かぼちゃの種/パンプキンシードとは
カボチャの果実部分は家庭料理でも身近な存在で、ビタミンやミネラルが豊富な緑黄色野菜の代表としても親しまれています。冬至かぼちゃなど縁起物のような使われ方もしますね。一方でカボチャを調理する際には生ゴミとして捨ててしまうことも多いかと思います。パンやパンプキンスープにトッピングされている緑色のヤツ、というくらいの使いみちは思いつくものの、鳥・リス・ハムスターなど小動物のおやつという認識のほうが強い方もいらっしゃるかもしれません。
しかし近年は高脂質・低糖質の食材が注目される傾向であることや、アメリカでブームになったパレオダイエット(原始人ダイエット)などの影響から特にナッツ、シード類が脚光を浴びています。日本でもいままであまり食用として利用されていなかった“ヒマワリの種”や“カボチャの種”の栄養価の高さが報じられるようになり、捨てずに食べようという方も増えている注目食材の1つと言えるかもしれません。
漢方でもかぼちゃの種は「南瓜仁(ナンカンニン)」と呼ばれ、生薬として虫下しや低血圧などに利用されています。またかぼちゃの種を薬用として利用しているドイツ語圏でペポカボチャ「Arzneikuerbis(薬用カボチャ) 」と呼ばれており、果肉を食用とするためではなく、採種用に栽培されているものもあるのだとか。
薬用はさておき、栄養豊富な食材としても欧米ではパンプキンシードは食用として親しまれてきました。“種子”なだけにタンパク質や脂質(不飽和脂肪酸)が豊富なですし、女性に嬉しいミネラル類や食物繊維なども豊富に含まれています。
かぼちゃの種/パンプキンシードの歴史
かぼちゃの原産地については諸説ありますが、中南米(メキシコなど)辺りとする説が現在は有力です。原種とも言える古い時代のかぼちゃは現在のように果肉部分が厚くなかったため、主に種を食用とし、外側の厚い皮の部分は種や果肉を取り除き容器として利用していたと考えられています。現在当たり前に食べている果肉部分よりもカボチャの種子のほうが食用の歴史は長いのです。
何時頃かは定かではありませんが、突然変異によって果肉が厚く甘みがあるカボチャが誕生します。食用出来る部分の増えたカボチャを栽培・改良し、現在のカボチャへと近づいていくにつれ食用部分は果肉がメインとなっていったと考えられます。
アンデス山脈高知の冷涼な場所で栽培化された種が現在の西洋かぼちゃ系(C. maxima)、メソアメリカで栽培化された種は日本カボチャやバターナッツカボチャ(C. moschata)、北米南部の乾燥地帯で栽培化された種はペポカボチャ(C. pepo)系の品種の元として分化していきます。
コロンブスのアメリカ大陸到達によってヨーロッパへとカボチャは伝わっていきます。パンプキンスープやパイなど果肉を食用とする一方、ヨーロッパではカボチャの種を泌尿器系トラブル(残尿感・頻尿・尿失禁・前立腺肥大に伴う症状など)を緩和する民間薬としての利用も行われていました。ハーブ先進国と言われるドイツでは現在でも有効性がコミッションE(薬用植物を医薬品として利用する場合の効果・安全性の評価委員会)でも認められており、「過敏膀胱(瀕尿、逼迫尿失禁、残尿感)と前立腺肥大症ステージⅠ、Ⅱ」に対する治療薬として認可されています。
かぼちゃの種/パンプキンシードはこんな方にオススメ
- 手軽な栄養補給源として
- ミネラル不足が気になる方
- 疲労回復・体力アップに
- ホルモンバランスの乱れ
- 更年期障害・骨粗鬆症予防
- 月経トラブルの緩和に
- PMS(月経前症候群)の軽減に
- 過敏性膀胱、頻尿気味
- 前立腺肥大や排尿トラブル
- むくみ・便秘対策に
- ダイエットのサポートとして
- 老化・生活習慣病予防に
- 美肌維持・アンチエイジングに
- 薄毛・抜け毛が気になる方
