アーモンドの特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:アーモンド

クセが少なく食べやすいアーモンドは、日本でもポピュラーなナッツの1つ。近年は23粒食べると1日の摂取目安量をクリアできてしまうほど豊富なビタミンEを筆頭にポリフェノールなどの抗酸化物質が豊富なアンチエイジング食材として注目されています。低糖質・高食物繊維でタンパク質も豊富。そんなアーモンドの栄養成分の特徴や期待されているメリット・その根拠を詳しくご紹介します。

アーモンドのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:アーモンド/扁桃
英名:almond/sweet almond
学名:Prunus dulcisAmygdalus dulcis

アーモンドとは

アーモンドのプロフィール

香ばしい風味とクセが少なく食べやすいことから、ピーナッツと共にポピュラーなナッツであるアーモンド。日本で本格的な輸入が始まったのは1950年代と比較的最近ですが食べやすいこと、1958年には「グリコアーモンドチョコレート」が発売されたことなどもあり、早い段階でお菓子・おつまみとしての地位を確立したナッツとも言えます。香ばしい風味とカリッとした食感はサラダなどのトッピングにも役立ちますし、アーモンドもしくはアーモンドパウダーは焼き菓子やパン作りにもよく使われていますね。

アーモンドと言えば、かつては脂質が多いことでダイエット中の方やニキビが気になる方に避けられることもあった食品の一つ。しかし、近年は抗酸化作用を持つビタミンEが手軽に摂取できることが注目され、生活習慣病予防やアンチエイジングをサポートしてくれる食材として評価されています。ダイエットに関しても、脂質ではなく炭水化物の方を控えるダイエット法が主流になっていますから、炭水化物が少なくタンパク質が豊富なアーモンドはダイエット中のおやつとして親しまれていますよ。

アレルギーが問題視されていたりもしますが、スーパーフードの一つに数えられることもあり注目されているアーモンド。アメリカでは牛乳や豆乳よりもアーモンドミルクが売れている、と言われるほど大流行したという報道も記憶に新しいですね。アーモンドは美容と健康のサポートに役立つ食材として再評価されているのです。カリフォルニア・アーモンド協会は「1日23粒」を目安にアーモンドを摂り入れた健康的な食生活を推奨しており、日本では「1日23粒」にちなんで1月23日がアーモンドの日と制定されています[1]。

食材としては私達にとっても親しみのあるアーモンド。しかし、植物、アーモンドの木となると全くイメージがないのではないでしょうか。アーモンドは学名をPrunus dulcisもしくはAmygdalus dulcisとされる、バラ科サクラ属の果樹。シノニム(別の書き方)も多くありますが、これはバラ科植物の分類に関して諸説あるため。アーモンドは日本人が愛す桜やの仲間なんですね。ただし、果肉を食べる桃や杏と異なり、アーモンドは種子の殻の中にある仁を食用とする種実類(ナッツ類)です。

ちなみに、南ヨーロッパやアメリカなどの産地では、生アーモンドを塩ゆでやフライなどにして食べることも多いようです。そのほかインドではアーモンドを使ったカレーがあったり、イランではアーモンドの未熟果を煮込み料理に利用するなど地域色のある使い方もあります。かつては保存食・携行食・滋養強壮食・断食期間の食材としても重宝されていました。

対して、、日本でアーモンドとして販売されているものは、炒るもしくは燻製(ロースト)したものが主流。アーモンドを料理して食事に使うことはあまり多くありませんが、実は世界的に見てもアーモンドチョコが大好きな国なんだとか。

アーモンドの種類について

アーモンドは更にナッツとして食べられている“スイートアーモンド(sweet almond/甘扁桃仁)”系と、生薬や香料としての利用が主の“ビターアーモンド(bitter almond/苦扁桃仁)”系の2つに大きく分かれています。

このうち、ビターアーモンドの方はアミグダリンという毒性成分が含まれているため食材としては販売されていません。ただし、アミグダリンから分解される芳香成分ベンズアルデヒドは香料として活用されています。市販されている杏仁豆腐の香り付けにも、杏仁ではなくビターアーモンド抽出物が使われていることもあります。

私達が普段食べているスイートアーモンドの方。こちらは様々な品種が作られており、殻の硬さから更にソフトシェルアーモンド系とハードシェルアーモンド系の2タイプに分けられています。カリフォルニアではソフトシェル系、ヨーロッパではハードシェル系が多く栽培されています[2]。スイートアーモンドはそのまま食べるという利用のほか、圧搾してオイルの生産も行われています。スィートアーモンドオイルは料理の風味付けに使用されるほか、保湿オイルやクレンジングオイルなどにも使われています。

