三つ葉/ミツバゼリとその栄養成分や効果効能
|香り成分の働き・三つ葉の種類や違いなども紹介

食べ物辞典:三つ葉

茶碗蒸しのトッピングやお吸い物の具でもお馴染み三つ葉は、和食を代表する香味野菜の一つ。おひたしや辛子和えなどに野菜としても活用されていますね。セリ科に分類される植物で、各地の山野にも自生していることから山菜採りでも定番です。種類としては大きく根三つ葉・切り三つ葉・糸三つ葉の3つに分けられ、州痛量が多いのは“糸三つ葉”と呼ばれるタイプ。栄養面ではβ-カロテンを多く含むほか、香り成分による食欲増進・リラックス効果なども期待されています。そんな三つ葉の歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

三つ葉(ミツバ)のイメージ画像

和名:三つ葉(ミツバ)
英語:mitsuba/Japanese honeywort

三つ葉(みつば)のプロフイール

三つ葉とは

三つ葉が料理の主役となることはあまりないものの、和食に欠かせない香味野菜の一つ。カツ丼(カツとじ)には三つ葉が載っていないと…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。少し青っぽいような爽やかな香りが特徴で、シソやヨモギなどと共に「日本のハーブ」とも呼ばれています。日本の食材という印象が強いためか、英語でも日本語そのままの「Mitsuba」もしくは「Japanese honeywort」と呼ばれていますよ。

外見面での特徴は“三つ葉”という名前の通り葉柄の先に三枚の葉が付いていることが特徴。かつては芹(セリ)の変種と思われていたことからミツバゼリ(三葉芹)とも呼ばれていますが、植物としてはセリ科ミツバ属に分類される多年草です。学名もCryptotaenia canadensis subsp. Japonicaと、日本の名がつけられていますね。現在ではハウス栽培が多く中年流通していますが本来の旬は春~初夏にかけての時期で、ミツバゼリは春の季語でもあります。

ちなみに和名でオランダミツバと呼ばれてるセロリは別属で、同じく同科別属にあたる植物にはニンジンパセリパクチーなども含まれています。セリ科はハーブやスパイスとして用いられる植物が多い科ですから、三つ葉のしっかりとした存在感も納得ですね。

ミツバの種類

ミツバの種類としては根三つ葉・切り三つ葉・糸三つ葉の3つに大別されています。そのほか天然物のミツバがありますが、こちらは風味が非常に強く知らずに食べると別の植物ではないかと思うほど。葉が大きく茎もしっかりとしていてシャキシャキした食感がありますし、茎はストローのように中は空洞になっています。同じミツバでも食感・風味に違いがありますから、用途によって使い分けてみると良いでしょう。

このうちスーパーなどで流通しており私達が目にする機会が多いのは“糸三つ葉”と呼ばれるタイプで、ハウス内で水耕栽培されているため根にスポンジ付きのものも見られます。葉が小さく、茎が根本近くまで緑色をしていることが特徴です。3種のミツバの中でも特に茎が青いことから「青三つ葉」と呼ぼれることもあります。水耕栽培で安定した生産が行われているので通年販売されていること・安価なことも魅力ですね。

“根三つ葉”は呼び名の通り根付きで出荷されるミツバで、土寄せによる軟白栽培をしているため茎の色が白っぽいことが特徴。2~4月頃が旬。3種のミツバの中で茎が太くシャキシャキした食感があり、風味も強いのでお浸し・和え物などミツバそのものを楽しむ食べ方に適しています。“切り三つ葉”は根本をカットした状態で出荷されるミツバで、関東を中心に流通しています。こちらも軟白栽培されているため茎が白く、また根三つ葉よりも茎が細いことが特徴で旬は11月下旬〜2月頃。茎が柔らかく上品な香りのためお吸い物・お雑煮・茶碗蒸しなどの彩り使われることが多くなっています。

