食べ物辞典:フラックスシード
フラックスシードは亜麻の種子のこと。亜麻仁油の原料としてだけではなく、シード類として食べることもでき、挽いたものは小麦粉の代替え・カサ増しにも活用されています。スーパーシードと呼ばれることもあるように栄養価も高く、α-リノレン酸を豊富に含むことから免疫サポートから生活習慣病予防まで様々な健康メリットが期待されています。食物繊維も豊富で、リグナンによるホルモンバランスサポートも期待されていますよ。そんなフラックスシードについてや、期待されている働きについて詳しくご紹介します。
和名:亜麻仁(アマニ)
英名:flaxseed/linseed
学名:Linum usitatissimum
フラックスシード(亜麻仁)のプロフイール
フラックスシード(リンシード)とは
欧米で健康維持や美容にも嬉しい“スーパーフード”もしくは“スーパーシード”として食されていると報じられたこともあって、日本でも取扱店舗が増えているフラックスシード。米粒サイズで濃いクリーム色もしくは茶色をした、スイカの種子にも似た形状をした食材です。日本では「亜麻仁(アマニ)」という和名でも呼ばれていますが、そのまま食べる食材としては馴染みの薄い存在。ナッツ&シードコーナーで見かけるというよりは、種子を絞って作られた亜麻仁油であったり、小動物用のペットフードとして販売されているのを見かけることの方が多いように感じます。
フラックスシードは和名で「亜麻仁(アマニ)」と呼ばれるように、繊維植物としても利用されている亜麻の種子のこと。日本では亜麻(リネン)・大麻(ヘンプ)・苧麻(ラミー)など複数の植物繊維を“麻”と呼んでいるため紛らわしいですが、大麻はアサ科アサ属、亜麻はアマ科アマ属と植物分類上ではかなり離れた存在。繊維としても亜麻繊維は光沢があって肌触りの良い布に、大麻繊維は肌にチクチクと刺さるような硬めの布になります。ちなみに、有名な楽曲にも登場する“亜麻色の髪”は金に近い茶髪のように思われがちですが、亜麻色というのは栗色を淡くしたような、薄いグレーベージュ系の色のこと。生成り色を少し濃くしたような印象ですよ。
亜麻の学名はLinum usitatissimumで、属名Linumは糸もしくは繊維を表すケルト語が、種小名usitatissimumは「最も有益である」ことを意味するラテン語が語源とされています。その言葉通り、通気性と肌触りの良い亜麻布は寝具や下着用としても使用されています。最近は天然素材ブームやエコブームの関係もあって国内でも寝具や衣服が多く販売されていますが、古代は高級繊維として珍重された存在です。フラックスシードは別名リンシードとも呼ばれていますが、これも元々は亜麻の糸を“ライン(Line)”と呼んでいた関係から。細く丈夫な亜麻色からの連想で線を意味する英語として使われるようになり、フランスでは亜麻(Line)を使って作ることから下着類を“ランジェリー(lingerie)”と呼ぶようになったと言われています。
こうした言葉からも繊維として亜麻が重要だったことが分かりますし、種子部分は食材・亜麻仁油の原料としても人間の生活を支えてきました。亜麻仁油はα-リノレン酸をはじめとする不飽和脂肪酸が豊富なオイルとして注目されているほか、食材としてだけではなくワニスとしても使われている存在。また、亜麻仁は油を絞るだけではなく、そのまま炒ったり挽いて粉にして食べることも出来ます。フラックスシードにはω-3脂肪酸と抗酸化物質も豊富に含まれていること・小麦粉と比べると炭水化物が控えめなことから、フラックスシードミール(flaxseed meal)を朝食や小麦粉の代用品として利用する方も増えているのだとか。そのままシリアルやヨーグルトに加えるのは好き嫌いが分かれるように感じますが、小麦粉のカサ増し感覚でパンや焼き菓子などに使うと取り入れやすいですよ。
フラックスシードの歴史
