食べ物辞典:カボチャ
煮付けからサラダまで様々な所で目にするカボチャ。好き嫌いのあるお子さんにも嫌われにくい野菜で、甘みがあるのでお菓子作りの際に砂糖を減らすために加えることもありますね。カボチャと言えば豊富なβ-カロテンが注目されがちですが、実はビタミンCなどのビタミン類も豊富ですし、デンプンに守られているので調理時の損失が少ないというメリットもありますよ。美肌やアンチエイジングをサポートしてくれる野菜としてだけではなく、食物繊維や難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)の補給と合わせて肥満予防にも効果が期待されています。そんなカボチャの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。
和名:南瓜(かぼちゃ)
英名:pumpkin/kabocha squash
学名:Cucurbita spp.(Cucurbita maximaなど)
南瓜(かぼちゃ)のプロフイール
カボチャとは
和食として冬至かぼちゃなどの煮物をはじめサラダ・スープ・スイーツなど様々な食事に利用されている、日本でも誰もが知っているメジャーな野菜の一つ。北海道の郷土料理としてジャガイモを使った芋餅(いもだんご)が有名ですが、かぼちゃで作られる“カボチャ団子(餅)”も同じように親しまれています。ハロウィンのキャラクラーや、シンデレラのカボチャの馬車などその形状にも親しみがある存在ですね。食用は勿論ですが、キュウリやメロンなどを栽培する際の接ぎ木の台として利用され、見えないところでも私たちの食生活を支えている植物でもあります。
カボチャはウリ科カボチャ属の総称で、いくつかの種に分かれています。かぼちゃは世界中で栽培されているため品種も非常に多くありますが、作物としてはモスカータ種(C. moschata)・マキシマ種(C. maxima)・ペポ種(C. pepo)・フィシフォリア種(C. ficifolia)・ミキスタ種(C. mixta)5種系統の品種が栽培されていますよ。ちなみに英語では日本でカボチャという感覚で「pumpkin(パンプキン)」と呼ぶと思われがちですが、アメリカやカナダでパンプキン=ハロウィーンで使われる外側の皮がオレンジ色のものだけを指す言葉として使われている場合もあります。日本で一般的に食べられている外が緑色のカボチャなど果皮がオレンジでないものは「squash(スクウォッシュ)」と呼び分けるそうですよ。
上記5種のうち日本で野菜として栽培されているカボチャは「日本かぼちゃ(モスカータ種)」「西洋かぼちゃ(マキシマ種)」「ペポかぼちゃ(ペポ種)」の3系統。最も流通量が多いのは大型で甘味の強いホクホクした食感の「西洋かぼちゃ」で、俗に“栗かぼちゃ”と呼ばれるものが西洋かぼちゃ系統に該当します。日本カボチャは黒皮カボチャやバターナッツ、京野菜の“鹿ケ谷かぼちゃ”ほか各地の伝統野菜とされているカボチャ類の大半が含まれています。ペポカボチャはバラエティー豊かで、食用としては金糸瓜(そうめんかぼちゃ)やズッキーニなどが代表。そのほかインテリア感覚で使われる手のひらサイズの“おもちゃかぼちゃ”なども大半がペポカボチャ系統に品種です。
余談ですがハロウィンの体表とも言えるカボチャに中身をくり抜いて顔を付けた提灯“ジャック・オ・ランタン”は、元々アイルランドなどではカブを使って作られていたものなのだとか。アメリカでアイルランド系移民の人々が生産の多かったカボチャを使うと、カブよりも加工が楽だったこともありそのまま定着したと言われています。カブ時代のジャック・オ・ランタンは私達が見慣れた三角形の目やギザギザの口ではなく、横長の楕円で眼と口を掘られたシュールなお顔。コミカルなキャラクターとして定着したのはカボチャのおかげかも知れません。
南瓜(かぼちゃ)の栄養成分・効果について
栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
かぼちゃには「日本かぼちゃ」「西洋かぼちゃ」「ペポかぼちゃ(そうめんかぼちゃ)」の3つ種類がありますが、一般的に流通しているものは西洋かぼちゃの分類に含まれます。3種の中では概ね西洋かぼちゃが栄養価的には優っており、特にβ-カロテン含有量については西洋かぼちゃが100gあたり3900μgなのに対し、日本かぼちゃ700μg・ぺぽかぼちゃ49μgと大きな差があります。
ちなみに西洋かぼちゃ100gあたり91ckal/炭水化物量20.6gとされているのに対し、日本かぼちゃは49kacl/炭水化物量10.9gとほぼ半分、ぺぽかぼちゃは24ckal/炭水化物量6.1gとさらに少なくなっています。β-カロテンなどカロテノイド類含有量以外は西洋かぼちゃ・日本かぼちゃにそこまで大きな差はありませんので、カロリーや糖質を控えたい方は日本かぼちゃを選ぶと良いかもしれません。
下記ではポピュラーな西洋かぼちゃの栄養価を元に作成しています。
カボチャの効果効能、その根拠・理由とは?
