食べ物辞典:ウニ
ウニは濃厚な甘さ・うま味を持つ食材。とろりとしたクリーミーな舌触りも独特で、寿司ネタとしても人気の食材ですし、旬の時期にはウニパスタなど外食産業も季節限定商品を販売していますね。日本では縄文時代からウニを食べており、平安貴族たちにも愛された高級食材。タンパク質が多く、代謝に関わるビタミンB群も含んでいることから滋養強壮に良い食材としても取り入れられてきました。栄養成分としてはβ-カロテンが含まれていることも特徴。そんな世界的に愛されるシーフード、ウニの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。
和名:ウニ(海胆/海栗)
英語:sea urchin/uni
ウニ(海胆/海栗)のプロフイール
ウニとは
ウニは英名とされる“sea urchin”だけではなく、近年は日本語そのままの“uni”でも通じると言われるほど、日本人に愛されている食材。日本でのメジャーな食べ方としては刺し身・寿司・ウニ丼など生食が挙げられますが、東北などでは汁物にも使われています。産地であったり生ウニを吸収できた場合は、網で殻ごと焼いて食べるのも食べごたえがあり濃厚で美味しいです。そんな和食というイメージのあるウニですが、実は世界中で食されているシーフードの一つ。美食の国フランスでもウニを生のまま食べる文化があるそうですし、ソースに使ったりオムレツに入れたりと幅広く使われています。卵やクリームソースとの相性もよく、パスタやグラタンなど洋食系のレシピとも合いますね。
ウニという呼び名はウニ綱に属する生物の総称。かなり大まかな括りのため、食用されていないものも含むと世界には800~900種類のウニがいると言われています。余談ですが、ウニは漢字で海胆もしくは海栗と書くのが一般的で、よく見かける「雲丹」は塩ウニなどの加工品を指す時に用います。ところでウニと言われてパッと思いつくビジュアルは、イガ栗のような球状+トゲトゲの形。この棘のある“殻”を割って食べるため貝の仲間のようにも思われがちですが、実はウニは棘皮動物という、ナマコやヒトデなどに近い生物に分類されます。ウニ綱に属する生物の中にはトゲが付いておらず、私達のイメージするウニとはかけ離れた種類のものもいますよ。
そんな広範囲なウニという呼び名ですが、より一般的に使われる「ウニ」はその中でも食用に適したもの。日本で食べられているウニはウニ綱“ホンウニ目”に属すもので、さらにナガウニ科に属するムラサキウニ系、オオバフンウニ科に属するバフンウニ系の2系統が主。特にムラサキウニ(白うに)は青森以南に生息しており、兵庫県や徳島県など西日本でもよく水揚げされています。こちらが全国的に食されるメジャーなウニとも言われています。
対してバフンウニ系は北海道の特産品で最高級品と言われる“エゾバフンウニ”を筆頭に、本州以南に生息しているバフンウニ・アカウニなどが知られています。紛らわしいのですが北海道で食べられている“キタムラサキウニ”というウニも、生物分類上ムラサキウニ系ではなくバフンウニ系(オオバフンウニ科)に分類されています。北海道ではムラサキウニはほとんど食べないそうですよ。そのほか九州以南、特に沖縄県ではラッパウニ科に分類される大型のウニ“シラヒゲウニ”も食べられています。地元から離れると出されるウニに違和感を覚えることがありますが、こうした地域差もあるんですね。北海道出身の自分も、東京でウニを食べた時に「?」となりました。
ちなみに通称“身”とも呼ばれているウニの食用部位は、生殖腺(精巣・卵巣)。と言っても子孫を増やすだけではなく、栄養を備える部分でもあるため、ウニは産卵の1~2かヶ月前が最も美味しくなると言われています。ウニの紹介としては「夏が旬」と括られることもありますが、3~4月がバフンウニ・6~8月がムラサキウニ・7~8月がエゾバフンウニ・シラヒゲウニ・9~11月頃がキタムラサキウニ…と種類によって旬の時期に違いがあります。また北海道では漁期が冬のところもありますし、冬場はロシア産のウニも輸入されているため、通年なんらかのウニの旬ではあるとも言えるかもしれませんね。余談ですが、プロでもウニのオスとメスとの区別はほとんどつかないそうですよ。