フラックスシードを実らせる亜麻は、古くから地中海沿岸地域に自生していたと考えられます。コーカサス山脈の山裾にあるジュジュアナ洞窟(Dzudzuana Cave)の堆積層からは、3万年以上前の亜麻繊維が発見されています。このことから旧石器時代には既に亜麻が繊維として利用されていたことが分かりますし、紀元前8000~6000年頃には肥沃な三日月地帯(ティグリス川・ユーフラテス川流域)・紀元前5000年頃にはエジプトでも亜麻の栽培が行われていたと推測されています。こうした歴史から亜麻は「人類が始めての栽培した繊維素材」とも称されていますよ。
紀元前3000年代になると古代エジプトの交易品として亜麻織物(リンネル)が使用され、神事の際にも“月光で織られた布”として使用されていたそう。ミイラを包んでいた布も亜麻布ですし、イエス・キリストの遺体を覆った「トリノの聖骸布」も亜麻布だったという説が有力視されています。ホメーロスによって作られたとされる古代ギリシアの叙事詩『イーリアス』でも紐と麻布に亜麻を使用しているという記述があることから、紀元前のうちに地中海沿岸地域では亜麻の栽培・亜麻繊維の利用は当たり前のことだったと考えられます。
繊維としては3万年以上前のものまで発掘されている亜麻ですが、種子を食用とする習慣がいつからあったのかは分かっていません。おそらくは石器時代、遅くとも6000年前頃からフラックスシード(亜麻仁)を食べていたと推測されています。紀元前400年頃にギリシアの医師で医学の祖と称されるヒポクラテスが「亜麻種子を食べると腹痛に良い」として亜麻栽培を推奨したこと・紀元前300年頃には植物学の祖と呼ばれるテオプラストスが「咳止めに良い」と評したと伝えられています。こうしたエピソードから、フラックスシードは単なる栄養補給源としてだけではなく、生薬のような感覚で使用されていたと考えられますね。
西暦800年代にはフランスのシャルルマーニュ大帝(カール大帝)が亜麻仁を健康食品として評価し、健康を維持し病気を防ぐために「臣民は亜麻仁(フラックスシード)をとるべし」という法令を発したというエピソードもあります。彼は亜麻の栽培と使用に関する記録を詳細にまとめ、亜麻栽培を推奨したのだとか。この時は食材として栽培が推奨された亜麻ですが、後にはリネン生産のための地域産業の色が強くなっていきます。児童文学『フランダースの犬』の舞台となったフランドル=オランダ南部・ベルギー西部・フランス北部をまたぐ地域も、中世に亜麻栽培から繊維の町として栄えたそうですよ。亜麻は寒冷地でよく育つことからロシアでも盛んに栽培されるようになり、17世紀以降は北米でも商業的な大規模栽培が行われるようになっていきます。
ちなみに、日本へ亜麻が伝播したのは江戸時代。当初は種子を薬として利用するために薬草園で栽培されたのだそうです。しかし中国から安く輸入できたことから栽培は広がらず、明治に入って北海道開拓のために榎本武揚が寒冷地でも栽培できる亜麻を推奨したのがきっかけとも言われています。現在でも北海道札幌市には“麻生(あさぶ)”という地名がありますが、これも北海道の亜麻発祥の地として命名されたもの。ここでの“麻”は大麻ではなく亜麻なんですね。明治から昭和初期にかけて行われていた北海道の亜麻栽培ですが、第二次世界大戦後に化学繊維が普及したことで衰退。亜麻畑は消えてしまいます。しかし、2002年に当別市で種子をメインにした亜麻栽培が復活。現在も亜麻仁油やフラックスシード、亜麻仁油を配合した石鹸などの特産品が販売されています。
フラックスシード(亜麻仁)の栄養成分・効果について
栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
フラックスシードは食物繊維を豊富に含むシード類の一つで、α-リノレン酸(ALA)というオメガ3(n-3)多価不飽和脂肪酸を多く含んでいること・フィトエストロゲンとしての働きが期待される亜麻リグナンを含むことが特徴。便通改善や肥満予防、生活習慣病予防など様々な健康メリットが期待されています。ビタミンEなどのビタミン類、鉄分・カルシウム・亜鉛などのミネラル類も比較的豊富に含んでいるため、栄養補給のサポートにも役立ってくれるでしょう。100gあたりのカロリーは562kcal。
フラックスシードの効果効能、その根拠・理由とは?
