食べ物辞典:キヌア
キヌアは必須栄養素がバランスよく含まれていることからNASAも注目するスーパーフードとして世界的に注目され、スーパーフードブームの引き金とも言える食材。プチプチした食感でご飯代に混ぜ込んで手軽に取り入れられること、サラダやスープの具などにも利用できる便利さも魅力と言えます。低GIかつ主穀類(米・小麦・トウモロコシ)よりも栄養価が高く様々な栄養成分を含む食材ですが、万能ではないため過信には注意が必要でもあります。そんなキヌアの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。
和名:キヌア
英語:quinoa
キヌアのプロフイール
キヌアとは
キヌアはブームになる前からアトピー軽減食向けなど一部の専門店では扱われていたものの、もっちりしたお米が主食の日本ではパサパサ・鳥の餌のようだなどマイナスイメージの強かった食材。しかしアメリカは超有名歌手・ビヨンセさん減量成功の秘訣として紹介されたり、海外セレブが美容やダイエットなどのために取り入れている「スーパー穀物」として欧米では熱狂的人気になりました。それを皮切りに日本でも女優さんやモデルさんが食べていると公表したり・メディアで大々的に紹介されたことなどから大ブームに。
話題となった当初は売り切れが続出した時期もありましたが、現在ではスーパーなどの量販店などでも手軽に手に入る食材となっています。キヌアを配合したシリアルバーなどの加工品・お惣菜類なども販売されており、全国であっという間に普及したと言えるかもしれません。お米を主食とする食文化が根付いている日本において、キヌアはお米の代替え品・もしくは雑穀米のようにお米と組み合わせて主食として食べられる事の多いのではないでしょうか。
海外でもキヌアは「スーパー穀物」や「穀物の母」と呼ばれる存在として紹介されていますが、植物としてはイネ科植物ではないので厳密には穀物ではありません。キヌアはヒユ科アカザ属に分類されており、同じくヒユ科の植物としてはホウレンソウやオカヒジキなどがあります。お米や麦よりもほうれんそうに近い植物と紹介されるのはこのため。消費者的には「雑穀(穀物)」として扱われていますが、統計などでは穀物のような見た目・扱われ方をするがイネ科ではないもの=擬似穀物とされています。
雑穀と呼ばれているものの中ではソバやアマランサスなどもキヌアも同様に厳密には擬穀類で、ヒエ・アワはイネ科のだめ穀類に含まれます。ちなみに食味や栄養価的にキヌアとよく似ているアマランサスはヒユ科ヒユ属と同科別属。キヌアの原産地は南米のアンデス山脈一帯(コロンビア・エクアドル・ペルーなど)で、紀元前5000年頃から南米の人々に食されてきたと言われています。種子は白~薄黄色というイメージがありますが、赤・紫(黒)などもありますよ。
現在でこそ様々なスーパーフード・スーパーフルーツが紹介されていますが、日本でキヌアはアサイーと共にスーパーフードブームの先駆けとなった存在とも言えるかもしれません。視聴率・商品販売などの関係もありスーパーフード=美容やダイエット食というイメージを持たれがちですが、実はスーパーフードという言葉の定義は結構曖昧な部分が多いもの。大まかには栄養豊富なもの(少量で栄養を摂れるもの)・何らかの健康成分が特出して多いものの2つに分けられ、キヌアの場合は前者の様々な栄養を含むタイプに含まれています。
キヌアの歴史
キアヌの原産地は南米、コロンビアからアルゼンチンにかけてのアンデス山脈(一帯チチカカ湖周辺)です。インカ帝国時代には栽培が行われており、一説には5000年以上前から栽培されていたのではないかという話も。アンデス地域では古くから「穀物の母」と称され、主食として広く食されていたと考えられます。インカの遺跡からはキアヌ貯蔵のための倉庫も発見されています。
しかし16世紀にスペインによってインカ帝国が征服されると、その支配によりキヌアの栽培はほとんどされなくなってしまいます。キアヌを作るよりも小麦を作ることが優先され、キアヌは敵性の食物というマイナスイメージも背負わされてしまったのが原因と考えられます。1970年代にアメリカ科学アカデミーがアマランスやキヌアを将来有望な経済作物としてとりあげ、栽培・開発を奨励するなど多少のキヌア復興の兆しはあったものの、再び脚光を浴びるのは1990年代になってから。