ウニの歴史
ウニは縄文自体の貝塚などからも殻・トゲが出土しており、魚類・貝類と共に日本人に古くから食べられていた食材の一つと考えられています。文献としては奈良時代(757年)に施行された『養老律令』の中で、税となる司法特産品“調”の中に棘甲贏(ウニ/ムラサキウニなど長い棘を持つものと推測される)・甲贏(ガゼ/バフンウニなどトゲのないウニ類と推測される)という記述があります。奈良~平安時代には貴族達の食事としても好まれており、1000年以上昔には既に「高級食材」の一つであったようです。
江戸時代中期に越前福井藩主が日持ちのきくウニの貯蔵品作りを命じ、塩蔵法によって保存期間を伸ばした“塩雲丹”の生産が行われるようになります。江戸時代後期に書かれた『日本山海名産図会』では“塩辛中の第一”として「越前の雲丹(※越前国で加工された塩雲丹)」が掲載されていますし、現在でもこの越前の雲丹はカラスミ(長崎野母の唐墨)・このわた(三河の海鼠腸)と共に日本の三大珍味の一つに数えられています。
ウニ加工品として“ウニのアルコール漬け(瓶詰め)”も知られていますが、こちらは山口県の六連島が発祥とされています。明治のはじめ事、西教寺の和尚が誤ってウニの小鉢にジンを零してしまったものの食べたら美味しかった…ということでウニのアルコール漬け製法が研究されるようになったのだそうです。
またヨーロッパでも古代ギリシア・ローマではウニを食べていたことが分かっています。ポンペイの発掘でもレストランと考えられる建物からウニが発見されていますし、現在でも古代ギリシア・ローマ文化の影響を受けていた地域はウニ食文化があるところが多いよう。日本のウニとはまた異なり、地中海周辺には“ヨーロッパムラサキウニ”というウニが生息しています。中国や韓国でもウニは食べられており、韓国の済州島はウニとワカメを軽く炒めて作るスープが名物。そのほかニュージーランドなどでもウニは食べられていますし、世界共通で高級食材という位置付けのようです。
ウニ(海胆/海栗)の栄養成分・効果について
栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
脂質が多いという印象を持たれがちなウニですが、三大栄養素の中で最も多いのはタンパク質。カロリーも生100gあたり120kcalなので、そこまで高いわけではありません。ちなみに100gあたりの3大栄養素はタンパク質16.0g・脂質4.8g・炭水化物3.3gとなっています。また動物性食品に含まれつつ、β-カロテンを含んでいることも特徴。バラつきはありますが、ミネラルよりもビタミン類の補給源というイメージが強い食材です。
ウニの効果効能、その根拠・理由とは?
滋養強壮・疲労回復に
ウニはタンパク質が多く、代謝に関わるビタミンB群を筆頭に様々なビタミンやミネラルを含んでいます。加えて柔らかい食材で、消化時の負担が少ないこともあり、胃腸が弱っている時や高齢の方の栄養源として適した存在だと考えられています。うま味成分として知られるアミノ酸のグルタミン酸も、適量であれば運動時の疲労の回復を促進することが報告されている成分。ウニは特別感のある食材でもありますから、弱っている時や、頑張って運動した時に、自分の心身へのご褒美にもなりますね。
またタウリンが含まれていることからも、ウニは疲労回復や肝機能向上効果が期待できるとも言われています。ただしウニのタウリン含有量は100gあたり30mg程度、ハマグリやアサリの1/10程度と推測されますから、タウリンが豊富な食材というわけではありません。タウリンを摂取したい・肝臓の疲労や機能低下ケアに…という場合はアサリなどの貝類やイワシ・サバなどの魚、もしくはタウリン含有量はウニと同程度のものの“オルニチン”が含まれているシジミなどを選んだほうが良いでしょう。
抗酸化・生活習慣病予防にも