便秘予防・腸内環境サポートに
フラックスシード(亜麻仁)は100gあたり23.8gと食物繊維が豊富な食材です。7g(約大さじ一杯分)の摂取でも1.6gとセロリ100g以上の食物繊維を補給できる計算になります。胡麻も同じく食物繊維が豊富なシード類として紹介されることの多い食材ですが、食物繊維量は100gあたり10.8g。カロリーはほぼ同じでありながら、フラックスシードは胡麻の2倍以上の食物繊維を含んでいます。このため優れた食物繊維源として注目され、便通を整える手助けが期待されています。ドイツの民間療法では便秘の時に亜麻仁を配合した“Leinsamenbrot”というパンを食べるというものもあるのだとか。
また、フラックスシードは100gあたり23.8gの食物繊維のうち、不溶性食物繊維が14.7g、水溶性食物繊維が9.1gと不溶性・水溶性の食物繊維がバランスよく含まれているという特徴もあります。不溶性食物繊維は便の量を増やして腸の蠕動運動を促す働きがありますし、水溶性の食物繊維は便の水分量を増やすことでスムーズな排便を手助けしてくれます。この二つの食物繊維をバランスよく摂取することで便通の改善により高い効果が期待できるというわけです。加えて水溶性食物繊維は腸内の善玉菌の増殖を助ける働きもありますから、腸内環境を整えることにも繋がると考えられます。食物繊維総量としてはチアシードのほうが多くなっていますが、水溶性食物繊維量だけで見ると100gあたりチアシード5.7g・フラックスシード9.1gと、フラックスシードの方が多いことも特徴。
健康維持・老化予防に
食物繊維が豊富な点以外に、オメガ3系脂肪酸の1つであるα-リノレン酸(ALA)を含んでいることもフラックスシードの特徴と言えます。亜麻仁はオメガ3脂肪酸の最も豊富な植物源であるという声もあるほど。α-リノレン酸には悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪の低減効果が報告されており、冠状動脈性心臓病や高血圧のリスクを軽減する・血小板機能を改善する働きが期待されている不飽和脂肪酸。こうした働きから健康的な脂質・良質な脂質と称され、適切な補給は動脈硬化や心筋梗塞、生活習慣病予防予防にも役立つと考えられています。
2011年『PLOS ONE』に掲載されたオランダの調査では、α-リノレン酸の摂取量が多い人のほうが冠動脈性心疾患および脳卒中のリスクが低いことが報告されています。心臓発作や心血管疾患・脳卒中リスクとα-リノレン酸の関連性についての報告はそれ以外にも多くなされており、α-リノレン酸は血流関係の疾患予防をサポートしてくれる可能性の高い脂質として注目されています。フラックスシード全体としては水溶性食物繊維も豊富に含んでいますから、そちらと合わせてコレステロール対策としても役立つ可能性があるでしょう。インドで行った亜麻仁粉末を毎日30グラムを3ヶ月間継続して摂取した実験では、総コレステロールが17%・悪玉コレステロールが約20%低下したという結果が2014年『Journal of Biomedical Science』で発表されています。
そのほか米オハイオ州立大学の実験で血中のオメガ3脂肪酸の割合が高いほど、テロメアが長くなる可能性を示唆した報告もあります。テロメアは染色体の先端に存在し、細胞分裂のたびに少しずつ短くなっていくことから細胞の老化との関係性が研究されている物質です。このためω-3脂肪酸の摂取も老化予防に繋がるという見解もあります。オメガ3とテロメアの関係は研究段階で確証のあるものではありませんが、フラックスシードはリグナンやp-クマル酸・ビタミンEなど抗酸化物質を含むことも認められています。体内の活性酸素を除去・抑制する抗酸化物質の補給源としても、老化予防を手助けしてくれるでしょう。
免疫サポート・アレルギー軽減に
食品に含まれている多価不飽和脂肪酸は、その構造からオメガ3(n-3)脂肪酸・オメガ6(n-6)脂肪酸という2系統に分類されています。オメガ3系脂肪酸としては魚油に多く含まれているEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が代表的で、オメガ6系脂肪酸には大豆油などの植物性油脂に多く含まれているリノール酸が代表的。フラックスシードに含まれているα-リノレン酸はオメガ3系(n-3系)脂肪酸の一つで、体内に入ると必須脂肪酸の代謝経路内でEPAやDHAへと変換される物質でもあります。直接的にDHAなどを摂取したほうが効率が良いという指摘もありますが、α-リノレン酸を補給すれば体内でEPAやDHAが生産されるというわけです。
