をしなやかで丈夫な状態に整える働きがあります。高血圧・血栓・動脈硬化などを予防し、血流関係の健康維持にも期待できます。

美肌・アンチエイジングに

カブの葉は合わせて摂取することで相乗効果を発揮する抗酸化ビタミン、“ビタミンACE”がしっかりと摂取できる存在。これらは全て抗酸化物質ですから、ストレスや紫外線などで生じた活性酸素を抑制することでシミ・シワ・たるみなどの肌老化予防=アンチエイジングにも高い効果が期待できます。またカブの葉には貧血改善や血行促進なども期待できますから、肌に栄養を行き渡らせて新陳代謝を向上させハリやキメを整えることにも繋がります。

抗酸化社王があるだけではなく、ビタミンCはコラーゲン生成促進やメラニン色素生成抑制(美白)、ビタミンA(β-カロテン)は皮膚や髪の維持に関わり肌荒れや乾燥肌の予防に、ビタミンEは血行を促すことで肌のくすみ改善・ターンオーバー正常化などの働きも期待できます。

目的別、カブのおすすめ食べ合わせ

【参考元】