エネルギー補給・疲労回復に
カボチャはビタミンE、ビタミンB群、ビタミンC、β-カロテン、カルシウム、鉄分、カリウムなどビタミン・ミネラル類を豊富に含んでいます。三大栄養素の比率は炭水化物が多く糖質のエネルギー転換を助けるビタミンB1やマグネシウムも含まれていますので、栄養バランスの良いエネルギー源として世界中で親しまれています。
また炭水化物が多くデンプンに栄養成分がガードされている形になるためビタミンCやカリウムなど水溶性の成分が調理後時に流出しにくく、しっかりと摂取できるというメリットもあります。様々な栄養素をしっかりと補給できることもありカボチャは疲労回復や虚弱体質の改善にも役立つと考えられています。
抗酸化・老化予防
カボチャは三大抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンE、ビタミンC、β-カロテン(ビタミンA)を豊富に含んでいます。β-カロテン含有量は100gあたり3900μgと野菜類トップクラスで、ビタミンEも100gあたり4.9mgと豊富。ビタミンCも100gあたり43mgとジャガイモよりも上ですし、ジャガイモと同じくデンプンに守られているため茹でたり加熱した場合にも壊れにくい性質があります。ビタミンACEは抗酸化作用を発揮する場所が違いますし、合わせて摂取することで互いの作用時間を長くするなどの相乗効果により高い抗酸化作用を発揮することも認められています。
抗酸化ビタミンの補給源としてカボチャは優れた食材と言えますし、カボチャにはビタミンEと合わせて摂取することで高い抗酸化作用を持つとされる「セレン」など抗酸化を助けるミネラルも含まれています。このため活性酸素によって引き起こされる老化(酸化)予防に高い効果があるとされ、酸化による内臓や筋肉の機能低下や免疫力低下などから起こる様々な病気の予防にも効果が期待されていますよ。抗酸化作用の高さからがん予防に役立つ可能性があるとして研究も行われています。
目の疲れ・負担軽減にも
β-カロテンと同じカロテノイドに分類されるルテインもカボチャには含まれています。ルテインは人の目(水晶体・黄斑部・網膜など)にも含まれており、紫外線から目を守る働きを担っているため“天然のサングラス”とも呼ばれている存在です。ルテインが減少すると眼球がダメージを受けやすくなり、視力低下や白内障・加齢黄斑変性などの眼病リスクが高まると言われています。
ルテインは紫外線だけではなく青色光(ブルーライト)の刺激から目をガードする働きもあると考えられているため、PCやスマホなどを長時間見ていることで起こる疲れ目の軽減、眼精疲労や視力低下などにも効果が期待されています。β-カロテンにも目の粘膜や網膜を健康に保つ働きがあり、疲れ目やドライアイなどの予防に役立つと言われています。仕事などで目を酷使している方や、目のかすみ・暗いところでものが見えにくくなったと感じる方にも役立ってくれるでしょう。
免疫力アップ・風邪予防に
カボチャ(西洋かぼちゃ)は100gあたりβ-カロテンが3900μgと非常に多く含まれています。この含有量は野菜類でもトップクラスで、同グラムで比較するとピーマンの10倍・トマトやパパイアの約8倍にもなります。β-カロテンには体内でビタミンAに変換されることで、粘膜などの細胞を強化してウィルスの侵入を抑制する働きが期待できます。加えてカボチャはビタミンC含有量も100gあたり43mgと豊富。ビタミンCも白血球の機能促進・抗ウイルス作用を持つインターフェロンの生成促進など免疫機能に関わる働きが期待できますから、相乗して風邪予防などに役立ってくれるでしょう。
β-カロテンやビタミンCは抗酸化作用を持つビタミンですし、カボチャには他にもビタミンEやセレンなどの抗酸化物質が含まれています。このため抗酸化作用によって体を酸化から守ることでも、免疫機能の正常化(免疫力低下予防)に役立つと考えられます。β-カロテンとビタミンCによる直接的な免疫力のサポートと、抗酸化作用が相乗して風邪やインフルエンザなどの感染症予防にも役立ってくれるでしょう。「冬至にかぼちゃを食べると風邪を引かない(健康でいられる)」と昔から取り入れられていたのも、おまじない的なものではなく理にかなっていると現代でも評価されています。
貧血予防・冷え性対策にも