オメガ3(n-3)脂肪酸もオメガ6(n-6)脂肪酸も私たちが生きていく上で必要な脂質=必須脂肪酸ではありますが、摂取する脂肪酸のバランスの乱れが不調を起こす可能性となることが近年指摘されています。これは大まかに言うとオメガ6系脂肪酸は炎症反応を起こす物質に、オメガ3系脂肪酸は炎症抑制物質に変換されるという性質があるため。この2種が対になって機能することで免疫反応などを正常に機能させていますが、近年は食の欧米化や外食・インスタント食品などの普及によってオメガ6系の脂肪酸摂取量ばかりが多くなっていると考えられます。その結果、体内の免疫バランスが崩れてアレルギー症状などの炎症が起こりやすくなっているという説があり、オメガ3を豊富に含む魚やフラックスシードなどの摂取がアレルギー軽減に繋がるのではないかと注目されています。
また、オメガ3系脂肪酸は炎症抑制物質の原料になることから、脂質のバランスを抜きにしても抗炎症作用を発揮する可能性があることも注目されています。フラックスシードに含まれているタンパク質にも免疫機能を手助けする可能性が報告されていますし、抗酸化物質による免疫低下予防・水溶性食物繊維が腸内フローラを整えることでの免疫機能向上も期待できます。このためフラックスシードは免疫機能を整え、アトピー性皮膚炎や花粉症などアレルギー性疾患の軽減に役立つ可能性がある食品としても注目されています。
脳機能向上・うつ予防にも
オメガ3(n-3)脂肪酸の中でも、DHA(ドコサヘキサエン酸)には脳内に取り込まれることで細胞膜を柔らかくする・シナプスを活性化することで脳の伝達性を高める可能性があることが報告されています。妊娠時や幼少期の摂取だけではなく、大人が摂取した場合も記憶力・学習能力向上に役立つことを示唆した報告もあります。また、血管障害などによって脳の一部機能が低下していてもDHAは残っている脳細胞を活性化して認知症や記憶障害の改善する働きが期待されており、子供から高齢者まで様々な方の“脳・神経機能”をサポートする可能性がある成分として研究が行われています。フラックスシードにDHAは含まれていませんが、豊富に含まれているα-リノレン酸は体内でEPAやDHAに代謝されます。フラックスシードも脳の健康維持に繋がるかも知れない食品と言えますね。
認知症予防や記憶力向上だけではなく、オメガ3脂肪酸はメンタルヘルス、特にうつ病との関係性についても研究が行われている栄養素。1998年『The Lancet』に発表されたHibbeln氏らによる9カ国のうつ病の発症率調査では、オメガ3系脂肪酸を豊富に含む魚を多く食べる国ほどうつ病の発症率が低いことが報告されています。まだ研究数が少なく効果については諸説ありますが、他にもDHAやEPAの投与によりうつ病スコアが改善されたという実験報告があることから、αリノレン酸などのn-3系脂肪酸は脳の神経伝達物質と関連があり、うつ病や気分障害などの精神疾患の発生低減や軽減に繋がる可能性があると注目されています。薬と違って副作用のリスクも低いので、心身の健康維持に取り入れてみても良いかもしれません。
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血糖値対策・肥満予防に
フラックスシード(亜麻仁)は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく豊富に含み、便通や腸内環境を整えるのに役立つと考えられます。このため便秘によるお腹の膨らみを軽減したり老廃物の排出を促すだけではなく、水溶性食物繊維の補給によって消化吸収スピードが低下し血糖値上昇を抑制する働きも期待されています。消化スピードをゆっくりにするだけではなく、不溶性食物繊維も水を吸って膨らむことで満腹感を高めてくれるでしょう。2012年には『Appetite』に、アマニ繊維を添加した飲料とタブレットの摂取によって食欲および食物摂取が抑制されたというデンマークの大学で行われた研究報告も掲載されていますよ。
そのほかにα-リノレン酸による炎症抑制などの働きが代謝低下予防に繋がる、リグナンにも血統コレステロールを助ける働きがあるのではないかという説もあります。フラックスシードは100gあたり炭水化物量が30.4g、うち23.8gが食物繊維と糖質が少ない食材でもありますから、血糖値対策としても注目されています。2010年『Journal of Nutrition』に発表された277人を対象にした中国の研究では、フラックスシードが血糖コントロールに好ましい影響を与え、体重減少をサポートする可能性があると結論付けられていますよ。ただし血糖値の改善は見られないという報告もあるため過信は禁物。糖質は少なくとも高カロリー・高脂質の食材であることには違いありませんから、栄養補給を兼ねて適量を取り入れるようにしましょう。