NASA(アメリカ航空宇宙局)がキヌアの栄養面、取り扱いやすさ、用途、収穫率などさまざまな点から宇宙空間での長期滞在に適した作物として発表。「21世紀の地球上の生物の主要食」とまで言わせた栄養価の高さや、グルテン含まず小麦などにアレルギーがある方でも食べられる点などが人気となり、価格高騰が問題になるほどに人気が出ています。ダイエット法としてグルテンフリーや低糖質が提唱されたことも大きいでしょう。
ちなみに2013年は国連により「国際キヌア年(IYQ)」に制定されています。これはキヌアの栄養価の高さだけではなく、年間雨量が少なく作物の栽培が難しい地域でもキヌアは栽培可能であることが大きいそうです。ヒットしたと言うだけではなく“世界の食料安全保障と飢餓の解消”というシビアな問題に置いての大きな役割を期待してとのこと。栄養失調からの脱却などが期待されている作物でもありますが、日本を始めとする先進国において美容食・健康食という扱いで人気が急上昇したことで価格が高騰どころか“暴騰”し地元の人が食べることの出来ない高級食材化したこと・過剰栽培による環境負荷なども指摘されています。産地である南米の人々も普通に食べることができ、かつ世界中で愛される作物となるよう消費者としても考えたいところですね。
キヌアの栄養成分・効果について
栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
キヌアやアマランサスがスーパーフードとして脚光を浴びたのは、栄養成分が多いこと・グルテンフリーでアレルギー性が低いことの2点が大きいと考えられます。特にキヌアは「完全食」とも称される、主食(穀物)にはほとんど含まれていないものまでと幅広い栄養成分を含むことが注目されています。
キヌアの効果効能、その根拠・理由とは?
栄養バランスの補強に
キヌアには白米と比較してタンパク質が2倍以上、脂質が3倍以上含まれています。脂質と言われると嫌なイメージがある方も多いかもしれませんが、キヌアの脂質はオリーブ油の主成分のオレイン酸など不飽和脂肪酸の割合が多いことも特徴。不飽和脂肪酸は体脂肪として蓄積されない=太りにくく、血中の中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを下げるなどの働きから“良質な脂質”と称される存在です。タンパク質も多いだけではなく必須・準必須アミノ酸をバランスよく含んでおり、主要な穀物に比べると高いアミノ酸スコアとなっています。
また3大栄養素以外にもキヌアは白米の10倍のカルシウム・8倍の鉄分と食物繊維・7倍のマグネシウム・6倍のカリウムを含むと称されるなど、必須栄養素(ビタミン/ミネラル類)も豊富に含まれています。ビタミンB群やビタミンD・Eなども含まれていますし、ビタミンEの抗酸化作用は上記の脂肪酸の酸化を防ぐことにも繋がるので一石二鳥ですね。
キヌアはアメリカ航空宇宙局(NASA)や国際連合食糧農業機関(FAO)でも栄養価の高さが認められており、NASAは“1つの食材が、人間にとって必要なすべての栄養素を提供することは不可能だが、キヌアは植物界・動物界において何よりもそれに近いものである”と評価したことでも話題となりました。私達日本人は飢餓とは遠い状態にありますが、育ち盛りのお子さんの栄養補給や、健康な身体の保持に役立ってくれるでしょう。外食やレトルトなどが多く、栄養バランスが乱れやすい方のサポートとしてもおすすめです。
貧血予防・改善に
キヌアは女性に不足しがちな栄養素を豊富に含んでいます。特に100gあたり葉酸184μg、鉄分4.57mgと、穀類としては珍しいほど多く葉酸と鉄分を多く含むことから貧血の予防・改善にも注目されています。ヘモグロビンの原料として利用される鉄分不足による“鉄欠乏性貧血”は女性の貧血の主な原因とされていますし、赤血球の合成に必要な葉酸も貧血緩和に役立つ成分です。ご飯に混ぜて食べるだけでも十分な鉄分補給源になりますから、鉄分不足・ミネラル不足が気になる女性にとっては心強い食材と言えますね。
鉄分量についてはUSDAと日本食品標準成分表での数値を見る限り巷で言われている「白米の8倍」には至らないものの、同グラムで比較した場合は白米の5倍以上にはなります。同じく同グラムでホウレンソウや小松菜の2倍以上の鉄分含有量となりますし、生ホウレンソウよりはやや劣るものの穀類にはあまり含まれていない葉酸も緑黄色野菜に匹敵すると言われるほどの含有量がありますよ。