アーモンドの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

アーモンドはビタミンEとポリフェノールが多く含まれていることから、高抗酸化食材の1つとして様々な健康メリットが期待されています。また、カルシウム・鉄分・マグネシウム・亜鉛などのミネラル、タンパク質、食物繊維など健康維持に嬉しい栄養素も含まれており、健康的なおやつとしても親しまれるようになっています。

かつてアーモンドはクルミと共に美味しいけど「カロリーが高い(太る)」「ニキビが出る」「鼻血が出る」などマイナスイメージもありましたが、近年では炭水化物(糖質)が低いため糖質制限などのダイエットにも使われるようになっています。脂質も不飽和脂肪酸が多いので、適量を摂取する分にはそこまで大きなデメリットは無いと考えられていますよ。

乾燥アーモンド100gあたりのカロリーは609kcal。20~25粒程度でだいたい25g程度、カロリーは152kcal程度となります。高カロリーなイメージを持たれがちですが、スナック菓子を一袋食べるよりカロリーも低いのです。

アーモンドのイメージ

アーモンドの効果効能、その根拠・理由とは?

抗酸化・アンチエイジングのサポートに

アーモンドの健康メリットとして、最も注目されているのは抗酸化力と言っても過言ではありません。アーモンドの代表成分といえるのがビタミンE。乾燥アーモンド100gあたりのビタミンE(α-トコフェロール)含有量は30.0mg。カリフォルニア・アーモンド協会が提唱する1日23粒[1]≒25gとして計算すると、1日の摂取目安量である7mgをアーモンドだけで補えるほどビタミンEが豊富です。

そんなアーモンドに豊富に含まれているビタミンEは、抗酸化作用をもつことが認められているビタミンの1つ。α-トコフェロールは主に新しいフリーラジカルの生成を阻害し、γ-トコフェロールは既存のフリーラジカルを中和する働きがあることが報告されています[3]。加えてアーモンド、特にアーモンドの薄皮部分にはフェノール酸、フラボノイド、タンニンなどのポリフェノールが含まれている事も認められています[4]。

このためアーモンドはビタミンEとポリフェノールの補給源として酸化ストレスの軽減をサポートし、老化や関節炎などの予防に役立つのではないかと期待されています。アンチエイジングフード(抗酸化食材)としてアーモンドが世界中で取り入れられているのも納得ですね。

生活習慣病予防に

抗酸化物質の補給は体の酸化を押さえて若々しさを維持するだけではなく、生活習慣病、特に高脂血症や動脈硬化など血流系トラブルの予防との関連も注目されています。心血管疾患やその合併症の原因として低密度リポタンパク質(悪玉/LDLコレステロール)の酸化と、それによる炎症によって引き起こされます。ビタミンEは抗酸化作用によって酸化を予防することに加え、血小板凝集の阻害・内皮機能強化などの働きをもつ事も報告されています[3]。

アーモンドに含まれているオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸も、LDL(悪玉)コレステロール低減作用や血栓予防効果が報告されている成分。2015年『Journal of the American Heart Association』に掲載されたランダム化比較試験では、アーモンドの摂取によってHDL(善玉)コレステロールを維持しながら、LDL(悪玉)コレステロールが低下したことが報告されています。抗酸化作用と合わせて血管・血液循環を正常に保つ働きが期待できるでしょう。

また、アーモンドは血圧の維持・安定に関わるカリウムやマグネシウムなどのミネラルも含んでいます。特にマグネシウムは乾燥アーモンド100gあたり290mgと豊富なため、1日あたり20g~25g程度アーモンドを摂取するだけでも不足分を補うことに繋がります。マグネシウムにはHDL(善玉)コレステロールを改善する可能性も示されている[6]ことから、こうした成分を含んでいるアーモンドは高血圧予防、動脈硬化や心筋梗塞など心臓病の予防にも役立つ可能性が高い食品として注目されています。生活習慣病予防のサポートにも役立ってくれるでしょう。