女性領域でのサポートも期待
フラックスシードは胡麻よりも多く、リグナンという植物性化合物を含んでいることが分かっています。このリグナンは亜麻仁特有のもののため亜麻リグナン(SDG)と呼ばれています。亜麻リグナンは抗酸化作用があるだけではなく、女性の性ホルモンのエストロゲンに似た構造をしているフィトエストロゲン(植物性エストロゲン)であることも特徴。植物性エストロゲンは人本来のエストロゲンよりは弱いもののエストロゲンに似た働きをすると考えられており、エストロゲンの分泌量が急激に減少することで起こる更年期障害の症状軽減効果が期待されています。エストロゲンの減少によってカルシウムが流出しやすくなることで起こる、骨粗鬆症予防への有効性を示唆した報告もありますよ。
また、亜麻リグナンなどの植物性エストロゲンはホルモン状態に応じてエストロゲン活性の増減を助ける=エストロゲン受容体のいくつかに入り込むことによって全体的なエストロゲンの作用を弱める働きもあると考えられています。この働きによって更年期を迎える前の女性のホルモンバランスを整え、生理不順やPMS(月経前症候群)などの軽減にも役立つ可能性があります。n-3系不飽和脂肪酸(α-リノレン酸)も抗炎症物質の生成を促すことで生理痛の軽減効果が期待されていますから、更年期障害から月経不順まで様々な女性領域での不調の予防・軽減に繋がる可能性もあるでしょう。
肌荒れ予防・美肌保持
フラックスシードに豊富に含まれている亜麻リグナンは抗酸化物質として働くことで、肌細胞を酸化ダメージから守りシワやたるみ・くすみなどの肌老化を予防する働きが期待できます。エストロゲンの代替え品として作用することで、エストロゲンが担っている肌の水分調節・コラーゲンの生成促進などを手助けしてくれる可能性もあるでしょう。α-リノレン酸(オメガ3系脂肪酸)も細胞膜や細胞間脂質の原料となる物質で、不足することで体全体の機能低下、肌に関してであれば水分保持力や新陳代謝低下の原因となる可能性があります。リグナンとα-リノレン酸の補給から、肌のハリや潤いを高め、若々しい肌を維持するサポートが期待できますね。
そのほかα-リノレン酸には悪玉コレステロール低減や血小板機能の改善により、血液循環を整える働きも期待できます。フラックスシードには末梢血管への血流を促してくれるビタミンEや鉄分も含まれていますから、合わせて血行不良や貧血による肌のくすみ・乾燥を予防し、ターンオーバーの正常化にも繋がるでしょう。食物繊維補給による便秘解消も肌荒れ予防に役立ちますね。オメガ3系脂肪酸はアレルギーや炎症を抑制する働きも期待できるため、肌トラブル予防・丈夫な肌作りに一役買ってくれる可能性もありそうです。
チア・バジル・フラックスシードの栄養比較
フラックスシード、チアシード、バジルシードはどれも健康メリットやダイエットサポーターとしての役割が期待され、揃って「スーパーシード(スーパーフード)」と呼ばれることのある食材。どれも日本では近年まで種子形状で食べることに馴染みのなかった食材ということもあり、ふわっとした何となくのイメージで使い分けているのではないでしょうか。3シード類にはそれぞれ異なった特徴があります。特に植物として見てもチアシードはシソ科アサギリ属(サルビア属)・バジルシードはシソ科オシウム属(メボウキ属)と近いですが、フラックスシードはアマ科と別物で粒も大きめ。食品としてもフラックスシードは前記2つとは違いが明確ですよ。
フラックスシードのポイント
フラックスシードはオメガ3系必須脂肪酸(α-リノレン酸)の含有量が高いこと、亜麻仁リグナンと呼ばれる不意とエストロゲンを含むことが特徴。特に亜麻リグナンもしくはフィトエストロゲンとなるリグナン類についてはチアシードとバジルシードには含まれていませんから、更年期障害が気になる方・ホルモンバランスが気になる方であればフラックスシードを取り入れてみても良いかもしれません。
『日本食品標準成分表2015年版』に記載されている100gあたりのカロリーは562kcal。3種のシード類の中ではオメガ3系必須脂肪酸(α-リノレン酸)の含有率も最も高いですが、カロリーも最も高いです。チアシードやバジルシードのように水につけてもゲル状に膨らみません。水につけてもゲル化しないので食事のカサ増しとしては微妙ですが、粉末化したものは小麦粉の代用品として活用できる・和え物などにも使えると調理幅が広いことがメリット。
チアシードのポイント