また貧血は鉄分だけではなく亜鉛の不足からも起こることが指摘されています。亜鉛が不足することで、赤血球膜の合成がうまく行かずに赤血球が壊れやすくなり貧血症状が起こります。スポーツ貧血と言われているのも亜鉛不足が大きいと考えられていますし、自覚していない人も含めると亜鉛欠乏症貧血は鉄欠乏性貧血と同程度に多いという見解もあります。キヌアは鉄分だけではなく亜鉛も100gあたり3.1mgと豊富で、アマランサスよりは劣るものの穀類・豆類の中では上位に入ります。鉄分&亜鉛両方を補給できる、貧血対策に優れた食品と言えます。
血行不良・冷え性軽減サポート
血行不良を引き起こす原因はストレスから姿勢まで様々ですが、大きくは血液そのものが不足している・血液循環が悪いことの2つに帰結します。キヌアには鉄分や亜鉛・葉酸など造血に関わる栄養素を多く含んでいることに加えて、血液循環をサポートする栄養成分も含まれています。末梢血管を拡張する働きを持つビタミンEやナイアシン、脂肪の酸化を防いで血液・血管の状態を整えてくれるサポニンなどが代表的ですね。
キヌアに多く含まれている不飽和脂肪酸も、リノレン酸は血中中性脂肪の減少・オレイン酸はLDL(悪玉)コレステロールの低減などの働きが報告されています。こうした成分が複合して働くことで血行改善に繋がる可能性もあるでしょう。貧血もしくは血行不良によって引き起こされる倦怠感・疲れやすさなどの軽減にも効果が期待できます。また血液が不足なくスムーズに循環することに加えて、キヌアは必須栄養素、特に代謝に関わるビタミンB群を多く含んでいるため、冷え性気味の方のサポートとしても役立ってくれるでしょう。
更年期障害・骨粗鬆症予防に
キヌアには女性ホルモンと似た働きをする植物性ホルモン(フィトエストロゲン)が含まれているという説もあります。フィトエストロゲンは大豆イソフラボンなどと同様に体内でエストロゲンとして作用する、もしくはエストロゲンをサポートする働きを持つと考えられます。このためキヌアはエストロゲン減少によって引き起こされる更年期障害の諸不調軽減や、女性らしいボディラインの維持・肌の潤いを保つなどの働きも期待されています。インディオの女性が若く健康的なのはキヌアのおかげ、なんて説もあるそうですよ。
加えてキヌアには、100gあたり47mgとカルシウムも穀類の中では比較的多く含まれています。この含有量は野菜や動物性食品などと比較すると際立って多いという程ではありませんが、同グラムの白米と比較した場合10倍近い含有量になります。閉経後の女性に骨粗鬆症の発症リスクが高まるのは、骨にカルシウムを蓄える働きを持つエストロゲンが減少する関係も指摘されています。エストロゲン様物質とカルシウムの両方を補えるキヌアは骨粗鬆症予防にも一役買ってくれそうです。カルシウムは日本人が慢性的に不足していると指摘されているミネラルでもありますから、骨粗鬆症を抜きにしても意識的に摂取したい栄養素です。
若い女性のサポートにも…
フィトエストロゲンはエストロゲン様作用を持つ成分ですが、本来のエストロゲンよりも働きが弱いため、若い女性などでエストロゲン分泌過多の場合には全体的なエストロゲンの働きを弱める=ホルモンバランスを調節する方向で働くのではないかとも考えられています。過剰摂取はNGですが、適量の補給であればホルモンバランスを整えてくれる成分としての働きが期待できます。またキヌアにはフィトエストロゲンだけではなくビタミンB2やビタミンB6、ビタミンE、亜鉛などホルモンバランスを整えるのに役立つ栄養素も含まれていますよ。
若い女性の月経不順・生理前に心身の不快感を覚える月経前症候群(PMS)などは、こうしたホルモンバランスなどに関わる栄養不足や栄養の偏りによって悪化している可能性も指摘されています。貧血や冷え性などもPMS・生理痛・月経不順など女性特有の不調を悪化させる要因となりますから、フィトエストロゲン+不足しがちな栄養素の補給によってキヌアは幅広い年代の女性のサポートとして役立ってくれる可能性が高いでしょう。主食(穀類)として食べるもののなかでは葉酸を非常に多く含むことと合わせて、妊活にも取り入れられています。
便秘・むくみ対策として