ウニは野菜や果物などのようにβ-カロテンを含んでおり、その含有量は100gあたり650μgと緑黄色野菜に匹敵するほど。レチノールもβ-カロテンも同じく体内でビタミンAとして働きますが、β-カロテンには抗酸化作用があります。ウニは同じく抗酸化作用を持つビタミンEも100gあたり3.6mgと比較的豊富に含まれているため、活性酸素によって引き起こされる“酸化”を抑える働きが期待されています。
抗酸化作用は細胞の酸化を抑制することで身体を若々しく保つほか、動脈硬化などの生活習慣病予防に役立つと考えられています。加えてウニには血圧上昇を抑えてくれるカリウム、血小板の凝集を抑制する働きや悪玉コレステロール・中性脂肪の低下・血圧降下作用などがが期待され血液サラサラ成分として注目されるEPA(エイコサペンタエン酸/IPA:イコサペンタエン酸とも言う)なども含まれています。グルタミン酸にも脂肪蓄積を抑える働きがあることが報告されていますから、適量の摂取であれば生活習慣病予防にも役立つと考えられています。
ただしウニはコレステロールが高いことも指摘されているため、食べ過ぎには注意が必要です。気になる方はコレステロールを抑える働きがある水溶性食物繊維を含む海藻・野菜類と食べ合わせるようにしてください。
貧血・冷え性軽減サポート
ウニの鉄分含有量は100gあたり0.9mg。鉄分が豊富というわけではありませんが、造血のビタミンと呼ばれる葉酸・ビタミンB12を多く含んでいること、造血に関わる亜鉛・銅などのミネラルも含んでいることが特徴と言えます。こうした造血に関わる栄養成分をまとめて補給できるため、貧血予防に役立つ食材として扱われています。
また100gあたり3.6mgと豊富に含まれているビタミンEは抗酸化作用を持つだけでなく、末梢血管を拡張させ血液循環を促す働きあります。ウニにはビタミンE以外にも血液循環をサポートしてくれるEPA・代謝を助けてくれるビタミンB群などが含まれています。これらの成分からウニは冷え性の予防・改善に良いと言われています。「ウニの炬燵(こたつ)要らず」なんて言葉もあるほどですから、昔から冷え性に良い食材と考えられていたようです。
妊娠中の栄養補給にも
ウニは妊娠中の女性にオススメの食材としても紹介されることも。この理由としては、葉酸含有量が100gあたり360μgと多いことがまず挙げられます。葉酸は赤ちゃんの中枢神経を形成するために必要とされる成分でもあり、妊娠中や授乳中は意識的に摂りたい栄養素でもあります。そのほかにもウニには葉酸と同じく胎児の成長や母乳を作るために必要なビタミンB12も多く含まれていますし、鉄分やカルシウムなど妊娠中に不足しやすいミネラルの補給源としても役立ちます。レチノールと異なり、過剰症の心配が低いβ-カロテンが含まれていることもメリットと言えますね。
ちなみに妊娠中に生の魚・貝類はNGと思われている方もいらっしゃいますが、これは水銀量などの有害金属と食中毒の関係によるもの。ウニは水銀の蓄積量が少ないですし、大量に食べすぎなければ生のままでも食べることが出来ると言われています。葉酸は加熱調理に弱い性質がありますので、生で食べたほうが効果的に葉酸を摂取できるでしょう。毎日食べるのはオススメしませんが、時々自分へのご褒美感覚で取り入れてみてください。
風邪・インフルエンザ予防に
ウニに含まれているβ-カロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換される成分。ビタミンAは皮膚や粘膜を構成する上皮細胞の形成・保持に必要なため、皮膚粘膜の健康を守ってくれるビタミンと言えます。呼吸器などの粘膜が弱くなってしまうとウィルスが侵入しやすくなりますから、ビタミンAを不足なく摂取することでウィルス侵入を防ぐ=免疫力向上や風邪・インフルエンザ予防に繋がると考えられています。
ウニはビタミンAとして利用されるβ-カロテンのほか、ビタミンAと同じ働きをするエキノネンという色素も含まれています。このためビタミンAの補給源としてウィルスの侵入を抑制する働きが期待されています。そのほか代謝を促すビタミンB群や血行を促すビタミンEなども含まれており、冷え性の改善に良いと言われている食材ですから、体を温めることからも免疫力低下に繋がる可能性があるでしょう。栄養補給源として優秀と言えるのも、体力アップや風邪予防に良いと言われる理由ですね。