カボチャ自体の鉄分含有量は100gあたり0.5mgと野菜の中でも中堅程度でさほど多い訳ではありませんが、植物性鉄分(非ヘム鉄)の吸収を促進するビタミンCを豊富に含んでいるため体内への吸収・利用率は高いと考えられます。際立って多くはないものの赤血球の形成を助ける葉酸・鉄分の運搬に利用される銅なども含まれていますので、貧血・鉄欠乏性貧血の予防に役立ってくれるでしょう。
またカボチャは100gあたり4.9mgと野菜類トップクラスのビタミンE含有量を誇ります。ビタミンEは抗酸化作用のある「若返りのビタミン」としてよく知られていますが、末梢血管を拡張することで血液循環を整える働きもあり、血行不良による冷え性や肩こり・頭痛などの改善にも役立つとされている栄養素です。β-カロテンやビタミンCと合わせて抗酸化作用による血液サラサラ効果も期待できますし、ビタミンCはコラーゲンの生成を促すことで毛細血管を丈夫に保つ働きもあります。貧血改善と合わせて血行不良や冷え性、特に末端冷え性の改善に役立ってくれるでしょう。
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むくみ・便秘予防に
かぼちゃもウリ科の食材の特徴成分と言えるカリウムが豊富に含まれています。生100gあたりのカリウム含有量は430mgと野菜・果物類の中でもトップクラス。カリウムは味の濃い料理が好きな方や夏場など汗をかくことで失われやすい成分で、体内でのナトリウムの排泄を促進することでむくみの解消や高血圧の予防に有効とされています。とくに味の濃いものを食べた際のむくみ改善に役立つと考えられますが、血液循環をサポートするビタミンEや抗酸化物質も多く含まれていますので血行不良や冷えによって起こるむくみ軽減にも効果が期待できます。
カボチャと言えば食物繊維が多いというイメージのある食材の一つでもありますし、便秘解消用に取り入れている方も多いかと思います。カボチャの食物繊維総量は100gあたり3.5gと皮付きのサツマイモを上回るほどで、野菜類の中では食物繊維が豊富な部類に入ります。腸の蠕動運動を促進する働きのある不溶性食物繊維含有量が多いものの、腸内細菌の活発化が期待されるビタミンCも豊富なため腸内環境を整える働きも期待できます。血行不良の改善も腸の機能を正常に整えることで便秘解消に繋がりますよ。
またカボチャに含まれているデンプンの一部は、調理によって一部が難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)に変化することも注目されています。難消化性と付くようにレジスタントスターチは体内で消化されにくく、食物繊維と似た働きを持つこと・腸内の善玉菌の栄養源になり善玉菌の活発化を助ける働きがあると考えられています。レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)の摂取には「冷ご飯ダイエット」などでも紹介されたように、一旦加熱料理した後、一晩程度冷蔵庫などに入れて冷やして食べるのが効果的。冷静パンプキンスーブやカボチャサラダ、煮物など冷たいままでも苦痛なく食べられるレシピが多いのも嬉しいポイントですね。
生活習慣病予防・肥満予防
カボチャに含まれているβ-カロテン・ビタミンC・ビタミンEなどの抗酸化物質は、血中脂質や悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑制することで、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病予防にも効果が期待されています。酸化した脂質は血管壁に付着して血管を狭め、血栓・血管の柔軟性低下を引き起こす原因ともなります。この状態が悪化すると動脈硬化や脳・心筋梗塞などのリスクが高まるため、抗酸化物質の補給は血流をサポートすると考えられています。カボチャには抗酸化物質だけではなくナトリウム排出を促進することで血圧を安定させるカリウムも多く含まれていますから、高血圧気味の方・悪玉(LDL)コレステロールの数値が高めの方などの健康維持に役立ってくれるでしょう。
加えてカボチャには膵臓の機能をサポートしてインシュリン分泌を促すという説もあります。インシュリン分泌説については賛否両論というところですが、自然な甘みで糖分が控えられる・食物繊維が糖質の吸収を抑制するなどの働きは期待できるでしょう。またカボチャサラダなど冷えた状態で食べることでデンプン質がレジスントスターチ(難消化性でんぷん)へと変化する特性もあります。レジスタントスターチには食後の急激な血糖値上昇を抑える・インスリン抵抗性を低下させる可能性も報告されています。結果として糖質吸収を抑えることで、肥満予防に繋がると考えられていますよ。