キヌアはカリウムが100gあたり563mgと豊富で、穀類の中ではアマランサスと並んでトップクラス。カリウムはナトリウムと競合して細胞内外の浸透圧を調整する働きがあり、ナトリウムの排泄を促進・それと比例する形で水分排泄を促す(利尿作用)ため、高血圧の予防やむくみ緩和も役立ってくれるでしょう。そのほか不足することで利尿能力が低下しむくみの原因になるとされるアミノ酸のメチオニンなども含んでいますから、むくみの予防・緩和に役立ってくれるでしょう。
またキヌアには食物繊維も100gあたり7.0gと豊富に含まれています。100g同士で比較した場合は米(白米)の食物繊維量が0.5gですから、比較すると14倍もの食物繊維を含んでいることになります。ちなみにキヌアを約35gを食べることでキュウリ1本分と同等のカリウム、バナナ2.5本の食物繊維が摂取できる計算になります。ただし同じく穀類の中でも大麦(押し麦/もち麦など)やオーツ麦など、キヌア以上に食物繊維を含むものも存在しています。
糖尿予防・悪化防止にも期待
キヌアはグリセリンインデックス値(GI値)・グリセミック負荷(GL値)が低い食品でもあります。白米のGI値が84~88・バナナが55とされているのに対して、キヌアは35と低GIのため血糖値をゆるやかに上昇させ、血糖値を長時間安定させてくれる食材としても注目されています。糖尿病はインスリンによって血糖値が正常範囲まで低下しない(高血糖状態が続く)招待を指しますから、血糖値を急激に上げにくいキヌアは糖尿病の食事両方にも適していると考えられています。
また日本人糖尿病患者の約95%とされるII型糖尿病の発症要因の1つに“インスリンを分泌する膵臓の疲労”が挙げられていますから、現時点で血糖値に問題はなくとも低GIを心がけることで予防に繋がる可能性もあるでしょう。こうした理由からキヌアは糖尿病の予防や治療に役立つと考えられていますし、急激に血糖値を挙げないことから反応性低血糖の予防にも効果が期待されています。血糖値の検査結果としては問題無い方でも、おやつに甘い物を多く摂っている方などはキヌアを食事に取り入れてみると良いかもしれません。
ダイエットサポート
インスリンは血中のブドウ糖を細胞へと取り込むことで血糖値を正常に戻しますが、必要量以上の糖をグリコーゲンや脂肪として貯蔵する働きもあります。インシュリンが多く分泌されるほど、使われていない糖を蓄える力が強くなり、逆にインシュリン分泌が少ないと脂肪蓄積は抑制されます。また血糖値変動が少なく長期間安定していることは、過剰な食欲を抑えることにも繋がると考えられています。
血糖値に関わるものだけではなくキヌアは代謝をサポートするビタミンB群やアミノ酸も含んでいますから、脂肪蓄積を抑制するだけではなく、エネルギー代謝=脂肪燃焼力を高める働きもあると考えられています。むくみや便秘の改善も直接的にスタイル(外見)の維持に関わってきますし、便秘を改善することで腸内フローラを整える・代謝低下を改善するなどの副次的な効果も期待されています。これらの働きからキヌアは太りにくい食材として女性に支持されています。
ちなみにキヌアは低カロリーであると記載されているものがありますが、100g中のカロリーは367kcal。白米は356kcalですから、低カロリー・いくら食べても大丈夫ということはありません。水を吸うことで茹で上がりが5倍近く膨らむため結果的に摂取量が少なくなる=カロリー摂取は抑えられることになりますが、食べ過ぎには注意が必要ですよ。
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肌老化予防・美肌
キヌアにはビタミンEやサポニンなどの抗酸化物質や、体内で抗酸化酵素の原料として利用されるミネラル(セレン)を運搬することから体の抗酸化力を高めるとされるメチオニンなど、体の酸化を抑制する・抗酸化物質を助ける成分を多く含んでいます。コラーゲンの生成に必要なタンパク質も豊富であり、コラーゲンの原料として欠かせない非必須アミノ酸のプロリンなども含まれていますのでハリ・潤いのある肌作りに役立ってくれるでしょう。お肌など外見のアンチエイジングはもちろんのこと、酸化によって起こる様々な健康リスクを低下させる働きも期待されています。