かぼちゃの種の主な栄養・期待される効果:前半
※栄養成分の含有量は日本食品標準成分表“種実類/かぼちゃ/いり、味付け”の数値を記載させていただいております。加工法や調味料の有無などで差異が生じると考えられます。
疲労回復・体力増強
かぼちゃの種にはカリウム・マグネシウム・鉄・亜鉛などのミネラルが豊富に含まれています。ミネラルの必要性としては骨を丈夫にするカルシウムや血液を作る鉄分などがよく知られていますが、その他に酵素の働きを助ける「補酵素」としてあらゆる生命活動に関係している存在でもあります。特にカボチャの種はマグネシウム含有量が100gあたり530mgと多く、不足を補うことで消化・吸収・老廃物排出・エネルギー産生、タンパク質や神経伝達物質の合成、免疫機能などをしっかりと働かせると考えられています。
ミネラルを不足なく摂取することで栄養吸収から代謝までを円滑に行えるようになり、疲労の回復を助けたり、基礎体力を増やす働きがあると考えられています。またかぼちゃの種は良質の脂質が主成分で筋肉の元となるタンパク質も豊富ですから、エネルギー源としても優れていますし、運動効果を高める働きなども期待できるでしょう。育ち盛りのお子様のミネラル・エネルギー補給源としても役立つと考えられます。ただしミネラル類の中でカルシウム含有量が少ない(100gあたり44mg)ので、アーモンドや小魚などカルシウムの豊富な食材と合わせて摂取するようにするとミネラルのバランスが取れるでしょう。
老化防止・生活習慣病予防
かぼちゃの種は脂質の割合が高いですが、コレステロールは含まれおらず、リノール酸やオレイン酸など血中コレステロール値低下に役立つ不飽和脂肪酸が多く含まれています。かぼちゃの種は抗酸化ミネラルと呼ばれる亜鉛・マンガン・セレンなどが豊富で、カボチャ果肉よりは劣るもののβ-カロテンやビタミンEなどの抗酸化作用のあるビタミンも含有しています。適量であればリノール酸はアンチエイジングにも有効とされていますから、様々な抗酸化成分によって老化を予防してくれる働きが期待できるでしょう。
またかぼちゃの種に含まれているリグナン類は、ポリフェノールの一種で強力な抗酸化作用があります。加えて抗肥満作用(内臓脂肪量の減少・血中中性脂肪の低下)もあると考えられることから、抗酸化成分や不飽和脂肪酸などと相乗して高脂血症や動脈硬化をはじめ生活習慣病予防にも役立つと考えられています。
女性ホルモンバランスを整える
かぼちゃの種にはポリフェノールの一種であるリグナン類が含まれています。リグナンには抗炎症作用・抗酸化作用の他、女性ホルモンのバランスを整える作用(エストロゲン様作用)などがあるとされています。リグナンがエストロゲンを補う形で働くことで、エストロゲンの急激な低下によって起こる更年期障害の緩和などに効果が期待されています。
また更年期~閉経後の女性に多い骨粗鬆症の原因として、エストロゲン分泌の低下によって骨の中のカルシウム保持能力が低下することが考えられています。フィトエストロゲンであるリグナンは骨密度の低下を防ぐ働きが期待できることから、かぼちゃの種は骨粗鬆症予防としても注目されています。
エストロゲン過多の場合にはエストロゲン受容体にフィトエストロゲンが収まることでエストロゲンの働きを弱めるとも考えられるため、月経不順やPMS(月経前症候群)など様々なタイプの“ホルモンバランスの乱れ” から起きる月の不調緩和にも有効とされています。加えてカボチャの種はマグネシウムや亜鉛などホルモンバランスを整えたり、神経伝達物質物質の合成に関わる働きのあるミネラルを豊富に含んでいます。リグナンと相乗して働くことでホルモンバランスを整えるほか、更年期障害や生理前のイライラ・気持ちの落ち込みなどといった精神症状の緩和にも効果が期待できます。