三つ葉の歴史

三つ葉は日本原産の香味野菜と言われることもありますが、実は祖先と言える植物は東南アジアが原産と考えられています。野生種は朝鮮半島・中国ほか東アジアに広く分布していますが、それを栽培し食用に適したものへと品種改良しているのは中国と日本だけなのだとか。

中国では三つ葉を食用にしてきたという記述が日本よりも古くから見られますが、日本も山野にミツバが自生してしていましたから地元の方はそれを採取して食べていたのではないかと考えられています。また煎じた野草茶も消炎・解毒剤に、葉を塩で揉んだものは炎症止めの貼り薬にと民間医薬としても用いられてきました。

日本での三つ葉についての記載は室町時代に記された『清良記』に正月食材として“三つ葉芹”の名前があるのが初とされています。この時既に栽培が行われていたのかは不明ですが、文書として三つ葉の栽培について記されているものが表れるのは江戸時代以降となります。1680年台前半に記された『百姓伝記』には早出し出荷をするための栽培方法が、1697年に刊行された『農業全書』には栽培法や食べ方が記されているそうです。

1704年発行された貝原益軒の『菜譜』には“昔はあまり食べなかったが最近は食べることが増え、市場でも売られている”というようなことが記されていますから、江戸以前は食用というよりは薬用植物という認識のほうが強かったのではないかと考えられます。ともあれ17世紀のうちには三つ葉の栽培化が進み、享保年間(1716年~1736年)には葛飾での軟白栽培も行われるようになります。このことから江戸時代中盤頃には広く認識される食材となっていたのではないかと考えられます。

三つ葉(みつば)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ミツバはβ-カロテンを多く含むことから緑黄色野菜に分類されており、ビタミン類・カリウムを筆頭にミネラル類も幅広く含まれています。日本食品標準成分表』には根三つ葉・切り三つ葉・糸三つ葉の3つの成分表がありますが、下記では一般に流通している“糸三つ葉”の数値を参考にしています。根三つ葉・切り三つ葉との栄養価との違いは項目の最下部をを御覧ください。

三つ葉のイメージ02

三つ葉の効果効能、その根拠・理由とは?

ストレス対策・抗酸化

ミツバ独特の爽やかな香りには神経の興奮を鎮める事でリラックス効果があると言われており、精神疲労やイライラ軽減に役立つと考えられている他、不眠対策としても取り入れられているそうです。ちなみにかつてミツバの香気成分はクリプトテーネンやミツバエンが主成分とされていましたが、近年の研究はこの成分に否定的でβ-ミルセンとβ-ピネンの混合物が主体というのが主流。加えてキュパレン・β-セリネン・α-セリネンなどの成分が含まれていることも報告されており、これらの香気成分が複合して働くことで鎮静効果をもたらすと考えられています。

ミツバは香気成分の他にβ-カロテンやビタミンCなど抗酸化作用を持つビタミン類を多く含む食材でもあります。活性酸素はストレスに対抗するために副腎皮質ホルモンが分泌される際にも発生し、精神的ストレスによって大量に発生するという報告もあります。その結果脳が酸化ストレスにさらされ機能低下する可能性も指摘されていますから、ミツバは香気成分の働きと抗酸化作用の両方からストレス対抗力アップ・抗酸化をサポートしてくれる可能性がある食材と言えます。

食欲増進・風邪予防

ミツバの香りは消化器系の働きを活発化させると考えられており、消化促進・食欲増進効果も期待されています。リラックス効果と合わせてストレスによる食欲不振などの胃腸トラブル緩和にも役立ってくれそうですね。間接的な働きとはなりますがβ-カロテンなどの抗酸化作用も酸化による内蔵機能低下予防に繋がります。