またキヌアには女性ホルモンとして働くフィトエストロゲンが含まれているとも言われていますから、エストロゲンによる保水力・肌バリア機能向上、肌にハリと弾力を与える、血行を促すなどの働きも期待されています。皮膚の健康維持に関わるビタミンB群が含まれていることから肌荒れ予防に、貧血・血行不良の軽減からは肌の血色を良くしたりクスミを軽減して透明感を高める働きも期待できますよ。抗酸化と相乗してシミ・シワ・たるみ・乾燥・くすみなどの予防緩和に幅広く役立つ、美肌作りのサポートとしてもキヌアは優秀な存在と言えそうです。
アレルギー対策としても期待
キヌアが人気の理由として上記でご紹介したように栄養価が高いということだけではなく、アレルギー性が低い食品であることも外せません。欧米で問題になっているグルテンアレルギー(セリアック病)の食事療法としても活用されていました。グルテンの依存性や食欲増進作用が問題視され、ダイエットや健康に良いとして流行している「グルテンフリーダイエット」の影響もあり、しっかりと栄養も取れることでますますキヌア人気が高まったとも言えます。日本では大豆アレルギーの方なども利用できる「キヌア味噌」「キヌア醤油」も生産されていますよ。
目的別、キヌアのおすすめ食べ合わせ
キヌアの選び方・食べ方・注意点
キヌアの食べ方として最も手軽な方法は白米に混ぜて一緒に炊くことかと思います。白米:キヌア=3:1~4:1くらいの割合で混ぜると食感もぱさつかず取り入れやすいでしょう。お水は白米だけで炊く時分+キヌア分と同量程度もしくはそれよりも若干多めに入れます。キヌアの湯で具合は好みがありますので、一度作ってみて硬めのプチプチ食感が好きか・柔らかめの食感が好きかによって調整してみて下さい。
キヌア単体で利用する場合には炊飯器で炊くか・鍋で茹でたものを使うのがポピュラー。炊飯器を使う場合は水の計量(キヌアと同量~1.5倍程度)が必要ですが、茹でる場合はだっぷりのお湯に泳がせておけばOKなので手軽です。茹でたものはお味噌汁などの汁物の具にしたり、サラダのトッピングのようにして使います。スープやシチューなど長時間煮込むものの場合は下茹でせず、乾燥状態のまま入れることが出来ます。
アマランサスよりもクセがないとは言われていますが、多少青臭さがありますので気になる方はピラフやチャーハン・スープなど味のしっかりついた料理に加えるほうが食べやすいでしょう。ペルーではキヌアを粉にして小麦粉がわりにビスケットやケーキを作るのに使ったり、シリアルとして活用しているようです。日本でもドラッグストアなど到るところで……というわけにはいきませんが、専門店やネットショップなどではキヌア粉が販売されています。レシピサイトなどではキヌアを使った焼き菓子などのレシピがありますから、食感・風味などが苦手な方は“粉”として利用してみるのもおすすめですよ。
キヌアの注意点
キヌアに含まれているサポニンは過酸化脂質の生成抑制・コレステロール低減など有益な作用も認められていますが、過剰に摂取すると溶血性(赤血球を壊してしまう働き)があることも指摘されています。基本的に販売されているものはサポニンが除去されているものですが、食べる前には2~3度洗ってから使うようにしましょう。洗った時に泡立ったり、食べた時に苦味・渋みを強く感じるものはサポニン除去が行なわれていない可能性があるので注意が必要です。
キヌアに含まれているフィトエストロゲンはエストロゲン様作用により女性に様々な恩恵を与えてくれる成分と報じられていますが、イソフラボンなどと同様に過剰摂取によりホルモンバランスの乱れ・エストロゲン依存性疾患などの発症リスクを高めてしまう危険性もあります。キヌアのフィトエストロゲン含有量や作用の強さなどはハッキリしていませんが、サポニン量の問題もありますので一日の摂取は乾燥重量で20~30g程度にすると無難でしょう。どの食品もそうですが沢山食べれば良いというものではありませんから、バランスよく摂取することを心がけて下さい。
キヌアに関わる雑学
キヌア・アマランサス・白米の栄養価比較
キヌアとアマランサス、白米の基本的な栄養素を比較してみました。参照元のデーターベースが異なるため厳密な比較とは言えませんが、それぞれ得意領域と考えられるものもありますのでご紹介します。
キヌア | アマランサス | 白米 | |
---|---|---|---|
エネルギー | 368kcal | 358kcal | 356kcal |
タンパク質 | 14.12g | 12.7g | 6.1 |
脂質 | 6.07g | 6.0g | 0.9g |