認知症予防やメンタルサポートにも期待

アーモンドは、ビタミンE、葉酸、不飽和脂肪酸など脳の健康維持に役立つ栄養成分も含んでいます。ビタミンEは過酸化水素の生成とその結果生じる細胞毒性をブロックすることで興奮性アミノ酸誘発性毒性を軽減し、アルツハイマー病患者の病気の進行を遅らせる可能性があることも示唆されています[3]。アーモンドには抗酸化物質だけではなく、ビタミンB2(リボフラビン)やL-カルニチンなど神経機能に関わる栄養素も含まれていることから、合わせて神経疾患・脳障害のリスク低減に役立つ可能性もあるのではないかと研究が行われています。

また、アーモンドに多く含まれているミネラルは神経伝達に関わることから、メンタルヘルスにも繋がる栄養素と考えられています。マグネシウムもハッピーホルモンと呼ばれるセロトニンを始めとした、神経伝達物質の合成にも使われる栄養素。不足なく補うことで、正常な神経伝達や睡眠を維持できると考えられます。また、カルシウムも不足するとイライラや鬱・不眠など精神的なトラブルを引き起こす可能性が指摘されているミネラル。こうした栄養素が含まれていることから、アーモンドは精神面での健康維持や不眠の予防・軽減にも効果が期待されてます。

骨粗鬆症予防・成長サポートに

乾燥アーモンド100gあたりのカルシウム含有量は250mg。1日23粒≒25g程度摂取すると50mg程度のカルシウムが補給できる計算になります。カルシウムは骨や歯の形成や維持にも欠かせない存在でもあり、お子さんや閉経後の女性に摂取が推奨されている栄養素。アーモンドにはカルシウムの取り込みを助けてくれるマグネシウムも豊富に含まれているため、カルシウムの補給源として成長サポートや骨粗鬆症予防にも役立つ食材と言えます。

加えてアーモンドは乾燥状態100gあたり19.6gと、全体重量の約2割がタンパク質。マグネシウムもタンパク質の代謝と合成に関与する[6]ため、タンパク質の補給源としても役立ってくれるでしょう。筋トレやエクササイズを頑張っている方の栄養補給・間食にも適しています。

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貧血予防・軽減に

アーモンドは100gあたり3.6mgと鉄分も比較的豊富。貧血と診断されるほどではなくても、鉄分不足による隠れ貧血のサインとして疲れやすくなる・動悸・息切れ・めまい・立ちくらみ・無気力感など貧血とほぼ同じ症状が挙げられています。アーモンドは鉄分補給源としてこのような貧血、鉄分不足(隠れ貧血)による不調や不快感の改善サポートにも約立ちます。

鉄分以外にも、アーモンドにはカルシウムやマグネシウム、亜鉛などのミネラルも含まれています。亜鉛も丈夫な赤血球を生成するために必要なミネラルであり、不足すると赤血球が壊れやすくなり「亜鉛欠乏性貧血」と呼ばれる貧血を起こす可能性があります。このためアーモンドは貧血予防として役立つと考えられます。ミネラルの補給源として、普段の食生活での不足を軽減してくれるでしょう。

便秘予防・改善に

アーモンド100gあたりの食物繊維総量は10.1gごぼうの約2倍・玄米の約7倍と言われるほど食物繊維を豊富に含む食材でもあります。実際にアーモンドを100g食べるというのは現実的ではありませんが、10g(6~10粒程度)の摂取でも食物繊維量は1.04gとなりますから、トマトキュウリ100gと同等量の食物繊維が補給できる計算になります。手軽な食物繊維補給源として、便秘の予防や改善を手助けしてくれるでしょう。

血糖値対策・糖尿病予防に

アーモンドはビタミンEを筆頭に、抗酸化物質を豊富に含む食材。このため酸化によって引き起こされる糖尿病合併症予防にも役立つと考えられます。加えて、アーモンドに多く含まれているミネラルであるマグネシウムも、インスリンを介したグルコース取り込みなどに関与しているミネラル。

マグネシウムが不足している2型糖尿病患者にマグネシウムを投与するとインスリン機能の改善・血糖値効果が見られたという報告があり[6]、インスリン抵抗性の関連性が示唆されています。このためアーモンドを食べてマグネシウムを補給することで、インスリン抵抗性を改善し肥満や糖尿病予防にも繋がるのではないかと期待されています。

ただし、アーモンドは食物繊維が多いから食後血糖値の上昇を抑える、という説については微妙なところなので注意が必要。血糖値上昇抑制作用が認められているのは水溶性食物繊維ですが、アーモンドに含まれている食物繊維の9割以上が不溶性食物繊維となっています。水溶性食物繊維の補給源としては適していないでしょう。