消化器系の働きが良くなり栄養補給の効率が高まること・抗酸化作用によって免疫力を正常に保つ働きが期待できますから、風邪予防としてもミツバは役立ってくれるでしょう。β-カロテンは必要に応じて体内でビタミンAに変換されるビタミンA前駆物質(プロビタミンA)でもありますから、呼吸器粘膜を修復・強化することでウィルスの侵入を防ぐ働きも期待できます。

むくみ・便秘予防

ミツバはミネラル類の中で100gあたり500mgとカリウムを多く含んでいます。カリウムはナトリウムとバランスを取り合うことで水分バランスを整える働きがあることから、高血圧やむくみ対策に役立つとされている栄養素。カリウムほど多いというわけではありませんが、ミツバにはカリウムの運搬や体液循環をサポートしてくれるマグネシウム・血液循環をサポートするビタミンEなどの栄養素も含まれていますから、むくみ改善のサポートとしても役立ってくれるでしょう。

またミツバの食物繊維量は生100gあたり2.3gと野菜類の中では中間くらいのポジションですが、野菜炒めやお浸しに加えることで食物繊維補給源として便通改善にも繋がると考えられます。そのほか根拠が不明瞭ではありますが肝臓の働きを高めるという説もあり、デトックスサポートに役立つのではないかという見解もあるそうですよ。

妊娠中の栄養補給に

他野菜類と比べて圧倒的に多いということはありませんが、ミツバは100gあたり64μgの葉酸・0.9mgの鉄分を含んでいること、そのほかビタミンやミネラルを幅広く含んでいることから妊娠中の栄養補給としても役立つと考えられています。ミツバの葉酸量は必要分をカバーしてくれると言えるほど豊富ではありませんが、リラックス効果・食欲増進効果・カリウム補給によるむくみ軽減効果などが期待できることも考えると心強い存在と言えます。

ちなみに鉄分と葉酸を含んでいることからミツバは貧血予防に良いとする説もありますが、一般的な貧血とされる鉄欠乏性貧血の予防と考えた場合は、同グラムで倍以上の鉄分を含むほうれんそうや小松菜などを摂取したほうが効率が良いと考えられます。ただしミツバ類の中でも根三つ葉は100gあたり1.8mgと鉄分量が多いとされていますので、鉄分補給源も兼ねて取り入れたい場合は根三つ葉を取り入れてみても良いかもしれません。

生活習慣病予防

ミツバ、特に糸三つ葉は生100gあたりのβ-カロテン量が3200μgニラ西洋かぼちゃに迫るほど多く含まれています。同じく抗酸化作用を持つビタミンEも0.9mg、ビタミンCも13mg含まれていますから抗酸化物質の補給としても役立つ食材と言えます。こうした抗酸化作用を持つビタミン類の補給は、血中脂質が酸化されて出来る過酸化脂質が血管に蓄積して起こる動脈硬化・血栓の予防にも繋がります。

また血管と血液をキレイに保つことで血液循環のサポートにもなりますから、高血圧予防効果も期待できますね。ミツバはカリウムも多く含むことから、抗酸化とナトリウム排出の両方から高血圧予防をサポートしてくれる食材と言えます。ただしビタミンCは茹でた場合は著しく減少してしまいますから、抗酸化ビタミンをしっかりと補給したい場合にはビタミンCが豊富な食材と食べ合わせると良いでしょう。

美肌・美髪保持

ミツバに豊富に含まれているβ-カロテンはそのままであれば抗酸化物質として働き、必要に応じて体内でビタミンAに変換されることで皮膚や粘膜を構成する上皮細胞の分化と機能維持をサポートしてくれます。ビタミンA不足による初期症状として免疫力の低下だけではなく肌の乾燥や角質化なども挙げられていますから、肌の上皮細胞(表皮)の健康と潤いを守ってくれる存在とも言えます。