炭水化物 | 64.16g | 64.9g | 77.1g |
食物繊維 | 7.0g | 7.4g | 0.5g |
鉄分 | 4.57mg | 9.4mg | 0.8mg |
亜鉛 | 3.1mg | 5.8mg | 1.4mg |
カリウム | 563mg | 600mg | 88mg |
マグネシウム | 197mg | 270mg | 23mg |
カルシウム | 47mg | 160mg | 5mg |
ビタミンB1 | 0.36mg | 0.04mg | 0.08mg |
ビタミンB2 | 0.318mg | 0.14mg | 0.02mg |
ビタミンB6 | 0.487mg | 0.58mg | 0.12mg |
葉酸 | 184μg | 130μg | 12μg |
パントテン酸 | 0.77mg | 1.69mg | 0.66mg |
ビタミンE | 2.44mg | 1.3mg | 0.1mg |
※キヌアはUSAD/アマランサスと白米は日本食品標準成分表に記載されている数値となります。
キヌア | アマランサス | 白米 | |
---|---|---|---|
トリプトファン | 167mg | 181mg | 84mg |
スレオニン | 421mg | 558mg | 220mg |
イソロイシン | 504mg | 582mg | 240mg |
ロイシン | 840mg | 879mg | 500mg |
リジン | 766mg | 747mg | 220mg |
メチオニン | 309mg | 226mg | 150mg |
シスチン | 203mg | 191mg | 140mg |
フェニルアラニン | 593mg | 542mg | 320mg |
チロシン | 267mg | 329mg | 230mg |
バリン | 594mg | 679mg | 350mg |
アルギニン | 1091mg | 1060mg | 500mg |
ヒスチジン | 407mg | 389mg | 160mg |
アラニン | 588mg | 799mg | 340mg |
アスパラギン酸 | 1134mg | 1261mg | 570mg |
グルタミン酸 | 1865mg | 2259mg | 1100mg |
グリシン | 694mg | 1636mg | 280mg |
プロリン | 733mg | 698mg | 290mg |
セリン | 567mg | 1148mg | 310mg |
※キヌアとアマランサスはUSAD/白米は日本食品標準成分表に記載されている数値となります。
キヌアのメリット
キヌアはビタミンB1,B2の含有量が多く、またGI値も米白が81なのに対してアマランサスは45・キヌアは35と低いと考えられています。その他に脂肪燃焼効果の期待できる栄養素として注目されている必須アミノ酸「メチオニン」含有もアマランサスを上回っていることから、代謝の向上を期待する場合や、健康的な食事でダイエット・肥満予防を行いたい、糖尿病予防として取り入れたい方などに適していると考えられます。
加えてキヌアには女性ホルモンとして働く成分(フィトエストロゲン)が含まれているとも言われていますから、更年期障害や月経トラブルなどホルモンバランスに起因する女性特有の不調軽減・骨粗鬆症予防、もしくは美肌や女性らしいボディライン作りなどを目指している方にも良いでしょう。また若干土臭いような風味があるとも称されるアマランサスに比べ、キヌアはどんな料理にも取り入れやすいことも特徴と言われていますよ。
アマランサスのメリット
アマランサスの場合はキヌアと比較してもミネラル含有量が非常に高いことが特徴と言えるでしょう。鉄分や亜鉛はキヌアの約2倍、カルシウムについては3倍以上の含有量があると考えられます。貧血予防やミネラル補給源としてはより適していると考えられますし、食物繊維もやや多いので便秘の方にもオススメです。
また副腎機能を助ける抗ストレスビタミン「パントテン酸」や睡眠の質に関係すると考えられているアミノ酸「グリシン」の含有量も多いのでミネラルと相乗してストレス対策や精神安定にも効果が期待できそうです。キヌアは女性ホルモン様作用を持つ可能性があると言われていますから、そうした面が心配な方・小さいお子さんと一緒に食べたい方にも適しているかもしれません。
アマランサスの詳細はこちらの記事へ