チアシードはフラックスシードよりも脂質量が少なく、食物繊維量が多いことが特徴。『日本食品標準成分表2015年版』に記載されている100gあたりのカロリーは494kcal、食物繊維総量は36.9gとなっています。オメガ3系必須脂肪酸(α-リノレン酸)量も100gあたり19.43gと、23.50gあるフラックスシードよりはやや少なめですが豊富と言っても差し支えのない量ではあります。
そのほか必須アミノ酸をバランスよく含み、カルシウムも豊富。健康維持のために栄養バランスを整えたい、健康的なダイエットを心がけている方のサポーターとして役立ってくれそう。水分を含むと10~15倍に膨張する性質があり、腹持ちも良いので間食を控えたい方・食べ過ぎを予防したい方にも適していると考えられます。
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バジルシードのポイント
バジルシードは低カロリーであること、水分を含むと30倍に膨張することが最大の特徴。チアシードは水につけておくとドロリとした柔らかいゲル状になりますが、バジルシードの方は若干弾力性が強いように感じられます。『日本食品標準成分表2015年版』ではバジルシードの項目がないため公平性は劣りますが、三種類のシード類の中ではカロリーも最も低いのではないかと推測されています。カロリーが低いこと考えるとオメガ3系脂肪酸やアミノ酸などの栄養補給目的ではフラックスシードやチアシードに劣る可能性が高いので、摂取カロリーが気になる方や食べ過ぎ防止、便秘の解消をメインに摂取したい場合に適した食材と言えそうですね。
↓バジルシードの詳細はこちら
フラックスシード(亜麻仁)の食べ方・注意点
フラックスシードは殻が固く、そのまま食べても消化できない=栄養を取り込めない可能性が高いことが指摘されています。すり潰すようにして使用したり、フラックスシードミールなど粉末化されているものを使用した方が無難。粒状のものを入手した場合は、食べる分ずつコーヒーグラインダーやフードプロセッサーを使って粉砕して食べるのがおすすめです。オメガ3系脂肪酸は酸化しやすいため、開封後は密閉容器(できれば光を遮れるように色の入ったもの)に入れて冷蔵庫で保存し早めに食べきるようにしましょう。
フラックスシードの注意点
文献・サイトによっては妊娠中でもフラックスシードの摂取は問題ないと記載されている所もありますが、ホルモン様作用を持つと考えられているフィトエストロゲン(亜麻リグナン)を含んでいる食材でもあります。妊娠中・授乳中の方や小さいお子さんが摂取した際の安全性については十分なデータがありませんから、摂取は控えるようにした方が無難です。妊娠中のエストロゲン作用物質の摂取はホルモンバランスを崩すことや胎児の生殖機能に影響を与えることなども指摘されています。抽出物ではなく食品から摂取は危険性は低いと考えられていますが、自己判断での摂取は控えることをおすすめします。
フラックスシードは食物繊維を豊富に含む食材であることが評価されていますが、食物繊維は摂取しすぎるとミネラルなどの栄養素の吸収阻害や消化器官へのダメージを与える危険性もあります。体質によっては腹部膨満感・腹痛・下痢・悪心などを起こす場合もありますので、体調を確認しながら少量ずつ取り入れるようにしましょう。食品のため明確な規定はありませんが、一日の上限としては大さじ2杯(20g)程度、最大でも50g以内に留めるべきだという見解が多くなっています。また、薬の作用を阻害する可能性があるので医薬品を服用中の方は医師もしくは薬剤師に相談してから取り入れるようにしましょう。
フラックスシードの食べ方
消化の問題もありますし、サイズとしてもフラックスシードはナッツのようにポリポリと食べられる食材ではありません。雑穀米感覚でお米に混ぜ込んで炊いたりも出来ますが、消化によく活用幅も広いのは粉末タイプの方。ヨーグルトやスムージーに加えることも出来ますし、グルテンアレルギーの方が小麦粉の代替え品として使用することもあるようです。通常オメガ3脂肪酸は加熱料理でも酸化してしまいますが、亜麻仁中のオメガ3脂肪酸は熱安定性が高いとされています。パンや焼き菓子などに活用してもオメガ3補給源として期待できるのが嬉しいところですね。
その他すりゴマのようなサラダや和え物、揚げ物の衣などにも活用できますが、お湯に入れてお茶のように飲むという方法もあります。フラックスシードティーの作り方はフラックスシードを小さじ1~2杯砕いたものにお湯を注ぎ、五分程度蒸らすだけ。葛湯を薄めたような、ほんのり粘り気のある液体になります。フラックスシードだけだとそこまで美味しいものではありませんが、なかなか上手に取り入れられない場合は手軽に摂取できます。
【参考元】