カボチャは野菜として見れば炭水化物量が多く、カロリーも西洋かぼちゃ100gあたり91ckalと高め。このため、いつもの食事を全く変えずにカボチャをプラスするのはあまりおすすめできませんが、ご飯のかさ増しや止められない甘味・お菓子の代わりにカボチャを取り入れると糖尿病予防やダイエットにも役立ってくれるでしょう。GI値も65と精白米よりは低く、代謝に関わるビタミンB群やミネラルの補給源にもなってくれるでしょう。
美肌・肌トラブル予防に
カボチャはβ-カロテン(ビタミンA)・ビタミンC・ビタミンEを豊富に含む緑黄色野菜。目に良い色素成分という印象の強いルテインも抗酸化物質で、実験では摂取と塗布によって肌の水分量や弾力性・光保護作用の向上がみられたことが報告されています。ストレスや紫外線などによって過剰に生じる活性酸素は肌細胞を酸化させ、シミ・シワ・たるみなどお肌の老化現象も引き起こします。このためカボチャは内側からの紫外線ケアやアンチエイジングに役立つ美肌食材としても期待されています。
またβ-カロテンは体内でビタミンAに変換されることで皮膚や粘膜を正常に保持し肌荒れや乾燥を防ぐ役割も果たしてくれます。ビタミンEは血液の流れをよくすることで肌へしっかりと栄養が行き渡るようにし、肌代謝・ターンオーバーの促進やくすみの解消に役立ちますし、ビタミンCはメラニン色素の生成を阻害したりコラーゲンの生成に関わるなどの働きも持っています。ビタミンACEの同時摂取はそれぞれのビタミンの持続時間を長くすると言われていますから、老化予防だけではなく乾燥肌や肌荒れなど肌トラブル全般の予防・改善に高い効果が期待できる美肌野菜と言えるでしょう。便秘による肌荒れやニキビ対策、ビタミン類補給による口内炎予防などにもなりますよ。
目的別、カボチャのおすすめ食べ合わせ
南瓜(かぼちゃ)の選び方・食べ方・注意点
美肌成分であるβ‐カロテンとビタミンEを効率的に摂取したい場合は、油と一緒に調理をすると体内での吸収率をアップさせることができます。β-カロテンは皮の部分に豊富に含まれているので、皮は剥かずにそのまま使いましょう。捨ててしまう「わた」の部分は果肉部分の5倍ものβ‐カロテンが入っていますから、スープに混ぜ込んだりかき揚げにするなど工夫して取り入れてみてください。
美味しいカボチャの選び方・保存方法
カボチャを選ぶ時は表面の色艶が良く、手に持った時にずっしりと重いものを選ぶようにします。皮の色むらは無いに越したことはありませんが、あっても味に大きな違いはないと言われています。オレンジ色になっている部分があるカボチャであれば、オレンジの色が濃いものを選ぶと良いそう。またカットされた状態で販売されているものであれば、果肉が厚く種がみっしりと詰まっているものを選びます。種は平べったいものよりも膨らみがあるものの方が熟していますよ。
カボチャはジャガイモと同じく収穫後に保存・熟成することで、デンプンが糖に変換され甘みが出てくる野菜です。このため採りたて・新鮮さよりも、しっかり熟成されているかが美味しいかを見分けるポイント。ヘタの周りが少し窪んでいたり細かいヒビが入っているものは熟成・完熟がしっかりなされている美味しいサインです。逆にヘタ周りが柔らかかったり水っぽく感じるものは避けたほうが無難。
カボチャは保存が効く野菜のため、風通しの良い冷暗所においておけば1~2ヶ月程度は持ちます。ただし切れ目を入れてしまうと痛みやすくなるので、カットしたものは切れ目が空気に触れないようにピッタリとラップをして冷蔵庫へ。一週間以内で使い切れなさそうな場合であれば、種とワタを取って冷凍しておきましょう。
カボチャの種について
漢方でカボチャの種は“南瓜仁(なんかにん)”と呼ばれ、生薬としても扱われて来ました。食欲増進や利尿・解毒作用があるとされているそうですが、かぼちゃの種は生薬としてだけではなく栄養豊富なシード類としても注目されている食材。ペポカボチャ系統のものなど、そのまま食べられる品種でない限り手間はかかりますが、特に女性に不足しやすい鉄分や亜鉛をはじめマグネシウム・カリウムなどのミネラルが非常に多く含まれていることが分かっています。低糖質なこともあってダイエット食としても注目されていますから、取り入れてみては如何でしょうか。
【参考元】