このためミツバは肌の乾燥やゴワつきが気になる方に適した食材と考えられます。また皮膚細胞や頭皮の新陳代謝を促してくれる事から、ターンオーバーの正常化や抜け毛予防にも効果が期待されています。ビタミンA(レチノール)として摂取した場合は過剰症状の心配もありますが、β-カロテンであれば多い分は抗酸化物質として働いてくれるのも魅力ですね。ミツバにはビタミンEも含まれていますから、相乗して肌細胞の酸化によるシワ・たるみなどの予防にも繋がるでしょう。

視機能保持・夜盲症予防

β-カロテンから変換されるビタミンAは網膜で光を感知するロドプシンの生成にも利用されおり、不足すると網膜の光に対する反応を鈍化させてしまうため、β-カロテンやビタミンAの摂取は夜盲症の予防や改善にも有効とされています。加えてビタミンAは目や呼吸器などの粘膜保持にも関わり、粘膜の乾燥を防ぐ働きもあります。発展途上国ではビタミンA不足によって角膜乾燥症を起こし失明してしまう子供もいるそうです。

日本ではそこまで極端な不足なほとんどありませんが、ビタミンA(β-カロテン)の補給はロドプシンの再合成をサポートすることで目の疲れの緩和・視界をクリアにする、根の粘膜を保護することでドライアイ対策に役立つと考えられています。

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根三つ葉・切り三つ葉の栄養について

栄養価としては青三つ葉とも呼ばれる糸三つ葉に対し、軟白栽培されている根三つ葉・切り三つ葉はβ-カロテンが低い傾向にあることが最大の差異と言えます。糸三つ葉生100gあたりのβ-カロテン含有量は3200μgとされていますが、根三つ葉は1700μgと約半分、切り三つ葉は720μgとさらに半分以下となっています。緑黄色野菜の定義としては「可食部100gあたりのβ-カロテン量が600μg以上」とされていますから切り三つ葉も立派な緑黄色野菜ではありますが、β-カロテンの補給や抗酸化作用を期待する場合には糸三つ葉が最適と言えます。

それ以外には根三つ葉は鉄分が100gあたり1.8mg・ビタミンCが22mgと糸三つ葉よりも多い傾向にあり、切り三つ葉は3種の中で最も多くカリウムを含んでいます。ただしβ-カロテンと根三つ葉の鉄分量以外はそこまで大きな差ではありませんので、実際に食べる分量を考えるとさほど差はないでしょう。生100gあたりのカロリーは糸三つ葉が13kcalと最も低く、切り三つ葉は18kcal・根三つ葉は20kcalとなっています。

目的別、ミツバのおすすめ食べ合わせ

三つ葉(みつば)の選び方・食べ方・注意点

ミツバを選ぶ際は根元から葉先まで瑞々しくピンとハリのあるものを選ぶようにします。糸三つ葉であれば全体的に鮮やかな緑色をしているもの、根三つ葉と切り三つ葉は葉が淡緑色で茎が白いものを選びます。茎部分が黄色がかっていたり半透明になっているものは鮮度が落ちているので避けたほうが良いでしょう。

乾燥に弱いので保存時はポリ袋に入れるかラップに包んで冷蔵庫に入れます。可能であれば湿らせたキッチンペーパーや新聞紙に包んでから袋に入れるとより良いでしょう。日持ちは良くないので使い切るまでの目安は3~4日程度、冷凍もできますが風味はかなり落ちてしまうのでおすすめ出来ません。

三つ葉は下茹でして利用されることが多いですが、糸三つ葉と切り三つ葉の場合は生のまま仕上げに加えることが出来ます。加熱しすぎると風味が損なわれますし、ビタミンCなどの栄養素も減少してしまいますので注意が必要。下茹でする場合にも茹でるというよりも“熱湯にくぐらせる”くらいの感覚で十分です。

根三つ葉の場合はしっかりとしているので根本を切り落としてから塩を入れたお湯で下茹ですることが多いですが、こちらも湯で時間は1分以内を目処にすると良いと言われています。切り落とした根の部分もキンピラや炒め物に活用できますよ。