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目の疲労対策・健康維持に
ビタミンAは粘膜の形成・保持に関わる成分であることから、ドライアイ対策としても役立つと考えられています。またビタミンAは目の網膜に存在する物質“ロドプシン”の主成分でもあり、分解されることで脳に情報を伝えた後にロドプシンが再合成される過程でもビタミンAが必要となります。このためビタミンAは夜盲症など暗いところでの視力低下・目の酷使による視力低下や眼精疲労の予防にも効果が期待されています。
ウニにはビタミンAとして働くβ-カロテンとエキノネンが含まれています。加えて視神経の機能向上や目の疲労軽減効果が期待されるビタミンB12、視機能をサポートし目の充血を防ぐ働きもあるビタミンB2などのビタミンB群も含まれていますし、ビタミンEも血行を促すことで目の疲れ・コリを緩和に繋がる可能性があります。こうした栄養素を不足なく補うことから、目の健康維持に役立つ食材にも数えられているということですね。
美肌作り、肌老化予防の手助けも
ウニは魚介類の中では比較的多くビタミンEを含んでいます。ビタミンEは抗酸化作用によってシワやシミなどの肌老化を予防するほか、血行を促すことではだのくすみやクマの軽減にも効果が期待できます。またビタミンAとして働くβ-カロテンとエキノネン、NMF(天然保湿因子)の原料となるグルタミン酸などのアミノ酸も含まれていますから、皮膚の水分量(潤い)を保持し、乾燥肌や肌トラブル予防にも役立ってくれると考えられます。
そのほかウニには皮膚粘膜の健康保持に必要なビタミンB群、特に皮膚・髪・爪などの細胞の再生に関わり不足すると肌荒れや口内炎などを起こしやすくなるビタミンB2を多く含んでいます。ビタミンB2は脂質代謝に関わる存在で過酸化脂質を分解してくれるビタミンでもありますから、相乗して美肌保持効果が期待できます。ビタミンCを含む野菜などと組み合わせて摂取するとアンチエイジング・内側からの美肌ケアとしてより効果的です。
目的別、ウニのおすすめ食べ合わせ
ウニ(海胆/海栗)の選び方・食べ方・注意点
産地の方であればトゲトゲの殻が付いたままの“生ウニ”を買ってくることもありますが、全国的には加工されたものの販売が主流となっています。生ウニが流通しないのは当たりハズレが大きく、殻を開けてみるまで分からないから・鮮度が落ちやすくすぐに生臭くなったり身が崩れてしまい美味しくなくなってしまうことが理由とされていますよ。
加工ウニについて
特にスーパーなどの量販店では“箱ウニ(板うに/折うに)”呼ばれる、きれいに並べられた剥き身のウニ(加工品)の流通が多いかと思います。箱ウニはミョウバンで身を固めて日持ちを良くしたものが多く、「ウニは薬臭いし苦いから嫌い」と言われるのもミョウバンのいわば副作用的なもの。臭み・苦みが気になる時は海水と同程度の塩水にしばらく漬けておいてから食べると気になりにくくなります。
ミョウバンの添加具合はメーカーによって差がありますので「ミョウバン添加は味が落ちる」と一概には言えませんが、最近は“ミョウバン不使用”の箱ウニも増えていますし、塩水に浸かった状態の“塩水うに”も多く出回っています。味が心配な場合であれば、価格はやや高めですが塩水ウニを選ぶようにした方が当たり外れの差は少ないようです。
個人的な好みとしては、断然、塩水ウニがオススメ。
二十歳くらいで初めて板ウニを食べたとき、生のウニとの違いにショックを受けました。軽くトラウマになるほど。何度もウニなのかと確認し、やっと「こういう食べ物なのだ」と納得はしたものの……美味しいウニを食べたいなら、なるべく生で割立て(?)に近い状態のものをお勧めします。板ウニが好きだという方もいらっしゃるので、生が正義だとは言えませんけど。