肥満予防・ダイエットサポートに

高脂質であることからダイエット中には適さないと考えられてきたアーモンドですが、近年は脂質が豊富であってもオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸の比率が多いことから“太りにくい”食材だと考えられています。また、アーモンドはタンパク質量が多く、糖質含有量が低い食材。食物繊維も多く、硬めで噛みごたえがあることから、満腹感を維持して食欲抑制にも期待できます。実際に、137人の参加者を対象とした研究では1日43gのアーモンドを摂取すると食欲と空腹感に減少が見られたことも報告されています[7]。

それ以外にも、アーモンドは食物繊維の補給源としてダイエット中に起こりやすい便秘対策としても役立ってくれるでしょう。インスリンの働きが正常になり血糖値上昇が押さえられることで体に余分な糖質を取り込まないようにしてくれる、抗酸化物質の補給+脂質の代謝を促進するビタミンB2の補給によって代謝低下予防に繋がる可能性もあります。

2014年『Journal of Research in Medical Sciences』に掲載されたランダム化比較試験では、アーモンドを摂取している女性は、ナッツを含まない食事をしている女性よりも体重重/ BMI・ウエスト・体脂肪率の減少が大きかったことが報告されています[8]。こうした栄養成分や研究結果から、適量のアーモンド摂取は肥満予防・ダイエット中の食事に適した食材であると考えられます。

美肌保持・肌老化予防に

ビタミンEやポリフェノールを豊富に含むアーモンドは、抗酸化作用に優れる食材として評価されています。抗酸化はは体内の酸化を予防して健康を保つだけではなく、内側からお肌の酸化予防に働きかけることで肌をキレイに保つ働きも期待されています。

肌細胞が酸化ダメージを受けるとシワやたるみ・くすみなどの肌老化が促進されることが指摘されていますから、アーモンドの摂取は酸化ダメージによる肌の老化予防にも役立ってくれるでしょう。アーモンドには肌老化・黄くすみの原因となる糖化を防ぐ働き・ビタミンEなどによる血行促進により肌の新陳代謝を高める働きなども期待されています。肌のアンチエイジング・内側からの紫外線対策としても役立ってくれそうですね。

また、抗酸化作用は過酸化脂質の生成抑制にも繋がりますし、アーモンドには過酸化脂質の分解に関与するビタミンB2も豊富に含まれています。このため多量に摂取しなければ大人ニキビの予防や改善にも繋がると考えられます。不飽和脂肪酸も肌の潤いを守るセラミドの生成促進作用を持つと考えられていますから、合わせて美肌作りのサポートが期待できるでしょう。

そのほか貧血や血行不良の改善による乾燥やくすみ改善・ホルモンバランスが整うことで肌のバランスが良くなるなど、間接的な効果も含めて総合してみるとアーモンドは美肌作りにおいても様々な嬉しい働きが期待出来る食材と言えます。

目的別、アーモンドのおすすめ食べ合わせ

アーモンドの注意点、その他

アーモンド摂取の注意点

生アーモンドを購入された場合は、消化酵素の働きを阻害する物質が含まれているため、食べる前に浸水処理(8~10時間程度水につけておく)を行う必要があります。水に浸すという関係上痛みやすく、早めに食べきるようにしましょう。ビタミンやミネラル量については生もローストもさほど変わらないため“生”に拘りすぎず、取り入れやすい方法から始めてみて下さい。

ローストのアーモンドであっても保存期間が長くなると油分は酸化してしまいます。記載されている賞味期限は未開封の場合が想定されていますから、開封したものは賞味期限よりも早めに食べきるようにした方が良いでしょう。酸化を防ぐため密閉容器に入れて冷蔵庫で保存します。味付きのものは塩分摂取過多になる可能性があるので、素焼き・食塩無添加のものを選ぶことをお勧めします。

アーモンドの摂取目安量について

アーモンドは健康維持・美肌・ダイエットなど様々な面で役立つとは言われていますが、高カロリーかつ高脂質な食材。脂質も“健康に良い油”と言われる不飽和脂肪酸が多いとは言われていますが、不飽和脂肪酸しか含んでいないということではありません。高カロリーな食材でもありますから食べ過ぎには注意が必要。

1日に食べるアーモンドの摂取量目安は20~25粒程度。25粒食べた場合のカロリーとしては150kcal程度になります。カリフォルニア・アーモンド協会の推奨する1日23粒[1]が123と覚えやすいですし、カロリー等の心配も少ないので良いのではないでしょうか。

【参考元】